6回転目
目を覚ますと拉致されて直ぐに入れられた部屋だった。
あちこち痛む身体をどうにか動かし立ち上がる。
クソ、顔が腫上がって右目は開かないし左目も少し見える程度。どれだけ殴られたんだ。
周りを見渡すと何時の間にかテーブルが置いてありソコにはペットボトルの水と栄養価の高いチューブ式のゼリーが置いてあった。
水を持ち上げてキャップを外そうとするが上手く力が入らない。どうにか開けて口をつけると今度は口の中に痛みが走る。
あれだけ殴られれば口の中も切れて可笑しくないか……。
ベッドに腰掛け水を飲みながら気を失う前の事を考える。
こうやってベッドに寝てるって事はあの男との戦いが終わったんだよな?最後はどうなった?
死ぬまでって言ってたけど……いや、流石にねーよ。
怪我はしただろうが生きてるさ、俺自身ここまでボコボコにされたんだやり返しても文句は言われないだろ。
それにしても痛い。
つーか拉致とか本気で洒落にならねぇ。今は何時なんだ?
拉致られたのが土曜日で……下手したらもう平日かもしれねーじゃんか。
やっべぇ、会社に何て説明しよう。
まさか『悪の組織に拉致されてました』なんて言う訳にもいかんし。
会社への言い訳を考えているとドアが開き女が入ってきた。
「元気そうで何よりだわ」
こ い つ っ !
「どこがだよ。あっちこっち身体はボロボロだわ水飲むだけで痛いわ、散々だよ」
「生きてるだけマシじゃない。少なくとも死んでない訳だし」
……出来れば聞きたくないが、聞かないままモヤモヤするのもイヤだ。
「……俺をしこたま殴ったあの男は?」
「何よ、貴方がキッチリと『斬り刻み殺した』じゃない。昨日の内に処分してるわよ」
やっぱり殺っちまってた……、自己防衛ってこの場合適応されるのか?
実際殺されかけたんだからこの場合セーフなのか?
イヤ、そもそもこの状況が…………。
「それで、次は1時間後。それまでにソコの物をちゃんと飲んでおくのね」
「……次?」
何言ってるんだこいつ?
「ええ、貴方はこれから暫くは実践の中で力を磨いてもらうわ。『物を回転させる力』これがどんなモノか把握しないと利用出来ないから」
「……やらないぞ……俺はやらん!早く俺を自宅へ帰せっ!!」
「駄目よ。貴方はもう帰れない、帰さない。第一殺人を犯した人間が何処へ帰るのよ」
「あ……、あれはお前等がっ!!」
女がにやにやしながら俺へ一歩近づく。
「良い事教えてあげる」
「………」
「あの男、貴方に勝てたら病気の娘を助けられるはずだったのよ」
「…………っ!!!!」
「でも駄目ね。貴方に負けた、貴方に殺された。だからあの男の娘も助からない。貴方はあの男を殺して、更に間接的にあの男の娘まで殺したのよ。この人殺し」