星を蝕むものと抗うもの ②
とある白き女神の話。
我らは全てを封じられたわけでは無かった。
あの何処からともなく現れた異界の者は、狡猾にも我らの力が弱まるのをずっと待っていたようだ。
しかし、だからと言って普通の生命体が我らに干渉することなど到底不可能な事なのだ。
なのにそれをやってのけた。
アレは、我らに近しき存在となっているようだ。
このままでは、アレの思うがままにこの星を荒されてしまう。
だが封印されてしまった今では、思う様に力を使う事が出来なくなっている。
管理者として作り上げた我が半身も、今ではアレに力を奪われてしまい更に二つに分けられてしまった。
この状態では、我の命令も行き届かないだろう。
せめて、近くまでやってくれば干渉が出来るのだが。
───そう思っていたら、その半身の片割れが我を監視するためにやって来た。
近くとは言っても、あちらからは我を認識出来ないようだが、この封印の扉を監視しておるのだな。
ならば…
我は、僅かに残っている力を使いその監視者に干渉を始めた。
数十年の時を経て、その者と意識を同調させることに成功した。
その監視者を使って、アレに対抗する存在を徐々に作っていった。
最初は”天使の創造”だった。
最初から巣くっていた人型に近い魔物を僕とし、その体を作り替えていく。
創造した天使の中でも高位の者を集めて、手足として活用した。
世界の全ては見ることは出来なかったが、近隣の土地での出来事やそこの者たちが噂している内容を把握する事くらいは出来るようになっていった。
その間に一度だけ様子を見に来たアレには、塔の管理のために強化していると適当に誤魔化しておいた。
封印された後の我らには特に興味を示しておらず、どうでも良いかのような反応しか示さなかったのは幸いだった。
次に監視者自体も肉体を弄っていく。
天使となった魔物達の中から強くなった者たちを肉体に取り込み、監視者自身の肉体と魂を強化していった。
百年くらいかけてそのような事を繰り返していた時、この塔に訪れる者たちがおった。
彼らは、人間たちの代表のようで魔王を名乗る者を討ち滅ぼす力がこの塔にあると聞いてやってきたらしい。
魔王とは、アレの事だろうか?それとも、別の何かか。
情報が欲しいと思い、わざと配下の天使たちにギリギリで負けさせて、塔の支配者と謁見する権利を与えるという演出をさせた。
そして監視者であり、この塔の天使の長のルシエルに会わせるのだった。
彼らは人間の国の"勇者"らしく、この塔には魔王を倒せる力を持つ存在がいると"光の精霊"から聞いたという。
光の精霊。
それは我の半身のもう一つの片割れ。
まだ存在しておったのを思わぬ所で知り、安堵する。
そして、この勇者は光の精霊から勇者の証なるものを授かったという。
その魂を覗いてみると、ほうどうやら素晴らい素質を持っているようだが、その魂に我の魂が一部分だけ混入しているように見える。
なるほど、魂を分け与えてスキルに変化させているのだな。
そこで我も同じことをすることにした。
ルシエルを通して、我の魂の一部分を分け与える。
弱体化したとはいえ、この世界の神の我の魂だ。
人間からすると途轍もない力を発揮するだろう。
その勇者には、"覇王となる力を授けた。その力を鍛えあげ魔王なるものを討ち滅ぼすのだ"等と仰々しく言い、魂を注入しスキルを授ける。
発現したスキルは先ほどの言葉に由来したのだろう、『覇道』という名のスキルになるのだった。
そして、自分の魂を分けて作ったこのスキルを媒介に我もこの世界を視ることに成功するのだった。
たった百年程で我らが作った世界は変わってしまった。
我らが戦争を起こした際に、7割の大陸が死の大地と化し人間達が住める状態ではなかったが、その分他の生物や精霊たちの住処になったようだった。
生き残った人類の大半は、最後の地【アストラ大陸】に分散して住んでいるようだった。
白の女神が作った人類が人族と言われるようになり、黒の女神が作った人類が魔族と言われるようになっており、その中で一際力を持っている者達は英雄と言われるようになっていた。
なかでも人族の英雄は、精霊から力を借り受ける事で更に力を付けて、多くの精霊から加護を受けると勇者と言われるようになっていた。
逆に魔族の方は、それぞれの部族の中で一番力を付けた者が次第に魔王と呼ばれるようになったようだった。
その中で最初の魔王と呼ばれるものがいた。
名前をルキデウスという。
使徒を放って確認したが、間違いない。
あの時の者が化けたものだ。
その時に悟ったのだ、このまま放置していればこの星は終わる。
そして、その時には我も黒の女神も終わりなのだと。
断じてそれだけは許せなかった。
我が、我らが異邦の者に滅ぼされるなどと。
そこで我は、その力に対抗するべく先の勇者にある仕掛けをした。
我が放った魂は、スキルとして引き継がれその際にそれまで蓄えた力を次の代に継がせるようにした。
いつかその魂の力があのルキデウスと名乗る者と対等になったら我の元に導き、我を封印から解き放つ手伝いをさせようと。
それから千年の時が経った。
ある時までは順調にいっていたのだが、暫く『覇道』を受け継ぐ者が生まれていない。
いや実際には生まれているのだが、我が見つける前にその芽が摘まれるかの如く命が絶たれてしまう事が続いた。
どうやら、気が付かれていたようだ。
さすがに魂の力を奪われることは無かったが、その存在を危険と感じているのか魂が育つ前に摘み取られるようだ。
それならばと、気が付きにくいように『覇道』の力を『覇王』のスキルに変化させ、『覇道』に至る力を他の精霊達に分け与えた。
来るべき時までそれぞれの精霊たちに育てさせ、すべての精霊から力を授かったものが『覇道』を覚醒出来るように…。
そうすることで、ルキデウスに見つかる事が以前よりも少なくなったのは幸いだ。
しかし、ある時だった。
世界が急変する。
あのルキデウスが、異世界より新たな力を呼び寄せた。
それにより、いくつかの我の魂が別のナニカに取り込まれてしまったのだ。
その際に監視者であるルシエルも巻き込まれて、我の管理から外れてしまった。
世界は再び我の目が届かない場所となってしまった。
再び魂の牢獄となったこの場所の中で我は祈るのみとなった。
──願わくば、我が魂を授かった者が再びこの塔の頂上へと至る事を。
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本編は、翌日までに更改予定です。




