王都へ出発
ついにランクアップしたリンとシュウを祝い、全員が集まった。
昨日の祝勝会に続いて今夜はリンとシュウのランクアップ祝いだ。
連日宴となってしまったが、お祝い事はみんなでやった方がいい。
みんなにおめでとうと言われて、二人は照れながらも満面の笑みで喜んでいた。
これで二人は、超一流冒険者として名を連ねる事になる。
若干12歳でAランク到達は、この世界では類を見ない早さということだった。
ギルドには更に注目されていくだろう。
しかも、リンはドラゴンライダーとしても成長している。
相棒のピューイとの連携しつつ、『空間戦闘術』使っての攻撃は見事だった。
シュウもここ最近の剣技には磨きが掛かっている。
コンビネーションと〈必殺〉の組み合わせ技がうまく繋がっているようで、結構ダメージを与えれるようになった。
ちなみにギルドのお姉さま方には、少年剣士と言われてて、なかなかウケはいいようだ。
今回の遠征でユニオン【ウィンクルム】の成果は大きかった。
クエストクリアだけでは無く、ボスの討伐まで成功したのだ。
報酬は150金貨と、ユニオンのランクアップだった。
明日には、その事も町に知れ渡り知名度はますます上がるだろう。
カイト達が全員無事にランクアップクエスト受けれれば、次はSランク冒険者が一気に5人も増える。
そうなれば、またユニオンの注目は上がるだろう。
これに合わせて何か商売とか出来ればもっと稼ぎが楽になるんだろうな。
そこら辺は、もうちょっと考えないとだな。
ガントとライに相談しよう。
取り敢えず、今夜は思いっきり労ってやろう。
ずっと訓練してたのを俺は知っている。
ゲームの時と違って、本来は無茶なスキル上げなどは、死を感じた二人なら本能的に反発する気持ちが出てもおかしくはない。
その中で訓練を兼ねて常に冒険に出ている二人は、かなり強い心を持っていると言える。
そこらの大人の冒険者ですら、一度死に掛けるとなかなか足が向かないと言っていた。
ただ、そういう意味ではカイト達も一度死に掛けたが今回も死にもの狂いで戦っていた。
決して、俺達がついているからだけではあんな危険な戦いに参加は出来ない。
これからの活躍はかなり期待できるだろう。
俺的にも楽しみだ。
その日もみんなで楽しく食事や飲み物を堪能しながら夜遅くまで宴は続いた。
───翌朝。
相変わらず朝が早いガントと食堂で会ったので少し会話をしていた。
「おうユートおはよう。いい所に来た。」
「おう、おはよう。どうした?何かあったか?」
であってすぐに話があると言うので、メイアに朝食を頼んでから、食べながら話そうということになった。
「で、なんだい話って。」
「ああ、昨日な。マリエル師匠のところに行って話をしてた中でよ、そろそろ鍛冶がカンストするって話をしたら教えてくれたんだよ。」
「ん?何をだ?」
「Sランクへのランクアップクエストは、王都じゃないと発行出来ないって。」
「はぁっ!?なんだって!? そりゃあ、…面倒くさいな。」
「だろう?LBOの時は、どこででも受けれたと思ったんだが、【アストラ】ではそうはいかないらしいな。」
別にクエストを受けるは何処でもいいのだが、面識がないギルドへ赴かないと行けないというのは、結構というかかなり面倒くさい。
あっちでは顔パスという訳にはいかないだろうしな。
ただでさえSランク冒険者が少ないこっちの世界で、一気に5人も受けるという事になれば注目が集まるだけじゃなく、達成後に王都から何か要請が来るかもしれない。
ギルマスが言ってたな。
王都に目を付けれらるというのは厄介だと。
「どっちにしろ、王都へは一度行かないといけないか。」
「だろうなぁ。クエスト自体は手伝うんだろう?」
「んー、実は…」
そこで、ガントには今後の事について説明した。
今回の遠征で、かなり戦力が増強された。
なので、カイト達のクエストについてはアドバイスだけして、本人たちに任せようと思っている事。
サポートには、カルマを付けるという事。
俺は、双子とニケを連れて大陸の北へ向かわないと行けないと言う事を伝えた。
「なんで北なんだ?」
「あそこには、風と雷を司る嵐の神殿があるだろう?そこに向かおうと思う。」
「ああ、あそこか。確かにこの大陸の最北端にあるな。…ちなみに俺らが一緒に行けない理由はなんだ?あそこのランクは高くないだろう?」
嵐の神殿は、王都の真北にある神殿で中には守護する精霊達しかいない。
精霊達は、こちらから攻撃しない限り攻撃してこない。
襲ってくるのは、中に棲みついた魔物達くらいだ。
その魔物達もランクはせいぜいBランクくらいなので、俺らにとっては、たいして脅威ではない。
「それはさ、ニケ以外に行く意味がないからさ。あそこで、ニケをランクアップさせる儀式が出来るらしい。」
「うへっ、ニケもまだ強くなるっていうのかよ?!」
「ああ、そうらしい。カルマがそう言っていた。カルマに真の姿があったようにニケにも本当の姿があるらしい。」
カルマには、風呂に入っているときに教えてもらった。
例の暴れてる時に言い放った言葉が気になっていたのだ。
『力を取り戻すがいいぞ』という言葉がどういう意味なのか聞いたのだった。
「今でも過剰戦力なのに…いや、魔王幹部とかからしたら雑魚なんだろうけどさ…。」
「そこなんだよな…。この先は狙われないなんて言えないしな。別に敵対するつもりも無かったんだけど、こうも遭遇するとなぁ。」
「それは言えてるな。てか、なんで俺らばっかり狙われるんだ!?」
「カルマが一因だけど、それだけとは思えないよなぁ。」
「だなー、そもそもなんでこの世界に飛ばされたのか分からないしな。」
こっちに来て、2か月くらいだが、未だにそこは謎のままだ。
誰が俺らを呼び寄せたのか。
単なる偶然と思えるほど楽観的ではない。
朝食を食べ終わってから、兎に角気をつけろよ?といい残して、ガントは今日はマリエルが工房へ来るんだと言って自分の工房へ向かって行った。
「…誰に狙われようとも、皆を守る力を付けないとな…。」
俺は誰に言うでもなく、ひとり呟いていた。
暫くして、皆が朝食を摂りに起きてきたので、全員食べ終わったら今日の予定を伝えると言ってリビングに向かった。
一人リビングでメイドのアイが入れてくれたコーヒーを飲んでいると、ゼフが話しかけてきた。
「旦那様、少しよろしいですか?」
「ん?いいぞ。」
「ありがとうございます。先日、奇妙な噂が聞こえてきまして、お耳に入れておこうかと。」
ゼフが珍しく俺に情報を提供してくれた。
嫌な事じゃなければいいが。
「え、どんなのだい?」
「はい、なんでも王都でランクの高い冒険者が多数現れたらしく、人々が彼らを神の使徒ではないかと言っているらしいです。」
「神の使徒ねぇ。仰々しい名前だね。」
「ええ、ですが…。もしかしたら、旦那様が探されている同郷の方たちなのではと。」
「…なるほどね。十分にありあえる話だな。王都へ行ったら、コンタクト取ってみるよ。ありがとう。」
「いえいえ、では失礼します。」
そう言って、恭しく礼をすると陰にすうっと消えていった。
そういうところは、やっぱり人から外れているな。
──1時間後。
ガントを除く、全員が揃ったところで、話始めた。
「本日からカイト達をランクアップさせてるために王都へ向かう。ランクSからは、王都じゃないとクエストを発行出来ないようなので、王都へ向かってそこでクエストを受けて貰う。」
ギルドにも確認する必要はあるが、行く必要があるなら紹介状を貰っておきたい。
「さらに、その後のクリアについてはカルマをサポートに付けて、カイト達でクリアしに行ってもらう。その間に俺はニケとディアナとヘカティアを連れて【嵐の神殿】へ向かう予定だ。何か質問はあるかい?」
ライが挙手をする。
「待っている間、私達は何をしますか?」
「ライ達と、リンとシュウは次のランクに向けてスキル上げだな。全員をSランクに引き上げたいというのが本音だ。ライ達ならまだ【白羊の洞窟】で上がるだろう?あそこの肉も旨いから、いっぱい取ってきてくれ。」
ランク上がったばかりで可哀相だと思うが、最初は調整が必要だろうし、まだまだステータスも上がりきってない。
ここらですぐ追いつけないと、後々置いてけ堀になるだろう。
「判りました。では、みなと計画をしますね。」
そう言って、他のチームメンバーを集めて相談しだした。
なんだかんだで、リーダーやってただけあり行動が早い。
すぐ判断して行動に移せるかどうかも、冒険者には必要なスキルだ。
「あーそうだ。リンとシュウは、『騎乗戦闘』を鍛えてくれ。これからは移動がかなり多くなる。下手すると一日で大陸の端から端まで飛び回る可能性があるからな。」
「分かったよ、ユートさん。」
「うん、分かったよパパ。すぐ帰ってくるの?」
「ああ、用事を済ましたらすぐ帰ってくるさ。」
ついでに俺のランクアップクエストを受けようと思っている。
これも王都で受けないと駄目だろうから、帰りにもう一度立ち寄り受ける予定だ。
「では、準備でき次第にギルドに向かってくれ。俺は先に出ているぞ?」
一先ず情報収集しないといけない。
ゼオスに聞いて本当のところどうなのか聞いておきたい。
ギルドに着いてすぐにミルバに会いに行った。
彼女は今日もいつものカウンターにいた。
「あ、おはよう御座います。」
「おはよう、ミルバ。今日はギルマス来てるか?」
「あ、はい。先程出勤されましたよ。ご用事ですか?」
「ああ、そうだ。直接依頼したい事があるんだ。」
「分かりました。では、少し待っててくださいね。」
十分後、ゼオスがやってきた。
相変わらず、ふてぶてしい態度は崩さないが逆に付き合いやすいと思っている。
「よおっ、朝から御指名とは嬉しいねえ。用件はなんだ?」
「単刀直入に言うと、Sと、SSランクアップクエストを受けたい。どうすればいい?」
「なっ、マジでか?ちょっとまて、…俺の部屋で聞こう。」
別に俺は他の人に聞かれて良かったのだが、ギルマス的にはまずいらしい。
すぐ奥の部屋まで連れて行かれた。
「で、誰だ?って聞くまでもないか。お前がSSだな?Sはカイトあたりか?」
「ああ、そうだ。俺とカイト達だ。」
俺は今回の遠征で、俺とカイト、アイナ、ミラ、ザイン、ダンの6人が条件を満たした事を伝えた。
「今回の討伐数といい、ランクアップの件といい、お前たちがどんだけ頭のおかしな連中か分かった。いいか?Sランク冒険者と言えば、戦闘職なら相手もSランクを相手に出来なきゃなれない。それも、単騎でだ。受けると言う事は、やれる自信があるからだろ?」
「もちろんだ。カイトに至ってはすでに実践済みだ。エルダーデーモンも一人で何匹も倒してるぞ。」
「な、あれを一人でだと?!もう、あの小僧は俺よりも強いって事じゃねーか。」
素直とは言い難いが、称賛を送るゼオス。
こういう所に、人の器が見えてくる。
もちろん、いい意味の方でだ。
「なんだゼオス。あんなのも倒せないのか?」
「普通は、死を覚悟しないといけない状況以外に、タイマンする相手じゃねーよ!」
「そうなのか。同格とは言え、テイマーの俺でも倒せるのに…」
「ペットなしでか?」
「もちろんだよ。」
「お前も大概バケモンだな。聞いたことねぇよ、テイマーがタイマンでエルダーデーモンとか。」
「なんでも使いようだよ。」
実際、戦闘職が使わないスキルや、なぜか発現した『練気術』などを駆使しているから、前例が無いのは当たり前かもしれない。
だがそれらもうまく使えてなければ、一発のダメージが低いテイマーでは多大な労力がいるだろう。
「…確かにな、そのセンスがあるから真の高みに行けるのか…。で、だ。」
「お、おう?」
「SSランクとか、国の英雄級なんだがな?先代の勇者以来現れていないんだよ。つまり、近年ではお前が初と言うことになる。…成功すればな。」
「それは、失敗したやつなら沢山いるみたいな言い方だな。」
「そうさ。かく言う俺もその口だ。」
「ゼオスもSランクかよ。」
「俺は集団戦に長けてたからな。いや、慣れちまってたんだな。だから、いざ同格の魔物でも、タイマンになった瞬間に打ち負けてしまう。格上なら尚更だ。」
「それは、ランクアップは苦労するな。」
「ああ。俺の場合は、デーモンロードが対象だったが、出てきた瞬間に足が竦んだよ。なんとか戦いに臨んだが、惨敗。仲間と行ってなかったら俺はその時に命を落としていただろうさ。」
「へー、そんなことが。…知りたければ、攻略法教えるぞ?」
「馬鹿言うな、今更現役に戻るかよ。」
こんな歳でやれっかよと言っているが、俺とそこまで変わらんだろうに。
まぁ、もうギルマスなんて役職あるから無茶する必要がないか。
「それでさ、やっぱりここではランクアップ出来ないのか?」
「そうだな。クエストの発行も出来ないし、儀式も出来ない。何故かわかるか?」
「分からないから聞いてるんだけど?」
「理由は、儀式を執り行う神官のランクがここでは足りないからだ。このギルドにいる神官はAランクだ。だから、ランクアップもAまでって事だよ。」
なるほどな。
LBOの時は、そんな設定無かったから気にして無かったけど、あの神官にもランクがあるのか。
「じゃあ、王都にはSSランクの神官がいるのか?」
「いいや、いないぜ?あそこに居るのは、神と交信出来る聖女様だ。」
「聖女様かー。そんなのいたんだなぁ。」
「お前っ、絶対に王都でそんな事言うなよ?処刑になるぞ?」
「こう言っちゃなんだが、誰が俺を処刑するんだ?」
「う…確かに。いやいや、他のメンバーとかの事も考えろよ!」
「冗談だって。言わないよ。…じゃ、やっぱり王都へ向かわないとかぁ。あ、そうそうゼオスにお願いがあるから来たんだよ。」
「やっぱりそう来たか。」
「お、察しがいいね。そう、紹介状書いてくれない?」
その後も、あーだこーだとほぼ雑談に近い会話をしながらも、紹介状は書いてくれる事になった。
これでギルドお墨付きになったので大手を振って王都に入れるだろう。
しばらくすると、カイト達もやってきた。
やはり王都に行くしかないと説明すると、ちょっと渋い顔をしながらも観念したようだ。
あっちにいた時に何したんだコイツ。
「王都ではその日暮らしだったので、いい思い出は無かったんですよ。ユートさん達のお陰で、すっかり良い生活させて貰ってますけどね!」
そういや、そんな事も言ってたか。
てっきりトラブルにでも巻き込まれたのかと思ってたよ。
「あっちに行ってから暫く滞在するかも知れないから、下手なことするんじゃないぞ?」
「うっ…はい。」
カイトがいつもよりしょんぼりしている。
大丈夫か?
まぁ、カルマ先生がいるから死ぬ事ないとは思うが。
ちなみにカルマは王都には入らない。
魔力を抑えることはもう出来るが、ナイトメアロードなんて高位悪魔が中に入ったら大騒ぎだし、人型になったとしても特徴から魔族と勘違いされるだろう。
なので、そとで待機してもらう事になった。
何かあれば、影からクロが出てくるのですぐ対処可能だ。
カルマも特段入りたくないみたいだったので、問題は無かったが。
全員の準備が整った。
ギルド前でディアナとへカティアが竜化してしまうと大騒ぎになるので、一先ず郊外に出てからにしてもらった。
俺はニケに久々に乗り、カイトはいつも通りにグランに乗った。
あとのメンバーは、二人づつディアナとへカティアに乗りいよいよ出発した。
リンとシュウが、ピューイと、ルベルに乗って見送りに来てくれた。
「パパー!いってらっしゃ~い!」
「ユートさん、気を付けて行ってきてね!お土産よろしく〜!」
と元気に送り出してくれた二人を見て、帰る場所があるのはやっぱりいいな、早く帰ってこようと心に誓いながら手を振り、空に旅立つのだった。
いつも見てくださっている方、有難うございます!
また、ブックマークしていただいている方、評価していただいている方、とても励みになっています。
本当に有難うございます。
今回は、出発までの話になってしまいました。
次回こそは、カイト達のランクアップクエストを書く予定です。
次回更新は、11/8 25:00頃までの予定でがんばります!
次もよろしくお願いします。




