ある世界秩序
この度は、興味を持っていただき誠にありがとうございます。もしよろしければ最後まで読んでいただきたいと思います。初心者で素人なのですが、頑張って書いてみたので、よろしくお願いいたします。
注意:この物語は、虚構であり作り話です。作者は、どのような政治思想や理不尽な差別主義などに全く傾倒しておりません。また、どのような人種や民族、団体、組織、集団、個人を誹謗中傷する意図も全くありません。これらのことを良く理解された上で作品をお楽しみください。
今日は、皇紀2665年11月1日で天気は晴れと日直の日誌に記録をするような、有り触れた日であった。空色の終わりの見えない巨大な天のキャンパスに、いくつかの純白に染まった水滴群が飾り付けられている構図が美しい"平和な"普通の日であった。風に揺られる針葉樹林の様子も悪くなかった。
いつもと少し違って特別なことと言えば、僕が今日の日直であるということや、今日の給食としてラーメンを食べることができることになっていることくらいであった。
その他のことと言えば、今日までの過去において、そして恐らく今後の未来においてもだろうが、義務教育によって規定されている教育課程を訳もわからず遂行していくために時間を消費しているのみである。
歴史や公民、理科を学ぶ理由は分からなくも無かった。しかし、数学やドイツ語を学ぶ訳がわからない。
数学は何のために役立つものであるのか、全く検討がつかない。三角形の合同や相似の証明よりも、せめて数学が何かの役に立つということを具体例を出しつつ証明して欲しいくらいである。
ドイツ語に関しては、それを教育課程に入れた役人に「一体全体何人の若者がドイツ人と日常で話す経験を、これからの未来にすると思っているのでしょうかねぇ?」という問を投げ掛けたい。
それどころではなく、この疑問を火縄銃に装填してその御方の脳に強烈に投射して差し上げたいと思うほどである。ドイツ人よりもロシア人との遭遇率のほうが高いぞとついついツッコミを入れてしまう。
このような愚痴を考えてしまう理由は、つい先程にドイツ語の授業があったためである。その上、単語の小テストがあった。地獄のテストである。
僕が通っている中学校は、入学時には入学試験など課されなかったのだが、教師達のより高いレベルの高校へと進学させようとする熱意が強い。宿題の量は情け容赦無いし、授業中に寝ようものならチョークが百発百中で飛翔してくる。時々、魔法の弾かなと思ってしまうほどの精度であったりする。
このような熱意は有難いのだが、僕らが住んでいるのは地方中の地方、言い換えれば辺境の土地であるのだから、無意味な悪足掻きなのではないか、と思ってしまう。
僕は日本人の一人だが、僕と同じ人種の人間は約2億ほど存在しているのだ。上には上がいて当然である。それに、優遇されるのは内地の人間になってしまう。きっと地方の田舎者では敵わない経済力を保有しているに違いないのである。そんな者達に始めから敵うわけがないことは明白だ。それを知っているならば、苦しんでも手に入らない未来より、妥協して得られる今を得ることの方が良いということは合理的なことであろう。
第一、海を隔てていて交通の便が悪い、植民地のような、カムチャッカ州など気にして貰える訳もないのである。
酷い結果となって真っ赤なインクに染められたドイツ語単語の小テスト回答用紙を今にも破かんとするほどに強く握りしめながら、世への不満を脳内に巡らせていた僕の鼓膜に次の授業の始業の鐘の音が振動として伝わってきた。その時、10分間の休憩時間を全てその赤紙とのにらめっこに費やしてしまった自分を自覚した。取り戻すことのできない結果の悪さに強い衝撃を受けたため、それは当然のことではあった。
始業の合図の少し前に、次の授業の先生が教室に入室して準備をしていた。次の授業とは歴史である。僕にとっては好意が持てる教科であった。容易に理解ができて、暗記すればテストで点を獲得できたからだ。
「チャイムなったので授業を始めます。日直さん号令かけて。」
この先生優しいだろうなといった感じの第一印象を持つことのできる柔らかい声で、号令を発するように命令を受けた僕は「起立、礼」と比較的大きな声を出した。優しそうで女性のそこそこ若い歴史の先生は、かなり友好的に接してくれそうで好印象を持っていたため、普段より声が大きくなった。
そして、いつものように皆が揃って「お願いします。」といって、日直が「着席」という掛け声をする光景が続いた。最早何百回と同じことを繰り返してきたせいで、これらの言葉に正しく気持ちが入ることは無くなっている。
また、僕は日直という役職についても再検討してしまった。日直は皆に号令を発することができる。ということは、今の自分は他の生徒よりも少し偉いのではないか、などと優越感に浸ってみた。
そんな無価値なことを思考しているうちに、授業は前に進んでいた。
「今日やるところは入試のときにも出題率高いし、日本に住んでいたらとても重要なことだから良く復習をしておくように。」
先生が授業のために前もって予習して作ったらしきノートとチョークを、それぞれ右手と左手に持ちながら今回の授業の重要性を知らせてくれたのだが、生徒達の中に返事を返す者はいなかった。このようなときに皆揃って「はーい」と言うほど純粋なのは小学生低学年までなのだろうかという考えが頭を過った。
「では、次のページに入って。ちょうど第二次世界大戦が始まるところですね。この戦争は日本にとって極めて重要な戦争でした。日本が生きるか死ぬかのような深刻なものであったのです。そして、今ある世界の状態はこの戦争の結果として作られたものといっても過言ではありません。さらに、今の世界には、この戦争による爪痕が強く残っています。この戦争で何があったのか、詳しく学びましょう。」
西暦1939年に大ドイツ帝国(以下ドイツ)がポーランドに侵攻した。これに対して、フランスとイギリスはドイツに宣戦布告した。
西暦1940年には、ドイツ軍が周辺の国々に侵攻した結果、デンマーク、ノルウェー、オランダ、ルクセンブルク、ベルギーが次々にドイツの占領下に置かれることになった。さらに、ドイツ軍はフランスに侵攻した。このとき、イタリア王国もフランスに宣戦布告をして侵攻を開始した。その結果、フランスは降伏した。また、イギリス軍はダンケルクのからの撤退に失敗して多くの兵力を失うことになった。
西暦1940年、イタリア王国はギリシャやエジプトなどに侵攻して連合国軍を破り、西暦1941年までにはそれらの地域を支配下に収めた。
西暦1941年、枢軸国がユーゴスラビアに侵攻した。結果として、ユーゴスラビアは解体された。ドイツ空軍は、イギリスのレーダー網に探知されない戦闘機を調達した。これによりイギリス空軍は奇襲を受け、飛び立つ前にほとんどの戦闘機を破壊された。イギリス海軍をドイツ海軍とイタリア海軍で足止めしている間に、ドイツ陸軍がイギリス本土に上陸した。それと同時にドイツはソビエト連邦に侵攻を開始した。
皇紀2601年、大日本帝国(以下日本)は、米英に宣戦布告した。日本海軍は真珠湾を奇襲攻撃して多数の主力戦艦と航空母艦に大きな損害を与え、アメリカ太平洋艦隊を長期的に壊滅状態にした。その間に日本軍は支配地域を拡大させた。
西暦1942年、ドイツ軍は弾道ミサイルや飛行爆弾まで投入してモスクワ、レニングラードなどを陥落させ、油田地帯のコーカサス地方を占領下に置いた。さらに、ドイツはアメリカに宣戦布告した。また、イギリス本土侵攻の結果、チャーチル首相は亡命したが、イギリスはドイツの占領下に入った。
皇紀2603年、日本の関東軍はユダヤ人の力を借りてソビエト連邦侵攻用の新型戦車を開発量産した。ウラル山脈を挟み必死の抵抗を続ける赤軍に対して関東軍は攻撃を開始した。関東軍はシベリアの各主要都市を占領して赤軍を追い詰めていった。
西暦1945年、アメリカがハンブルクに対してウラン型原子爆弾を、ドレスデンに対してプルトニウム型原子爆弾を投下した。
西暦1946年、ドイツは赤軍が潜伏していると思われる森林地帯に対してウラン型原子爆弾を投下した。これによりスターリンは死亡し、赤軍は降伏した。
皇紀2618年、アメリカ海軍が大規模な艦隊を編成して攻勢に出た。日本海軍はこれを皇国の興亡を掛けた艦隊決戦であると見なし、全戦力を結集させた。連合艦隊は、戦艦大和、空母大鳳、数隻の補給艦のみを残して全滅したが、戦いには勝利した。
西暦1960年、ドイツはニューヨークとワシントンに水素爆弾を投下した。
皇紀2622年、日本はドイツから供与された核砲弾を潜水艦から発射した。それによってサンフランシスコは壊滅した。アメリカは休戦協定締結に応じた。
「ここまでが第二次世界大戦になります。かなり長いけど中学レベルなので、しっかりとこの一連の流れを押さえるようにしましょう。では、今日の授業はここまでです。」
最後まで読んでいただきありがとうございます。これからも時間があるときに書いていきたいと思うので、よろしければまたよろしくお願いいたします。