28 弟 13
姉と僕の関係は普通ではない。
僕は高校3年生になった。僕の気持ちに名前を付けなければならない時期がせまっていた。
姉は、僕と付き合っている男、両方と交際している。
姉に自覚がないだけで、客観的に見たらそういうことになる。
僕には相変わらず、姉の他に好意を抱ける女性がいない。
姉に対する気持ちと比較するために、誰かと付き合うことを考えたこともあるが、姉に阻止された。
「お姉ちゃんが、要らなくなったの?」
泣きそうな目で姉が言う。
そんなことを言われたら、彼女を作れるはずがない。
僕は姉に、飽きずにキスして抱きしめて、理性がとばない範囲で身体に触れた。
僕は姉をどうしたいのだろう。
今の僕たちは、正しくない。
表に出せない関係を続けて、姉は苦しくないのだろうか?
姉の身体を抱き寄せて、キスをして、身体に触れて、喘がせて、僕は元の自分に戻れる気がしない。
姉は結婚して子供を産む。それまでの、期間限定の付き合いだと姉が言ったとしても、僕は認めてあげられない。
僕の姉は血の繋がった姉だけど、それだけの存在ではなくなった。
姉が、僕を変えてしまった。
僕は姉を手に入れ、一緒に人生を生きていきたいと思うようになっていた。
18歳。
何か特別に僕ができるようになったわけでもないのに、誕生日がきたら成人だと世間に認めてもらえる。そして、責任をとることもついてまわる。
僕は成人になったら、姉との関係を新しく構築しようと決めた。
塾の女子たちも、さすがに受験期に無謀な攻撃をしかけてくることがなくなった。
僕は静かな受験環境で、勉強に勤しんでいた。
だが、姉は、僕が男性として大人になっていくのが心配なようで、欠席した分の質問をしてくる女子からの連絡も気になるようだった。
「僕のスマホ、見てもいいよ。」
僕は姉を安心させるため、僕のプライバシーを公開することにした。姉に知られて困るような女性関係は、良くも悪くも全くない。
「そう?私のスマホの中身、見る?」
姉は僕のスマホを見る前に、自分のスマホのロックを解除して僕に差し出した。
僕は受け取りを躊躇した。そこまでする必要性がないという思いと共に、姉が付き合っているという男との連絡内容を見たくないと思ってしまった。
姉と男の交流を、嫉妬せずに受け入れられるはずがない。
僕はまだ未成年で、姉を護れる立場にない。僕が姉が将来に向けて付き合っている男との関係に口出しできる立場にあるとしたら、それは弟の立場だった。
僕が捨てたいと思っている弟の立場ならば、逆に、姉の将来に自分の希望を述べることもできた。
姉は僕にスマホを差し出したまま、僕を見ていた。
「お姉ちゃんのことを、知りたくないの?」
姉が寂しそうにしているので、僕は渋々姉のスマホを受け取った。
姉は僕にくっつくように寄り添い、姉のスマホのアドレスと履歴にある、様々な人との関係を教えてくれた。
知らなかったけれど、姉は男性の知り合いが多かった。
「この人は、先週知り合った人。この人は、今週声をかけてくれた人。」
「それ、ナンパ?」
姉からの説明が雑に聞こえて僕が思わずきくと、姉は首を傾げた。
「大学内で知り合った人ではあるけれど、二人で会おうとしたがるわね。」
僕は姉にキスをした。
「僕の他の人にこういうことをされないよう、自覚を持ってね。」
姉が僕にキスを返した。
「あなたの他に、したくないわ。」
僕は姉を見つめた。
姉は、意味をわかって言ったのか?
僕の気持ちを試しているのか?
姉の目は澄んでいるのに深く、奥を見通せれない。
僕は姉の背中を撫でた。
姉の、華奢な、頼りない身体。
僕は姉の手をとって、手首の内側に口づけた。そのまま腕の内側にキスしていき、僕は姉さんの口にかぶりついた。
この人が欲しい。
どうしたら、この人を手に入れられる?
結婚はできない。子供を作ってあげられない。恋人になれない。
できないことだらけだ。
姉が僕のキスに応えて、僕の口を食べている。
これでもまだ姉弟か?
お互いに欲情しあう姉弟なんて、ケモノと同じだ。
気づいて、僕は身体の力が抜けた。
人間であることを止めて、ケモノとして生きていくというのも悪くない。
社会的規範も、世間的な観点も、考える必要ない。
僕は姉の服の中に手を入れて、姉の素肌を楽しんだ。
喘ぎだした姉を横たえて、姉の服をめくって口づけた。
姉は気持ちよさそうに、僕の手と口を受け入れている。
本当に、姉と繋がることは簡単なことだ。
このまま姉の服を剥いで全裸にし、気持ち良くして僕を受け入れさせればいい。
二人してケモノのように欲情し、ケモノのように繋がり、そしてその後は?
この世界のどこにも、僕たちは受け入れてもらえなくなる。
ここは人間が作った人間のためのシステムが構築された人間の世界だから、ケモノの棲める場所などない。
僕は下着を付けた姉の胸の間に顔を乗せた。柔らかくて、いい匂いがした。
いつか、この胸は、姉が母親になったとき乳児のものになる。
僕は姉に子供を産ませてあげたい。
子供を産める身体なのに、僕のわがままで産ませないというのはエゴが強過ぎる。
そのために、僕たちは人間の世界に留まらなければならない。
僕は興奮を無理矢理おさめ、姉を起こして服の乱れを直した。
姉はずっと下を向いていて、表情がわからない。
僕が姉の部屋を出るとき、姉は笑顔だった。
「おやすみなさい。」
姉が普通の顔で、普通のことを言う。かえって違和感があるのだけれど、姉はきかれたくなさそうな様子だった。
僕は気になり、姉のところに戻って座っている姉を僕の胸に抱き寄せた。
ーーー愛してる。
姉の頭に口づけて、髪を手で触りながら気持ちが溢れるのを留めた。
しばらくして姉の肩に手をかけて身体を離し、姉の目を見つめて言った。
「おやすみなさい。姉さん。」
姉が少し赤くなった顔で、僕を見ている。
僕は安心して、姉の部屋を出た。




