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振り向かない彼女を飼う方法  作者: 一会
第1章
19/81

19 弟 7



 姉ちゃんの大学の学祭に、兄さんと行った。

 兄さんは、どこに行ってもモテる。

 父さんがそばにいたら、女性たちも遠慮して近寄って来ないけれど、ぼくと一緒だと遠慮がない。

 集まってくる女性たちに、ぼくたちはなんとか対応していた。


 帰ろうとすると引き止めにかかられ、ぼくが苦慮していると、ぼくにぶつかった女性がぼくのためにハンドタオルを渡してくれた。

 ぼくが優しい女性と話していると、姉ちゃんが間に入って会話を断った。

 その後は、姉ちゃんと兄さんの機転で比較的スムーズにその場を去ることができたけれど、ぼくは姉ちゃんの言動が不自然だと思った。

 

 


 夕飯を食べて遅くに帰ってきた姉ちゃんがお風呂に入って自室に入ると、ぼくも姉ちゃんの部屋に入った。

 姉ちゃんは、相変わらず服を着ず、バスタオルを身体に巻いたままで髪を拭いていた。

 

 ぼくはドライヤーの準備をし、ベッドでに座っている姉ちゃんに声をかけた。


 「髪を乾かすから、こっちに来て。」


 姉ちゃんはぼくのところに来て、ぼくに背中を向けて座った。

 髪を乾かし始めても、ぼくたちはお互いの出方を探り合って会話しなかった。

 ぼくはあまり考えないようにしていたことを考えていた。


 姉ちゃんは、また、あの男のところに通い始めていた。

 部屋に、付き合っている男女が二人きりで、何をしているのか。

 ぼくの妄想と同じことを、あの男が姉ちゃんにしている。

 ぼくは弟だから、実際に姉ちゃんに触れることは一生できない。

 姉ちゃんが好きな人とそういう関係になればいいと、ずっと思っていた。

 しかし、今日学祭で見た姉ちゃんとあの男の親密な様子が生々しくて、姉ちゃんに触る男がいることが、嫌になっていた。


 ドライヤーでストレートの髪を乾かし終わった。ブラシで梳いて、片側に髪をまとめるように、姉ちゃんの首をひと撫でする。

 今夜は何か口走ってしまいそうだ。

 ぼくは自制できるうちに部屋に戻ろうと、急いでドライヤーを片付けた。

 

 ぼくが部屋を出る前に、姉ちゃんがぼくに話しかけてきた。


 「今日は大学に来てくれてありがとう。」


 ぼくは姉ちゃんがまだバスタオル一枚でいることが、心配になる。

 もう秋だ。夜は冷えてくるし、湯冷めして風邪を引く。

 姉ちゃんの衣装ケースから寝るときの服と下着を出して、姉ちゃんに渡す。

 姉ちゃんはちらりとぼくを見て、ぼくの前でバスタオルを取ろうとするので、急いで後ろを向く。


 着替える音が聞こえて、ぼくの妄想をかきたてる。


 「もういいよ。」


 ずいぶん早いと思いながら姉ちゃんの方に体の向きを直すと、姉ちゃんは下着姿だった。


 「はい。」


 姉ちゃんがぼくにパジャマを渡す。

 ぼくは理性を保ったまま、姉ちゃんにパジャマを着せる。

 

 姉ちゃんの袖にパジャマを通し、前のボタンを閉めていく。

 片足ずつズボンをはかせ、腰に触れてズボンをあげる。

 姉ちゃんは弟のぼくに、何をさせたいのか。

 ぼくは深く考えない。

 突き詰めてはいけない。


 姉ちゃんがぼくに抱き着いた。


 「ああいう子が好みなの?」


 ぼくは間近にある姉ちゃんの目を見た。


 「誰のこと?」

 「ハンドタオルの女の子。」


 姉ちゃんの目に、戸惑った顔のぼくが映っている。


 「あの、おとなしい女性のこと?」


 姉ちゃんがぼくの口に自分の口を合わせた。

 姉ちゃんは目を閉じて、動かない。ぼくは理性を保つため、目を開けて姉ちゃんの閉じられた目を縁取る長いまつげを見ていた。

 姉ちゃんが離れるまでじっとしていると、唇を舐められた。

 

 ぼくは驚いて、身体が揺れた。

 姉ちゃんがぼくの身体を離した。

 ぼくは動揺して、想像に捕われ苦しくなって、言ってはいけないことを口走るのを手で口を押さえて耐えた。

 じんわりと生理的な涙が溢れてくる。


 それでもぼくは姉ちゃんを見続けた。


 「私は彼と付き合って、いつか彼とするわ。」


 胸が痛い。


 「あなたも誰かと付き合って、誰かとこういうことをするの。」


 ぼくは反射的に首を横に振った。

 しない。誰ともしない。したくない。

 涙がこぼれそうになる。

 

 「それとも、お姉ちゃんと、したい?」


 姉ちゃんが挑戦的な目でぼくを見る。

 ぼくは自分の身体を抱きしめた。

 ぼくはどうして、姉ちゃんの弟なんだろう。嗚咽(おえつ)が込み上げてくる。

 ぼくは込み上げてくるものを、飲み込んだ。


 「ぼくは弟だよ。」


 ぼくは姉ちゃんを(にら)んだ。


 「そう。じゃあ、彼女を作るの?」


 姉ちゃんが、冷たく言う。


 「今は作らない。」

 「いつ、作るの?」


 姉ちゃんが嘲笑(あざわら)う。


 いつ? いつまでも、姉ちゃん以外、いらない。

 ぼくは笑いそうになった。ぼくはずっと(ひと)りだ。


 「必要になったら作るよ。」


 子供が必要になったら、誰かと結婚しよう。

 家庭を持てと言われたら、誰かを選ぼう。

 ぼくに彼女は必要ない。


 「私はきちんと誰かと結婚して、子供を産むわ。」


 姉ちゃんはぼくの心の中を見透かすように、ぼくをじっと見る。


 「姉ちゃんは、それでいいんだね?」


 ぼくは仕返しに言った。ぼくをいじめたんだ。少しはやり返してもいいだろう。


 ぼくは姉ちゃんの両肩を持って、姉ちゃんに深くキスした。妄想の中で、たくさん姉ちゃんとキスしている。

ぼくは深く深く、姉ちゃんの口を味わうようにキスをした。


 

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