27 弟 12
高校2年生になると、僕は自分の自制心をそこまで信用できないので、姉さんへの無用な接触を避けようとした。
でも、姉さんはそのことで僕に避けられていると思い、かえって姉さんからの接触を受けることになった。
姉さんは僕が今まで手を出さないものだから、僕のことを甘く見ている。
僕は姉さんとキスしながら、姉さんの身体に触った。
最初は普通に肩を撫でただけだった。背中を撫で、腕を撫で、腰を撫で、僕は手を止めた。
これでは、妄想の通りになってしまう。
僕は姉さんの弟だから、妄想を現実にしてはいけない。
僕は姉さんを抱きしめ、自分の気持ちを落ち着けようとした。
姉さんが欲しいのは、恋人以前の甘い関係だ。
僕が中学生の時に姉さんに教えた深いキスは、姉さんにとってイレギュラーだった。
姉さんは弟の僕をうっとりと見つめて僕の情欲をさそうくせに、他の男と結婚し、子供を産むと宣言する。
今だけの関係、と言いたいのだろう。
今だけの関係ならば、いっそうのこと、僕のものにしてしまおうか。
ほの暗い気持ちが燻って、僕の心を支配しそうになる。
この歳になって、姉さんに、風呂にさそわれたこともある。さすがにダメだと、当然断った。
僕は姉さんの弟だから、二人の意識がはっきりしているなら、適度な距離を保たないといけない。
今でも十分近いのだ。
本当に姉さんは、僕に何をさせようというのか。
姉さんの不満げな顔が、可愛いらしくてしかたがない。
僕の心をかき乱さないで欲しい。
わかっていても、誘惑に負けたこともある。
クリスマスイブの前日に、姉さんがワンピースのサンタ服を着た。僕の好みだったらしい。
僕は姉さんを自室に連れ込んだ。
姉さんを妄想同様、自分のものにしたくなった。
僕はキスをしながら姉さんの服を脱がせようとした。しかし、コスプレの服の脱がせ難さゆえに、手間取った。手間取って、ちょうどよかった。
僕は少し頭が冷えて、下着姿の姉さんに、再び服を着せようとした。
姉さんが、僕の手を止めて、僕に言う。
「私も、脱がせたい。」
姉さんの顔がうっすら赤くなっていくのが愛らしくて、僕は姉さんに服を脱がされてあげた。
姉さんは下着姿、僕が上だけ脱いだ状態で、僕たちは抱き合った。
姉さんが、愛しい。
僕は姉さんが寒くないか心配で、二人でベッドに入ってかけ布団をかけて、姉さんの身体を撫でた。
姉さんの、女性らしい身体に、僕の本能が刺激される。
『頑張って耐えて』というのは、これのことでもあるのだろう。
僕は姉さんにキスを繰り返して、僕の理性がとばないように気を張っていた。
姉さんを妄想の通りに喘がせたら、どんなに素晴らしいだろう。
でも、現実は甘くない。
姉さんと僕は結婚できない。兄さんと母さんのように、事実婚ということすら不可能だ。
僕が感情を吐き出さないよう我慢している間に、姉さんは付き合っている男といちゃいちゃし、そのうちに結婚の話も出るだろう。
僕の恋は、最初から終わっている。
どうにもならないのだ。
どうにもならないのならば、忘れるしかない。
忘れたいけれど、姉さんと毎日会う生活で、忘れられるわけない。
忘れられないのならば、なかったことにしよう。
なかったことにする前に、一度だけ、欲しいだけこの人を思い切り抱きたい。
僕の願望を理性が押し留めようとする。
姉さんが望む弟の範囲の行動をとっていれば、僕は姉さんとの関係を壊さずに済む。
例え姉さんが結婚して子供ができても、弟でいたら僕は姉さんのそばにいられる。
二度と姉さんに触れられない状況よりも、ましだと思えないか。
僕は姉さんにキスして、身体を触り、自分の身体を押し付けた。この先に進めず苦しくて、熱くて、涙が出てきそうだ。
「あなたの身体、温かくて、気持ちいい。」
姉さんがとろけた顔で、僕を見て言う。
姉さんの手が、僕の素肌の背中を撫でる。
僕は嬉しさと苦しさで、気持ちを吐き出したくなった。
「姉さん、好きだよ。」
姉の手が止まる。
「あなたは、私の弟よ。」
姉さんが真顔で言う。
「そうだよ。僕は弟だよ、姉さん。」
言ってから、僕は姉さんの鎖骨にキスをした。
姉さんは目を閉じた。
僕は姉さんの首を唇で触れて、なめて姉さんを味わった。
もっと欲しくて、姉さんの脇腹を撫でる。
姉さんの呼吸が乱れた。
姉さんの弟としての僕の領分は、ぎりぎりここまでだ。ここから先は、完全に恋人の領分だった。現の世界で行っていいことではない。
僕は悔しくて、姉さんを抱きしめた。
この人が欲しい。
喉から手が出るほど、欲しい。
こんな想いを抱えたまま、姉さんの弟を続けないといけないのか。
僕は身体を姉さんに押し付けた。
僕の想いは、弟の領分を完全に超えている。
姉さんが、僕の頭を撫でている。
「ありがとう。」
姉さんの声が耳元で聞こえる。
僕は姉さんの顔を見て、目を見張った。
姉さんの目に、熱がこもっている。弟に向けていい目ではない。
情欲に溺れかけているのは、僕だけでなかった。
姉さんもまた、僕が欲しいのだ。
姉さんは欲望を理性で留め、姉として僕を護ろうとしていた。
僕は無理して微笑んだ。
姉さんが頑張って守ろうとしている姉弟の境界を、僕も守らなければならない。
「好きだ。」
それでも、気持ちは伝えておく。僕は姉さんではないので、きちんと正面から気持ちを渡す。
「お姉ちゃんも、弟のあなたが好きよ。」
姉さんが僕を求める目のままで、自分は姉で僕が弟だと主張する。
そうだね。あなたは、僕の姉さんだ。
僕は姉さんの頬にキスをした。
僕たちは、姉弟の関係を崩さない。
ずっと一緒にいるために、この関係が必要だから。
ーーー愛してる。
僕は姉さんを、一人の女性として愛し始めていた。




