表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
振り向かない彼女を飼う方法  作者: 一会
第3章
44/81

44


 

 妹が僕に彼氏を紹介する。いつかそういう日が来るとわかっていたけれど、まさか今日だとは!

 彼女の家に向かう道だったので妹を問いただしてみたら、まさかの展開だ。

 彼女の弟が妹の彼氏だなんて、ありえるのか?! 偶然にしては出来過ぎだろう!


 「付き合う経緯は納得した。けれど、どうして妹なんだ? 確かに妹はとても可愛いが。」


 そうだ。妹は可愛い! 大切な妹の彼氏は、妹を一番大事に思ってないといけないのだ!

 妹の彼氏候補を観察した。

 彼女の弟は、とてもモテる。容姿はいいし、礼儀正しい。以前、彼女が言っていたことを思い出しても、できた弟のように思える。

 でも、モテるのに、何故僕の妹なのだ? 

 妹はちょっとふっくらしていて、二次元好きだ。たまに、電波系の言動が現れる。僕には十分可愛く思えるのだが、僕の友達にはそう見えないようだ。

 この話に何か裏があるのではないかと勘繰りたくもなる。



 「とても、気が合うからです。特に、お兄さんのことを話す時に生き生きとして、見ていて楽しい気分になります。」


 妹は僕の横でうれしそうにしている。

 妹よ、こいつがそんなにいいのか?!

 彼女の弟は、三年前よりも大人びた笑顔で僕から視線を外さない。

 出来過ぎている。やっぱり油断ならない。

 

 「一応、挨拶は受けとった。」

 「では、僕は彼女を別室にいる両親と家族同然の両親の友達に紹介してきます。

  姉と積もる話もあるでしょうからこちらで待っていてください。一時間ほどで戻ってきます。」


 おい!彼女と二人きりになるのか?!

 妹と彼女の弟がそろってリビングから出ていくと、僕は急に落ち着かなくなった。



 妹と彼女の弟に(たばか)られた!

 二人が付き合っているというのは、僕をここに呼んで彼女と会わせるための芝居だろう。偶然が重なり過ぎている。

 妹と弟が、僕と彼女の交際を認め、応援してくれている。

 お節介を焼かれてなんともむず(がゆ)い。

 しかし、下手な芝居をしてでも妹たちが作ってくれた機会だ。妹たちの好意を活かさないといけないだろう。

 


 僕は彼女とまともに目を合わせられず、彼女をちらちらと見た。

 彼女はロングスカートにシンプルなカットソーという、いつもの彼女らしい服を着ている。紅茶の入ったカップを持つ手つきも優雅で、飲んでいる姿に見惚れてしまいそうになる。


 「大学では、男からの誘いを断るのに、苦労しているようだね。」


 僕は、これまで彼女と二人きりになったら話そうと思っていたことを話し出した。


 「あなたが嫌ではないなら、また、付き合いたい。」


 僕はたくさん話すのは得意ではない。言いたいことを率直に言って彼女の反応を見る。


 彼女はカップをテーブルに置いた。視線をカップに置いたまま、僕を見ないで話し出した。


 「私が好きな人の話を覚えている?」


 僕はじっとしておられず、彼女の表情を見ようと彼女の横に座りなおした。ここで彼女を繋ぎとめないと、僕は彼女と二度と付き合えない気がする。


 「覚えているよ。弟のことなら、僕は気にしない。僕だって、妹が好きだ。」

 「私は弟と、キスをするわ。あなたは妹とキスをするの?」


 彼女は僕を見ない。僕は彼女に僕を見て欲しくて、彼女の肩に手を置いた。


 「しない。でも、あなたが弟とキスしていても構わない。姉弟(してい)だから、結婚できないし。」


 僕が言い切ると、彼女が目を閉じた。閉じたところから涙がこぼれてくる。


 「そうよ。私は弟と、結婚できない。」


 彼女の声がせつない。彼女は弟と結婚したいほど、本気で好きなのだ。

 しかし、相手は弟だ。結婚はもちろん付き合うことも、許されない。

 妹が小さい頃、僕は妹と結婚の約束をした。少し成長したら、兄と妹では結婚できないと知って、落ち込んだ。妹を結婚の対象とみることはなくなったけれど、何よりも大切な存在だということに変わりはない。

 

 彼女の苦悩と葛藤が僕にはわかる。

 僕が妹と結婚できないと知っても妹を諦めずにいたなら、僕も彼女のようになっていただろう。

 わかっていても気持ちを変えられなかった彼女の不器用さが愛おしい。守ってあげたいと心から思う。


 「これまで通りでいいから、やり直そう。」


 僕は彼女の頬にキスをした。

 彼女は、僕を一生受け入れないかも知れない。それでも、この不器用で綺麗な彼女が一人で苦悩しているのは嫌だ。


 彼女が泣いている顔で僕を見た。


 「私でいいの? あなたの人生が、台なしになるわ。」


 彼女の泣き顔が愛らしい。


 「あなたは他人を好きにならないと言ったけれど、僕はそうは思わない。

  僕は、あなたに好かれていると感じていたよ。」


 僕は、この二ヶ月で整理した気持ちをぶつける。


 「それは、あなたが誠実で、優しくて、一緒にいるのが居心地よくて、家族といるように感じたからよ。」


 彼女の言葉に僕は喜んだ。

 彼女は他人に好意を持てない。そんな彼女の状態から考えると、これは、告白も同然だ!

 僕は力を得たような気分で、彼女に(たた)み掛けた。


 「僕は、あなたと結婚したい。」

 「私が弟と、添い寝していても?」

 「姉と弟の添い寝なんて、猫と寝ているようなものだよ。」


 弟は、結婚対象ではない。彼女の立場から考えると「男」に含まれないのだ。

 僕だって、妹のそばで寝ることがある。妹はそういう対象になり得ないので、もちろん問題ない!

 

 彼女が、僕の頬にキスをした。

 彼女から、初めてキスしてもらった!

 彼女の頬がわずかに赤くなっている。


 「異性の他人に私からキスしたのは、初めてよ。」


 僕は調子に乗らないよう気を引き締めながら、彼女の唇にキスをした。


 「今週、僕の部屋で一緒に過ごさない?」


 僕は彼女の耳にささやいた。


 「次は何を食べたい?」


 彼女もささやくような音量で、僕に答えてくれる。

 あなたを!と言うのを堪えて、僕は返答する。


 「あなたが作るものなら、何でも。」


 僕は彼女と一緒にいられる喜びを噛み締め、もう一度彼女の唇にキスした。



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ