5回転目
入り口まで逃げ切る事も出来ず、背中に男からの一撃を貰い床に倒される。
倒されたかと思えば足を捕まれ、無造作に入り口から反対方向へ放り投げられる。
あんなのと戦えだなんて無理だ、どうやっても勝てる気がしない。
「随分逃げ腰なのね、あそこに置いてある道具は使っても良いのよ?」
女に言われ縋る様に視線を動かすと、壁に立てかけられた刀剣や打撃武器等が置かれてる。
ふらふらと立ち上がり近寄る、道具を手にとろうとした所で作業員に手を捕まれ後ろ手に手錠をはめられた。
どういうことだと女を睨むとにんまりと笑いながら言い放った。
「使っても良いわよ?でも手は使っちゃ駄目。貴方なら手を使わないでも使えるでしょ?」
何で知ってるんだ?という考えは浮かんでこなかった。
余裕が無かった。
兎に角痛い思いはしたくない。その一心で壁に立てかけられた武器を片っ端から『回転』させ始める。
立てかけられた武器が縦に、横に、斜めに、不規則に、回転を始めながら宙に浮く。
数は問題じゃない、問題はスピード。
だがココで頭を殴られ壁に突っ込む。
後頭部を殴られたのと、壁に頭から突っ込んだ事で前後不覚になりながらも視線を敵に向ける。
悠々と、まるで俺に見せ付けるかのように俺の前で仁王立ちをしている黒スーツの男。
ヤバイ。
そう思いはしたが身体は上手く動かせず、鼻血のせいで呼吸も荒い、オマケに手は後ろ手に手錠をかけられて正直立ち上がる事すら出来ない。
男がゆっくりと右手を上げ、俺の顔目掛けて振り下ろす。何度も、何度も、何度も。
痛い。
痛い。
痛い。
…いたい。
…いた…い。
…いた…。
…………。
何度拳が振り下ろされただろう。意識が朦朧とする中で何かが俺の手に触れる。
もう痛いのは嫌だ。
その一心で手に触れているモノに目一杯『力』を送る。
俺と床の間にあったモノは恐らく俺を殴り続けた男に当たったのだろう。殴られすぎて殆ど見えなくなった俺には見えなかったが、それでも確かに男の絶叫を聞いた。
その声を聞きながら俺は気を失っていた。




