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【続】02 呪われし退勤前の電話



「は? 今から?」


「すまない……砂の国の私の友人が訪問してきたのだが、会いたいと言っていて」


「……良いけど……なんで私が?」


「あ、いや……それは」


 またモジモジかよ王子。

 私は今からサウナ感覚でひと汗かきに鍛錬場に行くんですけど。私の騎士達が待ってるんですけど。増員に増員を重ねた騎士達の強化訓練なんですけど。思わず眉間に力が入ってしまった。

 それを見て何故かフロルド殿下は顔を赤らめた。


 なんでやねん。



 客間のような場所に通されたかと思うと、褐色の肌の客人がにこりと微笑んで待ち受けていた。


 シンプルに顔がいい。


「はじめまして。俺は砂の国第三王子のゼフと申します、お見知り置きを」


「私は時岡……いえ、トキと呼んでください。言葉も崩して下さって結構です」


「わかった」


 おっと。王子ときたか。

 そりゃそうか。

 ゼフは素直に頷くと、ソファに腰掛けてにこりと微笑んだ。ただニコニコして私にそのお綺麗なお顔を披露しにきただけではないだろう、そんな気持ちを込めてフロルドを見れば、何かヘンテコな顔をしていた。


 赤くなったり青くなったり忙しい王子である。思春期かな?精神を鍛える必要があるな。これは鍛錬場への招待状を出さなくては。腕が鳴るな。


「それで、なんでしょうか?私に用事があると伺っていますが」


「ああ、できれば二人で話したい」


「……私とですか?」


「……俺には意中の人が居ましてね。乙女心をお聞かせ願いたい」

「冗談でしょう? 貴方の方がよくご存知なのでは?」

「そんな事はない。手が届かない相手もいる。お力添え願いたい。男の尊厳に関わる。できれば、傷は浅くしたいんだ」


 そう言うと、ゼフ殿下はチラリと私の背後に目配せをする。甘い視線は女限定のようだ。

 背後にいるアーチとランティスがムッと表情を歪めた。


 ついでフロルド殿下を見ると、彼も不可解そうに眉を顰めている。


「ゼフ、トキと二人きりは認められない」


「ほんの少しだ、5分程度でいい」


「私は別に構いませんよ」

「ちょ、トキ!」


 わっと声を上げたが、友人が困っているんでしょう、と言えば、フロルドは戸惑いながらも「トキが、引き受けてくれるならば……」とすんなり引き下がった。

 借りてきた猫のように従順である。

 どうしたフロルド殿下。


 渋々ではあるが、アーチとランティスも扉の外で待つと言う事になった。ゼフ殿下に聞こえないようこっそり「聖女パワーで筋力アップしておくから大丈夫」と耳打ちすればほんの少し心配そうにしていたが、納得してくれた。

 振り返れば、ニコニコと笑みを浮かべて大人しく座るゼフ殿下。


 笑顔は相手に条件を飲ませるための武器。

 人当たりの良さと善良さをアピールするのにとっても便利。これは会社でなくとも社会に出れば必須項目だ。英検より大事。テストにも出してほしい。

 社会人としてやってきた私の勘がいってる。

 胡散臭い笑顔の下には大なり小なり野心が隠れてるって。


「さ、終わらせましょう」


「ありがとう、嬉しいよ」


 にこりと浮かべた表情が、急に冷たい色を持つ。


 なるほど。

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