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おっさんテイマーは、はばからない!〜ソロテイマーだったのに、気が付いたら最強組織を作ってました〜  作者: 琥宮 千孝(くみや ちたか)
第三章 (覇王覚醒編)

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王城決戦(1)

囚われたリンとクロ。それを助けに向かうユート。

果たして、間に合うのか?!

 俺はその報告を聞いて血の気が引くのが自分でも分かった。


 あまりの事に、目の前が真っ白になったくらいだ。


「もう一度、言ってくれるか?」


「す、すみません!ううっ…、私達が不甲斐ないばかりにこんなことになってしまって。でも、まったく歯が立たなくて、なんとか時間を稼ごうとしたリンちゃんが攫われてしまうなんて思わなくて」


 親友のリンが連れ去られ、両目から大粒の涙を流しながら話すアーヤ。


 その横では、レーナが涙を流すまいと必死で堪えながらも目の端に涙を浮かべている。


「おじ様お願い!きっとあのお城にリンはいる筈よ。悔しいけど、私達では全く歯が立たない相手なの。リンを、私達の親友を助けて!!」


 二人が必死に俺に訴えかけてくるのを見て、少し冷静さを取り戻した俺は、自分に何をしているんだと喝を入れる為に両頬を思いっきり叩いた。


「当たり前だ!リンは、この世界では俺の娘なんだ。父親が娘を見捨てるわけ無いだろう?大丈夫、俺達に任せろ。お前たちは予定通り住民の避難を続けてくれ」


 二人にそう言うと、うえぇぇんと泣きじゃくりながら抱き着いてきて、「ありがとう、お願いします」と頼んできた。


 二人の頭を撫でてから、王城に向かうメンバーに向き直った。


「これから王城へ攻め込むぞ。俺に喧嘩売ってきたことを必ず後悔させてやるっ!」

「ふむ、主の言う通りだな。ヘラが考えそうな姑息な方法だが、人質にされたとなると面倒だぞ?」


 カルマが冷静に一番の危惧を案じて問いかけてくる。

 それにニケが提案してきた。


「まず間違いなくそうしてくるでしょう。であれば、主のスキルで数人姿を隠しておいた方が良いかもしれないですね。ただ…どうも監視する視線を感じるので、まずはその()()()()()()()()から排除しないと、功を成さないかもしれないですが」


 そう、ニケが言った通りだ。

 どう考えても、何処からか監視している気配がするのだけど、未だに見つける事が出来ていない。


 いくら魔法でも、何も媒介しないでその場所を見るスキル等この世界には存在しない。

 なので精霊なり、悪魔なり、もしくは魔導具なりの媒介となるモノが存在するはずである。


 魔道具だとしたら、数万か所にもおよぶ場所に設置する必要があるので現実的には不可能であろう。


 であれば、あの顔だけの悪魔のように中継役となる悪魔がどこかにいるはずである。


 ただ、今からその悪魔を探し出して倒す暇は無いだろう。


 そこで、城に入ってから結界を張って視界を遮り、そこで〈幻惑術イリュージョン〉を発動し全員不可視化した状態で進むのがいいだろうという事になった。


 今の俺なら、他のメンバー全員に効果を及ぼすことが可能だ。

 しかも、なにかしらの攻撃をくらうまでは解除されない。


 そして、途中から二手に分かれれば、まだ誰が隠れているか見当を付けるのが難しくなるので、隙を突きやすいだろうという事だ。


 俺のSPがかなり消耗される作戦になるが、まだまだSPポーションはあるので、飲むタイミングさえ見誤らなければ問題なくいけるはずだ。


「ここからはスピード勝負だ。多分、城門の所に大物を置いてあるだろう。そこを瞬殺していくぞ!」


 俺の掛け声に、おう!とやる気のある返事をくれる。

 その後に、二人の可愛らしい声で提案される。


「はーい、そこは私達に任せて!ね、ディアナ?」

「そうです、マスターは私達に任せて先に進めば宜しいのです。そんな雑魚は、私達で十分だとちゃんと見せてあげますよ」


 二人もかなりやる気のようだ。

 というより、どこか怒りのようなものを感じる。


「私達の可愛い子に、手を出すなんてあのオバさん、相当キテるわね」

「そうだね、本当は私達の手で潰したいけど、マスターの方がお怒りみたいだし、邪魔する門番に怒りをぶちまけちゃおうっ!」


 うん、何やら物騒な事を言っているがこの調子なら任せてまず問題なさそうだ。

 魔王幹部クラス以外、今のこの子達を止めれる者はいないだろう。


「よし、いくぞ!」

「「「おおーっ!」」」



 かくして、俺らは街の中央から街の最北端に位置する王城へ続く道を塞ぐ城門の前に向かうのだった。



 ───


 となる一つの研究室。


 そこには、一人の少女と一匹の魔獣が特殊な鎖につながれていた。


 その首には、不思議な文字が掛かれた首輪も嵌められている。


「ふふふ、アイツらが来る前にやってしまわないとね。大丈夫、すぐに終わるから。これを飲めばすぐにね…」


 薬を持っているのは、魔王軍宰相のヘラである。

 彼女は、魔王軍幹部である前に古くから存在する魔女の一族の総帥でもある。


 その一族の集大成とも言えるこの薬が完成していたのは、もはや運命とも言えるだろう。

 どこか恍惚な表情を浮かべながら、その薬を少女の口に流し込んでいく。


 その少女、リンはまだ魔法により気を失ったままだった。


 流された液体を抵抗することも出来ずに、コクコクと飲み込んでいく。


 飲み込んだあと、意識が無いままリンは苦悶の表情で絶叫した。


「がああああっ、ぐああああ!?あああああああああっっっ!」


 すると変化が劇的に現れる。


 真っ白い肌がどんどんどす黒い色に変化し、目の光彩が紅く染まる。

 まるで中身が溶けて作り替わる様に、皮膚の下からボコボコと突き上げるように波打ち出した。


 そのうち、背中が裂けてそこから黒い羽根が生える。


 歯がすべて抜け落ちたかと思ったら、次の瞬間には新しい牙のような歯が生えた。


 華奢だった体も一回り大きくなり、引き締められた筋肉が作り上げられる。


 さらに、髪の色がすべて銀色に変わった。


 そこに、もう以前のリンを象るものは存在しなかった。


「フフフ、成功ね。」


 ヘラは、リンの顎を掴むとそのまま持ち上げた。


 リンは、意識がまだ混濁しているからか、うまく喋れずガアアアアアアと叫ぶしか出来ない。


「この秘薬はね『堕落の雫(フォールンドロップ)』。お前を人間から悪魔に作り替えてあげたわ。

 これはね、強靭な肉体と魔力を得る代わりに、悪魔になるって代物よ。

 並みの人間では飲んだだけで死んでしまう劇薬なのだけど、さすがあの男の娘ね。良いカラダをしているじゃない。

 ふふふ、まぁどんなに強靭な人間でも、精神が保てずに廃人になってしまうのが欠点なのだけどね…。ふふふ、あははははっ!あいつこの娘を見たらなんと思うかしらね?」


 手を離すとリンはそのまま床に伏す。

 起き上がる力も今は残っていない。


 悪魔と化したリンから目を外すと、早くも覚醒しようとしているクロに目をやる。


「あら、忌々しいアイツと一緒で、お前も悪魔よりなのかしら?随分と効き目が切れるのが早いわね。まあ、その鎖をしているから逃げれないのだけどね。さあ、お前にはコッチよ。そーら」


 そういうと、違う薬をクロに飲ませるヘラ。

 クロも体に力を入れる事が出来ずに、抵抗する事すら出来ない。


 流し込まれたものをそのまま飲み込んでしまう。


 クロもまた変化していく。

 但し、その変化はより一層ひどいものだった。


 クロの()()()()()()()()

 そうとしか言えない現象が起こり、毛皮以外が全て溶けて蛹の様な状態になる。


 その蛹の様なものが膨れ上がり、毛皮を被せたボールのようなものが出来上がった。


 なかで蠢くナニカが、中から這い出てこようと藻掻く様に暴れる。

 そして、クロの毛皮だったものを破り、中から黒い巨大な狼が出てきた。


「ふふ、成功したわね。さぁ、星獣フェンリルよ。この城にやってくるアイツらをその娘と共に打ち倒すのよ!」


 ヘラが使ったのは、『星獣の秘薬』。

 これも彼女の作り出したとっておきの秘薬だ。


 魔獣を強制的に進化させて、新たな魔獣を生み出すものだ。


 強さは元の魔獣に依存するが、その強さは格段に上がる。


 その代償として元の精神が破壊されて、正気を保てなくなるのだがヘラにとってはどうでも良い事だった。


「これで一人でも倒してくれれば良いのだけど…。あとはタラスクとあの男に任せるしかないわね」


 ヘラはそう言うと、魔法陣を描いてリンとクロを強制転移させるのだった。



 ───

 城門前には3人の騎士がユート達を待ち構えていた。


「ここから先は、ヘル様が許可したものしか通す事は許されない。お前たちは、ここから先には行かせん!」

「我らが居る限り、何人もここを通る事はまかりならん!」

「…」


 最後のは喋れないのか?


 生命学バイオロギーで鑑定するとかなりの強者のようだ。

 鑑定結果は以下の通りだった。


 暗黒剣士ヴァンドム 種族:暗黒騎士 ランクSS HP:4444

 暗黒槍士メナムス 種族:暗黒騎士 ランクSS HP:4444

 暗黒斧士クドゥア 種族:暗黒騎士 ランクSS HP:4444


 HPこそ特殊ボスほどじゃないが、その分ステータスがほぼMAXになっているようだった。

 更に騎士というだけあり、それぞれが武器の達人のようだ。


 力技だけではない分、こういう輩は厄介な相手となる。


「さーて、私達の出番だよね!ディアナ」

「そうねヘカティア。さぁ、宣言通りここは私達にお任せください、マスター」


 双子が前に出て戦闘態勢を取る。

 竜化していないが、そのまま戦うのか?


「任せたぞ!」


 二人に任せてそのまま通り過ぎようとすると…。


「そのまま行かせるものかっ!」

「もう、君たちの相手は私達だよ?」


 暗黒斧士クドゥアが俺を追って攻撃しようとしてくるが、ヘカティアがそれを防いで阻止した。

 さらに。


「吹っ飛べ、〈ドラゴニックキャノン〉!」


 と、両手を暗黒斧士クドゥアに添えてそこからあふれ出したエネルギーにより、宣言通りに吹き飛ばした。


「なんだありゃ?」

「あれは、ブレスと同じ効果を手の平から生み出しているのだろうな。あの二人も意外と器用な事をするな」


 俺の疑問にカルマが珍しく感心した様子で答えてくれる。

 双子も日々進化しているようだ。


「ささ、マスターはさっさと行っちゃって~!こいつらは、私達がちゃ~んと躾しておくからね」

「さあ、私達が格の違いというのを見せてあげますよ。我らに歯向かったことを後悔するがいいぞ」


 段々と口調が荘厳な物言いに代わっていくと同時に、二人の体が金と銀に輝きだす。


 二人が両手を合わせるとその輝きは増していく。

 二人が見えなくなるくらいまで光ったあと、そこから見たことも無い一匹のドラゴンが現れた。


「「マスターが、真の力に目覚めたとき、我らもまた真の力を解放出来た。感謝しろ、我らの最初の相手がお前たちであるという事を」」


 竜の巫女である二人が力を合わせて顕現させたこのドラゴンは、【皇竜カイザードラゴン】という。


 ドラゴン族の頂点であり、彼女らの祖父がその名を冠したドラゴンであった。


 二人がその力を解放したとき、その化身を呼び出すことが出来るのだった。


 これが彼女らの真の力であり、切り札の一つである。


 ちなみに現れたドラゴンを倒しても双子は一切のダメージを負わない。

 彼女らが変身しているのでは無いからだ。


 但し、隠されている彼女らの本体が直接攻撃されればもちろんダメージを受けるのだが、それをするにはこのドラゴンの厚い皮膚を貫通する必要があるのだった。


「な、な、なんなんだ!?あんなドラゴン見たことないぞ!?」

「落ち着けメナムス。どうせ単なるコケ脅しだろう。ただし、ドラゴンロードを相手にしていると思わないといけない。油断せずにいくぞ!」

「さすがヴァンドムだ。こんな化け物にも冷静に対応できるとは。さあ、お前たち、降参するなら今のうちだぞ?」


 と、小物っぽい会話ばかりしているので一瞬『あれ、本気出したのバカみたい?』と戸惑うも、もしかしたら強いのかもしれないしと、全力のブレスをお見舞いした。


 七色に光る超強力ブレスは、地面の土を一瞬で蒸発させ、石だったものは融解して一部ガラスのようになっていた。


 それだけの高熱なブレスを受ければ大抵の相手がひとたまりもない。


 だが、あれだけ豪語していたのでまず生き残っているだろうと、次の手として魔法を準備する皇竜だが…。


「「あれ?居ないぞ?」」


 そう、彼等の姿は無かった。

 逃げたわけでも、消えたわけでもない。


 なぜならば、彼等の鎧だったものが溶けて三つの金属の塊と化していたからだった。


「「あれれ?もう終わり?ちょっと私達のシリアスを返してよ!!」」


 とその巨体で地団太を踏み、奇しくも抉れてしまっていた土地を平らに戻すことに成功するのだった。



「ありゃ?一瞬で終わったみたいだぞ?」

「そうだろうな。あれでも本物の竜王なのだ。本来の力は魔王に匹敵する筈ですからね。だが、丁度いい陽動となったはずだ。主よ、ここでイドラを召喚し、〈幻惑術イリュージョン〉を使わせるのだ」


 ああ、そうか。

 忘れてたけど、イドラでも〈幻惑術イリュージョン〉なら使えるんだった。


 しかも熟練度が俺よりも高いので、かなり隠蔽率が上がる筈だ。


「いでよイドラ!そして、〈幻惑術イリュージョン〉で俺らを隠蔽しろ」


 竜玉を掲げてイドラを召喚する。


 すぐに出てきたイドラは、命令通りにすぐ〈幻惑術イリュージョン〉を発動し全員の姿を覆い隠した。


『いきなりスキルを要求するとは、段々扱いが雑になって来ているようだの主殿。まあ良いか、任されたからにはキッチリやり遂げよう』


 

 全員が姿を消した状態で王宮内に侵入していいく。


 途中、俳諧する大型の魔物が数体いたくらいで他には何にも遭遇しない。

 もちろん消えているので、相手からも気が付かれない状態だ。


 そんな中、城内の大きな中庭に出た。

 そこにあった噴水やら彫刻像などはすべて破壊されており、無残な状態だ。


 戦闘があったであろう痕跡がいくつも見える。

 だが、ここまで人を見かけていなかった。


 生死問わずにだ。


 そんな時だった、中庭の中心に魔法陣が浮かび上がった。


 何かのトラップか?と身構えるとそこに現れたのは…


「うふふふ、クロちゃん。なんかいい匂いがするね~。きっとあの人が来ているんだわ」


 黒い肌をし、紅い瞳に銀色の髪。

 そして、その邪悪な笑顔は魔族そのものだったが…


 何処か聞き覚えのある声の気がする。


 その少女は巨大な漆黒の狼に乗っており、その毛並みを楽しむように撫でながら辺りを見回している。


 突然、巨狼が大きくグオオオオオオオオオオォォン!!と吼えた。


「ん、発見した?うんうん、エライ子だね!ご褒美にあの人の骨をお前にあげるね」


 そう言うと、明らかに真っ直ぐこちらに向かってきていた。


(主よ、あれは・・・)

(分かっている、理解したくないが()()()()()()()よ。なんてことをしてくれるんだ…)

(主よ、我は先にヘラを探しにいく。元に戻すのに、あの女が必要だろう)

(頼んだぞ、俺はここを抑える)

(承知)


 カルマは、すうっと気配を断ちひとり王宮の奥へ向かった。


 俺は姿を少女の前に表し、臨戦態勢を取った。


「やっぱり、そこに居たんだね!うふふ、会いに来てくれたの?嬉しいなぁ~!」


 無邪気に邪悪に嗤う少女。

 巨狼から降りて、俺の前に歩み寄ってくる。


「だーい好きよパパ!だから、私の為に死んでチョウダイッ!」


「お前の為にも死ぬわけにはいかないさ!いくぞリン!」


 かくして、望んでもいない壮絶な父娘おやこ喧嘩が始まるのだった。


いつもご覧になって頂いている方々、本当に有難うございます。


日々、皆様より評価やブックマークしていただけて、励みになっています。

まだの方は、よろしければ広告の下にある評価ボタンを押していただければと思います。


是非よろしくお願いします。


やっと、通常更新に戻れそうです。

これからも楽しく書いていけるように応援よろしくお願いします!

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