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お昼休憩まであと30分と少し。


「――そろそろ午前の部のラストスパートかけるか」


途切れずあがってくる報告に視線を落とす。

スタンプラリーの進行状況をみておのずとため息が漏れる。

葵巳本たちを投入したのがちょっと遅かったのか、思ったより状況は改善がみられなかったようだ。

多分もうちょっと回ってもらえば効果があるとは思うが。


一応、午前中で終わることも想定してきたスタンプラリーだったが、案の定というか……いや、それ以上に進みが遅く、このままお昼を挟んでスタンプラリーを続けるプランに移行させるしかない。


高知に連絡を入れるか。



「もしもし」

『――はい、高知です』

「……なんか気持ち悪いな。何かあったのか?」

『!っお、前、分かってて言ってんのかよっ!!』

「はあ?――まあ、どうでもいいか……。あと30分したらお昼休憩にしようと思う」

『俺の話は?!』

「興味ない。――スタンプラリーの消化状況が悪い。やはりプランを変える必要がある。お昼休憩を挟んで、そのままスタンプラリーを継続させる」

『シクシクシク……』

「高知は時間を見て中央広場に1年を誘導しつつ帰ってきてくれ」

『労りが欲しい……』

「……返事は?・・・

『了解でありますっっ!』

「じゃあな」


プチリと通話を切る。


「全メンバーに通達!」

「「「はいっ!」」」

「あと30分したら昼休憩に入る。プラン2に移行する。時間になったら1年を誘導しつつ中央広場に集合とする」

「「「イエス、サー!プラン2に移行!!」」」

「運搬班は昼食を中央広場に」

「「「イエス、サー!」」」

「それ以外のものはチェックポイント各所に連絡、本部の片付けを」

「「「イエス、サー!!」」」

「……作戦開始」

「「「サー、イエス、サー!!!」」」

「……」


散開するメンバーを見つつ、心の中でどっぷりため息を吐く。






こいつらどこの軍隊だよ……。
















無事(?)に午前の部が終わった。

1年生たちが中央広場に続々と姿を現す。

楽しそうに同じグループの奴らと話しながら来た奴らはいい。

しかし、疲れたような顔をして歩いてくる1年がそこかしこに居た。


「やはり1年生には難易度が高かったか……」

「本当にそう思うのか、宮ノ内……」


ひとり呟いた言葉に返事が返ってくるとは思わず、後ろを振り向く。

振り向いた先には遠山先輩。


「お疲れ様です」

「ああ、なんか疲れたわ」

「珍しいですね」

「……ちょっとな」

「?」


やたらと疲れたような表情の遠山先輩に、何かあったっけと疑問が浮かぶ。

だが、遠山先輩に気にするなと肩を叩かれたので追及するのをやめた。


「皇ちゃん!」

「ぐっ!」


腰にタックルを受けた。

想定外の衝撃に声が漏れてしまった。


ぎゅーっと腰を締められる。

やめろと腰に回った手をタップする。


「宮ノ内先輩!」

「――おお、篠川。お疲れ」


締め付けからは解放されたが、解かれない腕をそのままに後から来た珠姫の班の奴らに手を上げた。

篠川の生温い視線は無視だ。


「お疲れ様です!」


忍か。


「……なんか元気いいな」

「はい!分かりますか!」

「分からないわけないだろ」

「ですか!――ははっ!先輩最高です!!」

「?」


わけが分からん。

俺に分かるように話をしろよ。


「先ほど、チェックポイント6で高知生徒会長にお会いしまして」

「そうか」


ていうか、きっと他のところでも傍に居ただろうよ。

もうストーカー並だな。


「皇ちゃん、私ちゃんと見たの」

「――ん?」


何の話だ?


「くっ、くくく……いや、兄貴の尻文、字、しょ、紹介がっ……ブフッ!!」

「はいー、凄かったですー」

「凄かった?」


おっとりとした口調で佇む女子のセリフに首を傾げる。


「……高知生徒会長が尻文字自己紹介をしてくださったんですが、途中何度か動きが乱れまして」

「うん?」

「それを珠姫が――」

「皇ちゃんが見ろって言ったから、ちゃんと見たの」

「んん??」

「…………乱れて分からない文字のところを珠姫がもう一度、と」

「あー……」


グリグリと珠姫の頭を撫でてやる。


「えへへ」


嬉しそうに珠姫が頭を手に押し付けてくる。

可愛いな、おい。


「マジでやったのか、高知のやつ」

「宮ノ内先輩、さすがにそれは……」


篠川がヒクリと口元を歪ませた。


何故だ?


しかし……うん、高知よ天晴。







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