43 妹 4
お兄ちゃんの元彼女の家から帰ってきた夜、友達から電話がかかってきた。
友達がわざわざ電話をかけてくるなんて何事かと思ったら.....!
私は今、お兄ちゃんの元彼女の家で何があったのか、友達にしつこく報告を求められている。
弟さんのファンである友達には借りができたので、報告くらいすべきだろう。
しかし!とても全部は伝えられない!
特に弟さんの彼女のふりを私がするということは、絶対に言えない!
言ったら、何か恐ろしいことがおこる気がする。
お兄ちゃんと弟さんのお姉さんが、また付き合えるようにする計画をたてるという、とても刺激的な、素晴らしい時間を過ごした。
簡潔にいえばこういうことなのだけど、友達はねちっこく、くどいほど繰り返し細かいことを質問してくる。
弟さんはどんな服を着ていたか、出されたお茶は何だったか、カップはどんなものだったか。部屋の様子は?カーテンは?床は?などなど。
何の調査だ?!
「写真はないの?!」
友達が私に勢い込んで言うけれど、そんなものはない。
「撮ってないよ。」
考えてもなかったよ。
「何で撮らないのよ!」
必要ないから。私が欲しいのは、お兄ちゃんの写真なんだもの!
「ごめん、気付かなかった。」
一応、謝っておく。
友達に、次に弟さんに会うことがあったら写真を撮らせてもらうよう念を押され、やっと電話を切らせてもらえた。
さてと。お兄ちゃんに、どう切りだそうか?
素直に元彼女の家に来てもらえるとは思えないので、弟さんと相談した通りに頑張ってみることにした。
「お兄ちゃん、次の休みの日、一緒にお出かけしよ!」
部屋でもぬけの殻になっているお兄ちゃんに、私は誘いをかけた。
お兄ちゃんは虚ろな目に私を映して、微かに微笑んだ。
お兄ちゃんは妹の私に甘いので、頑張るまでもなかった。
お兄ちゃんは何を着てもカッコイイ。でも、今回は彼女の親へ挨拶だ。よりいい印象を与えねばならない。
相手にできるだけ爽やかな印象を持ってもらえるよう、お兄ちゃんを美容院に送りこんで髪の毛をカットしてもらう。服も、いつものでいいのだけれど、この際なのでジャケットを新しく買って、さらにカッコイイお兄ちゃんに仕立てた。
うわ! お兄ちゃん、サイコー!!
記念に写真を何枚か撮っておく。
11月の後半の連休に、お兄ちゃんを連れて、元彼女のマンションの前に来た。
お兄ちゃんが、最寄り駅に降りるあたりから、私に不審な目を向けてきている。
マンションに向かって歩き出すと、お兄ちゃんが足を止めた。
「お兄ちゃん?」
私がお兄ちゃんを促すと、お兄ちゃんは低い声で私にきいた。
「目的地はどこ?」
私はできるだけ自然にきこえるように、弟さんと打ち合わせしたとおりのことをお兄ちゃんに話す。
「私の、彼氏の家だよ。お兄ちゃんに紹介したくて。でも、外だと騒がしいから、なかなか会えないの。
お兄ちゃん?」
お兄ちゃんが、固まっていた。
「ねえ、お兄ちゃんってば!」
私がお兄ちゃんの腕を揺すると、お兄ちゃんが私の両肩を持ってきいてきた。
「カレシ、だと?!いつ、そんなの作ったんだ?!どんなやつだ?!」
お兄ちゃんの慌てようがうれしい! 私のこと、そんなにも好きなのね!
「とてもいい人よ。会えば、お兄ちゃんもきっと気に入るわ!」
そう! 絶対気に入るはずだ! 弟さんは、私たち兄妹の愛を認めているのだから!
お兄ちゃんは気合いが入った表情で、私に穏やかに先を促す。
「お兄ちゃん、びっくりするだろうから、先に言っておくね。私の彼氏は、お兄ちゃんの元彼女の弟さんなの。」
言った瞬間、私の前に人が出てきた!!
「嘘よ~ーーーーー!!」
私は弟さんに書いてもらった紙を取り出して、その人に見せる。
紙には弟さんの字で、私と付き合っていることと、私を害さないようにすることが署名入りで記載されている。ちなみに破られてもいいように、あと3枚同じものを書いてもらってある。
へたり込んだ人を放っておいて、無口になったお兄ちゃんと一緒にお兄ちゃんの元彼女の家に急ぐ。
弟さんのファンの人、ごめんなさい。はい、嘘です。その弟さんの希望でこうなっているのだから、許してください。
嘆いているファンの人がかわいそうで良心が痛むので、口には出せないけれど、心の中で謝罪する。
弟さんは前回と違い、私が来るとあっさり家まで上げてくれた。家を出る時と最寄り駅に着いた時に連絡を入れてあったので、予定通りだ。
弟さんは爽やかな表情で私たちを出迎え、リビングに通してお茶を出してくれた。
元彼女と弟さん、お兄ちゃんと私、それぞれ隣に並び、向かい合って座っている。
「お久しぶりです。足を運んでいただいて、ありがとうございます。」
弟さんが話し出す。
お兄ちゃんはずっと黙っている。
「お兄ちゃん、ね、いい人でしょ。」
「いつからだ?」
私が気をきかせて話しかけると、お兄ちゃんが低い声で質問を始めた。
「まだ付き合い始めたばかりです。」
弟さんが答える。計画をたてるときに、もっと前から付き合っていることにした方がいいと私が言ったら、弟さんは、嘘は最小限に留めた方が後々困らない、と言っていた。
「友達が弟さんに用事があって私もついて来て話したら、何だか気が合って、付き合うことにしたの。」
私が弟さんの後を引き継いで話し出す。
「私がお兄ちゃんのことを話すと、弟さん、会いたいって言い出して、でも外だとさっきみたいな人がいるから、家まで来て欲しいって言うのよ。」
「3年前に学祭でお会いしたときは、姉の弟としてでしたので、彼女の交際相手として、改めてご挨拶したかったのです。」
弟さんがお兄ちゃんに笑顔で説明した。




