4回転目
シャワーを浴びて目を覚ましたら服が見当たらない。片付けられたか。
仕方なく用意されたモノを着込む。
黒の上下で装飾は何も無い。
男に案内されて向かった先はとても広く、体育館や屋内型の競技場を思わせる。
ソコには先ほどの女と共に数人の作業員が居た。
「で?俺を攫って何させるつもりなんだよ」
「まずは脱ぎなさい」
「……は?」
思考が停止した俺を他所に作業員が俺の上着を剥ぎ取る。
上半身裸にされた俺にシールの様な物をペタペタと張っていく。
「それは貴方をモニターする為の物よ。そして貴方には今からそこに居る彼と戦ってもらう」
指を指された先に居るのは先ほど俺を案内した男。
「どちらかが死ぬまで続くからヨロシク」
まるでお使いを頼むかの様な気軽さで女は告げる。
俺が女を問い詰めようと視線を男から外した瞬間、腹が爆発したかの様な痛みと共に数メートル吹き飛ばされた。
あまりの痛みに呼吸が出来ず吐しゃ物を撒き散らしながら床を転げまわる。
混乱する頭で先ほどの男を見るとしゃがみ込んでいた。かと思えば次の瞬間に跳んだ。
ジャンプだなんて生易しいモノじゃなく、一足跳びで俺目掛けて突っ込んできた。
未だ呼吸が戻らない身体をどうにか動かし、転がる事で男の一撃を避ける。
どうにか立ち上がりながら呼吸をする。
くらくらする頭でさっきまで自分が居た場所を見ると男の右腕は床を砕いて突き刺さっていた。
ぞっとすると同時に女のセリフが頭の中で繰り返される。
『どちらかが死ぬまで』
嫌だ。死にたくない。逃げなきゃ。
そう思った俺は入ってきた入り口に向かって一目散に逃げ出した。
正確には逃げ出そうとした。
だがソレは叶えられなかった。