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レディな冒険者とおっさん。

 結構遅くなったので、夜ご飯もご馳走してあげた。


 移動も面倒くさいので酒場に来ていると、見慣れた人間がやって来た。


「あ、ユートさんこちらでしたか。」

「おう、ライ。特に問題ないか?」

「ええ、流石に例の一件以来はうちにちょっかい掛けてくる輩もいませんし、問題は起こっていないです。むしろ、冒険者たちが修繕工事を手伝いだして、早く終わりそうですよ。」


 巡回だけという話だったが、資材運びやら廃材処理やら素人でも手伝えそうな事は率先してやってくれているようだ。


「そうか。じゃあ、修繕工事終わったらこの子達を先に住まわせてもいいかもな。」

「おや、この子達は?」

「例のノーセリアでの戦いで残された子達だ。首領のグラムがお尋ね者だったから、王都には連れていけなかったのさ。」

「ああ、それでサニアに居るんですね。」


 ほら、お前達挨拶しなさいと言うと子供達はライに挨拶した。

 人の良いイケメンが優しく宜しくねと言うと、女の子二人は顔を赤らめてた。


「ライと言うのか、私はセツナ。ユート殿の配下に負けて軍門に下ったのだが、曲がりなりにもSSランクだ、戦闘の際は使ってくれて構わない。」


 ユート配下のペット達に負けてプライドも打ち砕かれたセツナは、自嘲気味にそう言った。


「ええっ、SSランク?!英雄クラスじゃないですか。そんな、畏れ多いですよ。でも、【ウィンクルム】にようこそセツナさん!そのうち分かると思いますが、ユートさんに出会えた貴女は幸運です。」


 ライが恥ずかしげもなくそう言ったので、言い過ぎなのでは?と思ったが、この世界にしては贅沢しているので、あながち間違いでは無いかと思い直した。


「ランクだけが強さではないと、あの戦いで学んだからな。グラムはユート殿を見ていれば私が求めている強さが分かると言い残して消えたからな。それがなんなのかこの目で確かめてみたいと思っているよ。しかし、幸運か。本当にそうなら嬉しいよ、期待させてもらうよ。」


 こっちの世界に来てから、散々な目に遭ってきたセツナは、いい加減自分にもいいことがあっていいのではと思っていた。


 少なくとも、この目の前のイケメンの好青年が慕う程の人格者ではあるんだろうと理解は出来たのだった。


「ねぇねぇ、リン。修繕工事って何かしら?」

「あ、うんとね。町の外れにパパ…ユートさんが買ったお屋敷があるんだ。そこにみんなで住んでいたのよ。おっかない人達が大勢押しかけて色々壊されちゃったから今は工事しているの。」


 リンは、レーナの質問に困り顔で答えた。

 あの時ユート達がタイミング良く帰ってきていなければ、どちらかに死人が出ていただろう。

 そんな説明をレーナにしていた。


「え、おじ様ってお屋敷をお持ちなの?しかも、そこに夜盗が大勢襲撃してきた!?」

「うん、でも騙されてた人たち以外はみんな捕まえられたから、もう大丈夫だって!」

「そんな事が…。リンも大変だったのね。」


 あはは、そんな事ないよ~?と苦笑いしながら襲撃について話を続けていた。

 男の子たちも、そんなリン達の話を聞いて色々と感心していた。


「そういや、リンはランクいくつになった?」

「私は、このあいだAになったよ。」

「おー、じゃあ俺らと一緒だね。俺らもAランクになったばかりだから、セツナねーちゃんに鍛えて貰いながらステータス上げてるところなんだ。リンも一緒にやらないか?」


 

「うん、いいよ!でも、パパに聞いてみないと。」

「リン?貴女のお父様は、ユートさんとは違いますよね?一体どういう関係なの?」


 不思議に思ってたレーナがストレートに聞いてきた。


 重要なイベントがある時は親が参観したりする。

 進学校でもあるリン達の学校は、授業参観に父親が来るのは珍しくない。


 同じクラスのレーナは、鈴の父親に会ったことがあるのだ。


 ユートは、その父親に顔も雰囲気も全く似ていないので同一人物には見えなかった。

 まして、こんなゲームの世界に来るなど()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「パパは…ユートさんはね、こっちの世界で死に掛けてた私達を助けて、この世界で家族として守ってくれるって言ってくれたの。まだ優しかった頃のお父さんの様に、とっても優しい笑顔でね。」

「そう…、そうだったのね。あのおじ様が貴女を救ってくれたのね。そして、この世界の保護者として貴女を守ってくれているのね。」

「うん、パパはね。この世界では本当のパパなんだよ。厳しいときもあるんだけど、とっても優しいんだ。一緒にいるだけで幸せになるの。」

「あの超真面目優等生がそこまで言うんだもの、おじ様の事は信頼出来るわね。でも良かったわ貴女が良い人に出会えて。今の貴女は、すごく素敵な笑顔だもの!」

「うん!レーナも一緒に居ればすぐ分かるよ。」

「リンちゃん、良かったねぇぇ。」

「あ、アーヤ!?」



 ふとリンの方を見ると、二人の話を真剣な顔で聞いていたアーヤがなぜか涙目でリンに抱き着いていた。

 そのあとレーナもリンと抱きしめ合っているのを見て仲が良い友達だったんだなと感じた。

 こっちでこの二人に再会出来たのは、リンにとっては良かったかもしれないな。


「さて、そろそろ寝る時間だな。セツナ、今日の宿はどうなっている?」

「私達は、それぞれ個室で宿を取っています。」

「へぇ…、ちなみに全員でいくらだ?」

「ちゃんと節約していますよ!全員で1日銀貨2枚です!」


 おおいっ!金貨50枚渡したのに1日銀貨2枚だと?

 飯もそんなにいいの食ってる感じがしないし、何に使ってるんだ?いや、使っていないのか??


「それで残金いくら?」

「金貨48枚と銀貨1枚ですね。」

「お前…さては貧乏性だな?」

「えええっ!?でも、グラムと一緒の時から比べればこれでも良い方ですよ?!」


 ダメだ、グラムとの過酷な生活に慣れてしまい(グラムは多分豪遊していたはずだが)お金の感覚が渋すぎる。

 特に、女子なのに清潔感が感じられない状態はあまりよろしくないな。


「よし、今日は俺らも泊るから、一緒の部屋にしよう。付いてこい。」

「え、いくら世話になるからってユート殿と一緒なのは女子として色々と心の準備が…!」

「何を言ってるか分からんが、お前にはお金の正しい使い方を教えてやる!レーナ達も一緒に来い。ライ、また明日打ち合わせしたい事があるから、朝になったらギルドに来てくれ。」

「えっと、良く分からないけど行けばいいのよね。じゃ、ライ様ごきげんよう~!」


 いきなりの展開についていけずにぽかんしていたが、いつもの事かと切り替えてライも分かりましたと全員を見送るのだった。


「やあ、店主お久しぶり。」

「これはこれはユート様。お屋敷買って以来ですね。今日は、お泊りになるので?」

「ああ、あのタイプ2つ空いているか?」

「ああ!はい、丁度貴族様方が引き払ってしまったので、借りる方をお待ちしていたところですよ。」


 タイミングが良かったようだ。

 俺とリンはすぐに帰るが、セツナ達はもう少しここにいて貰う事になる。

 

「じゃあ、朝飯付きで2部屋で1週間金貨2枚でいいか?」

「ええ、もちろんです。では案内させますので。」


 ここの宿屋は、この町で一番いい所だがそれだけじゃない。

 王国の宿屋には無かった風呂があるのが一番の売りだと思う。


 屋敷の風呂とは比べるべくもないが、あると言うだけでかなりの価値があると俺は思う。

 それに、この世界に来てからもしかしたらまともに風呂に入っていないかと思うと、女の子3人が不憫に思えてならなかった。


「男子3人は俺と一緒な。あと、女子四人とニケはそっちな。」

「ここ、最上階の部屋ですね。」

「うおー、すっごいいい部屋!あれ、でもベッドなくない?」

「そこはリビングだ。奥にそれぞれ使える寝室があるから適当に割り振って使っていいぞ。」

「わぁ…ハワイのスイートルームを思い出しますわ。」


 各々感想を口にし、分かれて中に入っていった。

 俺は一応両方の部屋の鍵を渡された。


「ユート殿!こんな部屋…一体いくらしたんですか!?」

「二部屋で1週間金貨2枚だね。しかも朝飯付きだぞ?安いもんだよ。あと、ここの部屋だけ風呂あるからちゃんと使えよ~。あ、これセッケンね。予備の持ってきてたから渡しておくわ。」

「!!?」


 セツナは驚きのあまり、言葉を失っていたがあとはリンがなんとかしてくれるだろう。

 リンは一緒に寝れないの?と言ってたが、今日は友達と一緒の部屋に寝なさいと言ったら素直に頷いていた。


 最近、家を空けていたせいですっかり甘えん坊になっているな。

 まぁ、悪い気はしないんだけども。


 ちなみにニケも涙目で一緒の部屋にと駄々をこねたが、お前のボディは少年の目に毒だと言って却下した。


「ショウタ、ユウマ、ダイキ。お前たちもちゃんと風呂は入れよ。そんなんじゃ女子にモテないぞ?」

「やったー、久々に洗えるぅ!」

「うあ~、モテないのは困るね。」

「わぁ、お風呂とか数か月ぶりだねぇ。」


 3人も概ね喜んでいるようだが、まずはその汚れた体を綺麗にしてからなと部屋に押し込んでおいた。


「じゃ、明日の朝食はこっち側に運ばせるから、朝起きたらこっちに来てくれな。おやすみ~!」


 そう言って、女子たちとそこで別れた。

 きっとあっちでは、久々にあった友達同士で話が盛り上がるだろう。


 男子たちを風呂に入れて、石鹸とタオルを使って背中を綺麗に洗ってあげたりしつつ、それぞれ風呂に入ったらすぐに眠りについた。



 翌朝、朝食のために全員がこっちの部屋に集まった。


「こっちの世界にもお風呂があったなんて知らなかったわ。みんな体拭いて生活してたから、無い物と諦めていたのに!」

「普通の人たちはそれが当たり前みたいだね。お風呂に入るのは貴族くらいらしいよ。」

「おっちゃん、ずっとこんな生活しているの?俺、ずっとここがいい!」


 今までの生活とはあまりに違う環境に大喜びの子供たちだったが、一人浮かない顔をしているのがいた。


「こんな生活に慣れたら、いつもの生活に戻れなくなります…。」

「そういいつつ、しっかり綺麗になったじゃないか。髪も艶々になっているし。」


 リンには、セッケンと一緒にトリートメント用に使っているエッセンシャルオイルを渡してある。

 貴族達が使っているものを王国で買っておいたのだ。


「う、これは使っていいと言われて…。でも、こんな贅沢をいつまでも出来ないでしょう?」

「いや、別に贅沢ではないだろ。それうちの女子メンバーみんな使ってるぞ?」

「ええっ!そんな…。」

「まぁ、屋敷が修復されたらもっと大きな風呂に入れるし、うちのメンバーになるのなら慣れても大丈夫だぞ。生活は俺が保証してやるよ。」


 それから、屋敷の事と使用人の事を説明した。

 また、クエストによる収益と今のユニオンの財政状況を説明した。


「おじ様、それってこの世界だと富豪と言われている人達と何ら変わらないのだけど?」

「だろうなぁ。でも、LBOの時の財産が結構あったからな。お前たちは、貯金なかったのか?」


 いくらこっち来てから収入なくても、一般プレイヤーの所有するお金はそれなりにあるはずだ。

 ここまで貧乏なのもおかしい。


「俺ら、こっちきてから装備買ったからあんまり手持ち無いんだ。しかも、今までクエスト受けれなかったし。」

「そうそう、それに手持ちにしてたお金消えたからその時点で結構無くなったんだよね。」

「しかも、グラムのおっちゃんにお金渡してたから、元々そんなに残ってなかったもんねぇ。」


 あの野郎、子供からもお金せびってたのか。

 ダメな大人の象徴みたいなやつだな。


「私のお金はすべて、グラムに渡してました。彼の口座は凍結されてしまったので王国で引き出せなかったんです。」

「うわー、ちなみにいくらあったんだ?」

「金貨にして、3000枚くらいです…。」


 さすがSSランクの冒険者。

 元々持ってたのに、すべてアイツの懐か…。

 こりゃ、各自でお金稼ぎ出来るようにしてやらないと色々大変そうだ。


「じゃあ、今日はクエストを受けようか。お前たち全員をユニオンに登録しなおす。問題はセツナだよなぁ。なんとか秘密裏にギルドに登録出来ればいいんだけど。」

「なぜですか?」

「お前がSSランクだからだよ。今まで表に出てないのに、いきなり噂のユニオンの二人目のSSランクなんて目を付けてくださいといいようなもんだろう?」

「確かに…。私がお尋ね者になったわけじゃないですが、ギルドは情報を持っている筈ですから。」

「あいつら、俺にも隠してたからな。登録しようとしたら逆に弊害が出るかもしれない。」


 セツナがギルドに登録するメリットは今のところ少ない。

 これ以上ランクアップが出来ないわけだし、無理してクエスト受ける必要性はない。


 メンバーに代行して受けて貰い、その報酬を山分けすれば十分だ。

 それならいっそ。


「よし、セツナはギルドの登録しないでおこう。俺や他のメンバーの受けたクエストを手伝う形でいこう。報酬は折半でいいよな?」

「ああ、それがいい。私もその方が気楽だしな。」

「じゃあ、決まりだな。」



 その後、ライが待つギルドにお子様5人を連れていき冒険者ギルドへの登録と、ユニオンメンバーの登録作業をしてもらった。

 申請は俺から説明を受けたライにやって貰った。


 ミルバとゼオスにも話を通し、そういう事なら問題ないだろうと保護した幼い冒険者を再登録しメンバーに迎え入れたと本部に報告してもらい、すんなり承認が降りたのだった。


 その際に、セツナを冒険者ではなく剣術指南役としてユニオンメンバーに登録した。

 これならギルドにステータスを登録しないでユニオンメンバーとして活動は出来るらしい。

 ゼオスに提案された時は目を疑ったものだ。


「お前だから教えてやるんだからな?絶対素性をしられるようなヘマするなよ?」


 と、念を押しつつニカっと笑うゼオスを不覚にはかっこいいと思ったのは内緒だ。

 やっぱいろんな人と良い交流を持つ事はいいことだな。


 その後は、5人の初クエストに付き合う形で地獄の塔へ向かった。


 流石に歩きでは行ってられないが、かといって8人も乗せれないので俺が野生の馬を調教テイムした。

 幸い、全員乗馬経験(LBO内で)があったので難なく乗れた。


 俺のスキルの影響で、普通の馬よりも遥かにステータスが高くなっているのでかなりスピードを出して移動していたが、スタミナが普通の馬なので休憩を入れつつ移動すること4時間。


 ついに入口に到着したのだった。


「うわー、久々のダンジョンだ。」

「ここなら馬に乗ったまま入れそうですねぇ。」

「レーナさん、ここでならステータスも上げれそうですね。」

「そうねアーヤ。でも、油断は禁物よ。いつも通り慎重に行きましょう!」


 それぞれの思いを乗せつつも、かくして久々の『地獄の塔』クエストが始まるのだった。 



いつもご覧になって頂き、本当に有難うございます。


日々評価やブックマークが増えて、皆様に応援されていると感じることが出来ています。

執筆の励みになっています、本当に有難うございます!!

これからも、楽しく書いていきますので、

是非一緒に楽しんでいただければと思います。


次回は、平日投稿予定です。

よろしくお願いします。

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