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双子の魔族

現れた二人の少女。

その正体は・・・?

「ふふふ、やーっときたー!」

「待ちくたびれて、眠くなってきたよぉ…」


 扉を開けると【ロードオブアビス】はそこにはいなかった。

 その代わりに可愛らしい二人の女の子達が待ち構えている。


「ありゃ、先客がいたのか。えーっと…どちら様?」


 俺は冒険者が先に攻略していたのかと思い、思わずそう相手に尋ねてみた。

 だがそこで、カルマがいきなり戦闘態勢を取った。

 ニケも同じく、防衛行動を取った。


「主、下がってください。あ奴らは危険です!」

『主様、私達が前に出ます!全員を下げてください。』


 いきなり緊迫した声を出すふたり驚いたが、冷静に全員に号令を出す。


「全員防衛体制!守りを固めて警戒を解くな!」


 何事か理解できぬまま、あれがボスなのかと思い全員が守りを固める。


 だが、その様子を見て二人の女の子はクスクスと笑うばかりだ。


「やだー、虫けらたちが何かを喚いるよ、おねーちゃん」

「ほんとだねー。煩いから消し飛ばそうかなぁ?」


 クスクスと嗤い、ずっとこちらを見ている。

 まるで俺らなどいつでも殺せると言わんばかりだ。


 俺が知る限り、ここのボスはあんな女の子ではないし、そもそも2体も出てこない。

 何よりも、あんな風に会話しているモンスターなど見たことも無い。

 だとするとあの二人は…。


「さーて…、そこの馬の姿に化けている悪魔。オマエは【カルマ】だろ?」

「なんであんな姿なんだろうね~?変なヤツだねー」


 いきなりカルマの名前を呼ぶ二人。

 カルマがやはりと言いつつ、ふたりに話しかけた。


「なぜ、お前たちがココにいる?魔都に居る筈だろう」


 カルマが相手を知っているかのように質問を投げかけた。

 …やはりか、だとしたら非常にまずいな。


「んー。だってさ。アモンが魔力をかなりすり減らして帰ってきてたからさ、何処で遊んできたのー?って聞いたら…、()()()が居たって言うんだもん」

「そうそう、私達だってさー。ほんとは遊びに行きたかったのに、魔王様がダメって言うから我慢してたのにズルイよねぇ。でもアモンがいいなら、私達だって遊びに行きたいからぁ~。…というわけで、カルマと遊びに来ました~!」


 二人はとんでもない事を言って抜かす。

 という事は、アモンと同格の存在。

 つまりは【魔王幹部】ということだ。


「ふん、我は忙しいのだ。城に帰るがいいぞ”ヘカティア”と”ディアナ”よ」

『やはり、あの気配は【魔王幹部】ですか。なんという魔力…」


「えー、やだー。せっかくさ、いい物を持ってきてあげたんだからー、遊ぼうよ~」

「そうそう!私達がこんなめんどくさい事をわざわざやってあげたんだから、付き合って貰わないとねぇ~。断るならぁ…、そこのニンゲンっ喰っちゃうぞっ!あはは!」


 無邪気に言う二人を余所に、こっそり〈生物鑑定〉してみようとしたら”測定不可”と出た。

 うわー、まじかよ。


「あ!そこのニンゲン!私の事を覗き見しようとしたなー?そんなエッチな事をしちゃダメだぞー?」

「そうそう、私達にそんなスキルは通じないんだからねぇ。無駄無駄ぁ~」


 最初の登場から無茶苦茶だが、鑑定系スキルが通じないとか聞いたことが無い。

 想定外過ぎて対応に困った。


 ここは即逃げるのが正しいと思えるが、逃がしてくれるような気は全くしない。

 カルマに用事があるようだし、ここに囮として置いていく、という手がいい気がするがその場合二度と会えない気がする。


 そんなのはダメだ!

 自分の相棒を犠牲にして、自分だけ助かるとかは二度としないと決めたんだ。


 とはいえ、どうしたもんだかな…。

 あ、そういえば、いい物持ってきたって言ってたな。

 一体何だろう?


「えっと…、ヘカティアとディアナが持ってきた”いい物”ってなんだい?」

 ひとまず、恐る恐る二人に質問を投げかけてみる。


「ぶー、オマエになんかと話をしてませーん。でも、折角だから答えてあげるね」

「そうそう、だからってチョーシに乗るなよ~?…ふふふ、”いい物”それはね~。カルマの”本体”だよ!」


 俺と話なんかしないと言いつつ、答えちゃう辺りは子供っぽい反応だな。

 てか、…え、何?”本体”って。

 言っている意味が全く分からないな。


「!貴様ぁ…、それを何処で見付けてきた!」

 カルマが珍しく動揺した反応を見せる。

 あのカルマがそんな反応するなんて、かなり重要な物みたいだな。


「あはは、驚いているねぇ~。ふふふ、この間暇だったから”たまたま”さ【闇の神殿】に行って来たら、地下の奥ふか~くに置いてあったから、貰ってきちゃった!あははっ!」

「そうそう!なんか、闇の精霊たちが守護してったっていうの?ウザかったから、消し飛ばしてきたけどね~。あ、大丈夫だよ?飾るためにちゃんとキレイに保管してたから、傷一つないから!」


 そう言うと、どこからかポンっと取り出したと思うと、大きな水晶の塊が出現した。

 中には、なんだろう…男の俺から見ても美しいと言えるほど整った顔の男が眠ったように封印されている。


 しかも、今のは…"ストレージ"から出した?

 もしかして、魔族も使えるのか!?


「さーて、じゃあ今からゲームを始めます!参加者はカルマとそこの白いやつ!」

「うんうん、内容は…この砂時計の砂が落ち切るまでに、この水晶を護りきる事!簡単でしょう?」

 と、今度は人間大ほどある砂時計をポンと出した。


 内容からして、あの水晶はカルマの()()()()が入っていて、壊れると困る事になる。

 持ち出された時点で受けるしか無いと言う訳だ。

 うわあ、エゲツない内容だな。

 

 二人は俺から見てSSを超えた存在と思われる。

 強いとは言ってもSランクの魔物達がそんな存在から攻撃を耐えるだけなんて、楽勝どころか何分持つかも分からない内容だった。

 なんとか俺も参加しないと、かなり厳しいな。


「えっと…このゲーム、二人から見て取るに足らない存在の人間である俺が補助しても問題ないよな?」

「!駄目です主!すぐにここから離脱してください!」


 俺の意図を理解して慌てて止めようとするカルマ。

 だが、そもそも逃げれる相手ではないのだ。

 最善の手を打つしか方法が無い。


「んー、いいよぉ。君等が何人居ても変わんないし」

「そうだねー。んー?…そこの飼い主君は、面白い魂持ってるね。よし、君だけ許そう!他は、ウザいから寝てなよっ!!」


 そう言うと、一人が詠唱も無く魔法を発現させる。


 俺たちの上空に無数の魔法陣が現れたかと思うと、そこから大きな表情の無い顔がいくつも現れて、()()()()

 俺以外のメンバーとピューイが抵抗する暇もなく気を失ってしまった。


 大勢のAランクをたった一発の魔法で昏倒させた。

 まさに、規格外だ。

 あれは一体何だ!?


「くっ、"スクリーム"か、厄介な魔法を使う」

 とカルマは知っている魔法のようだと、その言葉で判明した。


「カルマ!どっちにしろ逃げられないんだ。やるしかない!」

「くっ、アヤツらを全く感知出来なかったとは不覚。主よ、ここは何とかしますので支援お願いします」

『ここで勝つにはカルマ、貴方に掛かっていますからね!』


 ニケも覚悟を決めたようだ。

 カルマに秘策があるようだし、ここはなんとかしないと。


「じゃ、始めよっ!あ、さっき聞いたと思うけど私がへカティアだよ!」

「はははっ!私がディアナ!私達は双子でどっちも強いから覚悟してね!」


 金髪で赤い瞳がディアナで姉、銀髪で碧眼がヘカティアで妹か?

 顔は一緒だが、特徴が別れてて覚えやすいな。

 二人とも、髪をサイドで結っていて動くたびに揺れている。

 ワンサイドアップってやつかな?昔、娘にやったことがあったな。

 黙ってれば美しい少女なのだが、浮かべているのは嗜虐的な笑顔だ。


 双子達は、水晶を中央に設置すると王座まで下がった。

 そして巨大な砂時計を設置してから、クルッとひっくり返した。


「さーて、これが全部落ちるまで耐えきれるかな〜?」

「じゃあ、いっくよー!」

 

 双子の少女が俺でも目が追いつかない速度で攻撃を繰り広げる。

 ドンッ! ドンッ! ドンッ!と一撃一撃が衝撃波を伴う。

 つか、どこの戦闘民族だよ! と突っ込みたくなる。


 俺は、ミラに貸し与えていたアーティファクトの杖を、倒れている彼女から拝借して、ひたすら回復を続けた。


「"アークグレーターヒール"!」


 カルマとニケは水晶の前から一歩も動かずに直撃しない様に左右に捌いている。

 ニケはその大きな羽根でガードしながら受け流しているので理解が出来るが、カルマはパッと見だと、首を左右に振っているようにしか見えない。


 …あ、よく見ると当たる瞬間に何回も魔法陣が浮かんでいる。

 あの紋様は…アンチグラビティかっ!

 なんて高度な事をやっているんだよ…。


「おおおっ!やるじゃない!さすがカルマだね!」

「ふふふっ!こっちの白いのも結構頑張っているよ!ほらほらほら〜っ!どんどん早くするからね〜!」


 ただでさえ見えないくらい速いのに、まだ本気じゃ無かったのかよ!

 今は、ふたりを信じて回復することしか出来ない自分に腹が立つ。


 俺は出し惜しみなしで、バンバン高級ポーションも使い、包帯も同時に駆使してなんとか回復を間に合わせる。

 段々とダメージに回復が追いつかなくなって来ているが、全力で回復しているのでここからは時間との勝負だ。


 ─10分経過。

 砂はまだ沢山残っている。

 今やっと2割ほど減ったくらいだ。

 この調子だと1時間くらい掛かることになる。


「ほらほらほらっ!あはは、楽しーねっ!」

「ふふふふっ!まだ耐えてるんだ!すご~い」


 ドドドドッ! ガキン! ガキン!

 肉体と肉体がぶつかる音とはかけ離れた音が鳴る。

 それだけで、お互いの力量が高いことが分かる。


 俺もずっと回復し続けているので汗だくだ。

 もっと効率よく、もっと効果を高く。

 そんな事だけを考えて回復し続ける。


 ──30分経過。 


 もはや、俺の耳には音すら聞こえない。

 実際には、けたたましい音が鳴り響いているはずだろう。


 だが、それらを無視して全てを回復する事だけに集中した。


「────!!」

「───!!」


 誰かが何かを言っているんだろうか。

 そんなことより、ずっと魔力を消費し続けることにより気が付いたことがある。


 練気術オーラと一緒で、魔法に対しても魔力を調整出来るようだ。

 魔法を使う際に使う魔力の量(MP)を増やすことにより、威力を増すことが出来ることが分かってきた。


 これはLBOの時には無かった要素だな。

 これなら、あとは耐えるだけだ。

 勝機は見えたっ!


 ──50分経過。


「なんだ、こいつら!?全然HP減らなくなったぞっ!?」

「何これ〜?可笑しいなっ??ん〜、でも楽しいからいっか!」

「そうだよね!こんなに運動したの久しぶり〜!」

「うんうん、やっぱ遊びに来て正解だねぇ〜!」


 繰り出される威力とは相反して楽しそうにしている双子の少女。

 それに対して、極度の集中状態の為に無言の俺ら。

 あと、10分間この二人をしのぎ切り、満足させて帰って貰えれば俺らの勝利だ。


 ───1時間経過。


 ついに、最後の砂が落ちた!

 双子の少女は、その事を忘れてまだ攻撃している。


「なぁ!へカティアと、ディアナ!砂時計終わったぞ!」


 夢中になる二人に声を掛ける。


「あー!!くっそー、終わっちゃったー!」

「ホントだ!わーお、すごーい。よく()()()()耐え切ったね」

「あはは!コッチの白いのも、凄いよ!こんな脆弱な体で耐え切るなんて!」


 俺の言葉を聞いて、攻撃を止めて話をしている二人。

 それに対して俺らは、その場に倒れそうになるのを気力を振り絞って、耐えていた。


 気がつけば、メンバー達も復帰していた。

 しかし、あまりの次元の違う戦いに見ているしか出来なかったようだ。


「これでゲームは我らの勝利だな。己で言ったんだ、遊び終わった。このまま帰れ」

 もはや余裕もない筈なのに、態度を崩さないカルマ。

 

「えー。もっと遊びたかったなー」

「そうそう、帰ったらまた魔王煩いしー!」


 もはや、魔王も呼び捨てかよ!

 しかし、これで帰らないと言い出したら戦うしかないが、勝てる気がしない。

 相手は魔族のトップの一角だろう。


 カルマ達でさえ、防戦一方だったのにどうやって勝つと言うのか…。


「というかさー!さっきから封印解こうと頑張ってたんでしょ?手伝ってあげるから、さっさとしなよー!」

「あ、ホントだ。封印が解けかけてる!さすがねーちゃん、めざとーい!」


 封印?って、あの水晶か?

 本当にあれがカルマだと言うなら、今のカルマは何なんだろうか。


 そう思っていると、背中がゾクリとした。


 なんだこれ、ヤバいヤバいヤバい!!

 俺の全身が粟立つ感覚が駆け巡る。


『主様!気を確かに!私に捕まって下さい!』


 次の瞬間、水晶にヒビが入った。

 ドサドサッ!

 見ると、さっき復帰したばかりの皆が、攻撃を受けてないのに全員失神した。

 ピューイも白目を剥いてパタリと倒れた。


「!?げっ、何この魔力。き、聞いてないんだけど!?」

「へカティア!これヤバいよ!?」


 さっきまでの余裕が消えて、焦りだした二人。

 あの、二人が怯えてる? 

 よく見ると、ニケも震えているようだ。


『主様は、私が護ります。絶対に離れないでください!』


 次の瞬間だった。

 バキーンッと大きな破石音が聞こえて、中から闇が溢れ出てきた。


 それと同時に、カルマがバタリとその場に倒れて、その闇に吸い込まれて消えた。

 

 闇は暫く蠢≪うごめ≫くと、段々と形を成して一人の魔族を創り出した。


 頭には1本のうねりのある大きな角と、背中には鴉のように黒い翼が二対あり、禍々しいオーラを放っている。

 肌は灰褐色で、目は金色、髪はたてがみと一緒の漆黒だ。


「久々よな…、いや、我としては初めての経験でもある。不思議な事よ…。小娘共、感謝するぞ。我の片割れである、【闇の大精霊カルマ】の本体を持ってきた事を」


 先程と違い、圧倒的な


「あれあれ、やっばーっ!何あれ!()()()()()()()()()()()()()よ!」

「くっそー!アモンのやつ騙したな~!これを持っていけば少しは楽しめるだなんて言いやがってっ!」


 さっきまでの余裕が嘘かのように態度が変わる双子たち。


 それもそのはずだ。

 そこに居たのは、まるで魔王のような圧倒的存在感。

 紛れもない化け物だった。


 だが不思議と怖さは無い。

 ふと、ステータスを見たらカルマのステータスが変わっていた。

 なんと〔従属〕のアイコンが消えていた。

 その代わりに、〔盟友〕という見たことの無いアイコンが付いている。


 つまりは、支配下にはないけど協力状態ってことかな?

 ついでに他のステータスを確認してみると、HPもMPもSPも全て????になっていた。


「さて、へカティアとディアナよ。我と遊ぼうか」

 そう言うと、手に特大の魔力を集めていく。


「あ、私用事あったんだった!じゃ、さよなら!」

「ズルい!私も帰る!」


 そう二人が言って"ゲート"を取り出し帰ろうとするも…


「遅い!"アークグラビティフィールド"!」

 

 発動した瞬間に"ゲート"に干渉し、砕け散った。

 そしてそのまま二人を捉える。


「あー!もう何すんのよ!つか、その魔王アイツみたいな存在感な〜に?」

「そうそう、あのおっさんと同じチカラを感じるんだけど?!」


 そう文句を言いながらも、ちゃっかり詠唱を始めた。

 

「「我ら竜の巫女が願う、星と月の力によりその姿を現せ…」」


 金と銀の魔力が混ざり合い、そこから龍の姿をした技が撃ち出された。


「「〈ドラゴニックキャノン〉!!」」

 俺らも射線上に入れて撃ち出されたそれは、目の前が真っ白になるほど凄まじいものだった。


 『〈深淵の王(アバドン)〉!』


 しかし、痛みもダメージも無かった。

 眼の前にはカルマらしき男が立っていた。

 彼は右手を突き出しているだけだ。

 だがそこに全ての魔力が吸い込まれていく。


「ふむ、まだ感覚が戻らないな。魔力の操作が荒いか。で、双子の魔姫よ、それで終わりか?」


 平然としながらも、本調子じゃないと言う。

 もう、カルマが魔王だったと言われても信じるよ俺は…。


「うぅ〜、なんでなんで!私達二人の最強技が全く効かないなんて!」

「あらららら、どうしようね?どうしよう。う〜ん、うーーーん。ためだ無理。…というかさ、噂は本当だったんだね?」

「…なんのことだ?」


 双子は、お手上げと言わんばかりに両手を上げて降参のポーズを取る。

 そして話を続けた。


「数年前、新しい魔王候補のアモンと同格の【カルマ】が、力を封印したまま行方をくらましてー、そしてその【カルマ】が最近ニンゲンの領地に現れたってね」

「そうそう!アモンも遭遇したときに、弱っちかったから魂を見るまで気が付かなかったみたいだけど、重力魔法を扱える悪魔なんて居ないから間違いないと思ったみたいだよっ!」

「うんうん!精霊族か竜王ドラゴンロードくらいだもんね、あの魔法使えるの」


 なるほど、確かに()()()()()()()()()重力魔法なんて使えない。

 そんな魔法があのクラスで使えたら、冒険者が全滅する。


「しかし、我の体がなぜあそこに封印されているのを知っていたのだ?」


 そうだ、偶然と言っていたが、そうとは思えない。

 きっと裏がある筈だ。


「そうそう!それだよね〜。アモンが各精霊王に力を認めてもらう為に巡ってた時にさ、偶々見つけたみたいだよ。【カルマ】の魂ならすぐ分かるんだってさ、キモイよね!」

「それで、"本当のカルマは俺と同じくらい強い"って言い出したから、ウソだーって、からかったら、"嘘だと思うなら封印された本体と融合させて見ると分かるぞ"とか言って場所を教えてくれたんだよ!」


 やっぱ、あの魔族かっ!

 絶対自分が戦いたいから、カルマを強くして自分が戦うつもりだよ…。

 どこの戦闘民族だよって話だ。


「冗談かと思ってたけど、…本当だったなんてっ!」

「アモンなんて、二人でやれば勝てると思ってたけど、あんたと同じくらい強いなら勝てっこないかも〜!悔しいぃ!」


 今度は地団駄を踏み出した二人。

 本当に忙しい奴らだ。

 しかし、カルマに完全に抑えられているとはいえ、俺からしたら人間を遥かに超えた力を持つ超越した存在であり、安心出来る状態とは言えない。


「で、カルマ。この二人はどうするんだ?」

「そうですね…、放っておくと何をしでかすか分からないですからね…。ココで息の根を止めておきましょう」


 そう言って、先程のスキルを発動させて二人の魔力をズズズッと吸い込んでいく。


「や、やめっ!」

「ごめんなさいっ!もうしませんからっ!」


 苦悶の中、命乞いを始める二人。

 絵面的に可哀想な感じだが、襲われたのはこちらだ。

 そのまま消されても文句を言われる筋合いは無い。


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!何でもするから許して…」

「お願いお願いお願い!!一生忠誠を誓ってもいいからっ!!」


 そんな二人は、魔力が吸いつくされて地べたに這いつくばる形になり、半泣きになりながらも懇願している。


「ほう、面白いことを言うな。ならば望み通りに我が下僕にしてやろう」

「やった!お願いします!何でもしますから!」

「はいっ!是非お願いします!」


 そんな二人に魔力で作られた首輪を渡した。


「その首輪をして、我に"魂に誓って我に忠誠を誓う"と言え」


 それを凝視しながら固まる二人。


 魔族にとって、魂に誓うとは相手が死ぬか自分が死ぬ迄続く契約らしい。

 それは破った瞬間に魂が砕けて消滅する制約が掛かる絶対的なものと言う事だった。


「ディアナ…どうするの?」

「しょうがないじゃない。今生き残るには従う以外にないよぉ…」

「うう…誓います…」

「わ、私も誓います…」


 次の瞬間、二人の首輪が黒から金と銀に変わった。

 そして、伏しながらも出ていた覇気がドンドン落ちていく。


「あれれ、こってどういう事!?」

「なんか、力が落ちていくんだけどっ!どういう事!?」

「貴様達の力を一部封印した。そのままだと目立つ上に、好き勝手すると主が危険だからな」


 そこで俺は再び生〈物鑑定〉した。

 今度は邪魔レジストされなかったようだ。


 魔竜姫へカティア ランクS 種族:魔竜人 HP:3800/3800 〔盟友〕

 魔竜姫ディアナ ランクS 種族:魔竜人 HP:3800/3800 〔盟友〕


 ステータスが下がってこれなのか!?

 無茶苦茶だな…、いやランクが二段階下がってる事自体が凄いんだよな。


「さて、最初の命令だ。我が主ユート様とその仲間に危害を加える事を禁ずる。そして、ユート様のことは命に代えても守る事」

「な!?人間のお守りなんてっ!私はいやだよっ!!」

「そうだそうだ!!そんなの楽しく…あ、あれれ!?」


 早速反発する二人だが、一瞬で様子が変化する。

 みると足元から石化していっている。


「う…うそうそ!ごめんなさいっ!じょ、冗談だってば!守ります、守らせて頂きます!!」

「うんうん、私達はお利口だからちゃんと言う事ききますから!!」


 その言葉と同時に二人の金銀の首輪がまた光った。


「よし。逆らいたくば逆らってもいいぞ?但し、確実に死ぬがな。…主よ、これで脅威は無くなりました。危ないとこでしたが、こやつらが愚かなお陰で力も取り戻せました。あとは、ここのボスを倒して、功績だけは貰っておきましょう」


 怒涛の展開だったが、何とか立ち直った俺は気持ちを切り替えることにした。

 ニケに降ろして貰い、仲間たちの治療を開始する。


「〈聖浄〉!〈祝光〉!」


 キラキラと全員に光が降り注ぎ、包み込んだ。


 暫くすると、全員が意識を取り戻した。


「俺たちは一体…、そうだ!恐ろしい気配がしてそのまま気を失ったんだ!」

「あ…う…、あれ?ここは…あ、そうだ!アイツは!あの悪魔は?!」


 カイトとアイナが起きてすぐ辺りを警戒する。

 そしてすぐカルマを見つけて、武器を構えた。

 ミラも起き上がってすぐ構えようとするが、手に杖が無い事に気が付いてオロオロしていたが、すぐに予備の杖を出して構えた。


 ダンとザインも顔面蒼白のまま、同じく武器をとって構えた。

 うん、みんないい心構えだな。

 ここ一か月で冒険者としても成長したようだ。


「落ち着け、もう大丈夫だよ。双子の魔族もさっき出現した悪魔も大人しくなった」


 その後、ここで起きたことを説明をした。

 途中まで俺が操られているんじゃないかと心配していたが、双子が嫌々ながらもごめんなさいと謝ったことで信じてもらえた。


『一時はどうなるかと思いましたが、カルマ、なんとか力を制御出来たようで何よりです。』

「ふん、当然だ。元々自分の力だからな。だが、主の加護がなければ自我を失っていたかもしれないな」


 カルマは、自分の体と漲る力を確かめながらそう言った。

 そもそも、なんだ闇の大精霊って。

 悪魔じゃなかったのかよ!って思っていると…。


 奥の方の魔法陣が邪悪な光を放ちだした。

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴという音と共に、一体の巨大な悪魔が出現する。


「あっちゃー、間の悪いやつだなー」

「今更出てきても遅いって言うの。…まぁ出て来てた所で瞬殺されちゃってただろうけどさー」


 双子がもはや投げやり気味に愚痴っていた。

 だが、消滅を免れたせいか余裕が戻ってきたようにも見える。


「あ、カルマ!私達がアイツやっつけてやろうか?〈魔力解放〉してくれたら、サクッとやっちゃうよ?」

「そうそう!私たちの鬱憤をアイツで晴らす…じゃなかった、カルマの役に立つ所を見せてあげるからさ!」


 ぽろっと、本音を言うあたりが若干抜けている気がするが、実力は本物だ。

 さっきのゲームのせいで結構魔力が乏しいし、回復したとはいえメンバー達もボロボロだ。


「ダメだ。お前たちには後でやって貰う事があるからな。そこで見ていろ」

「えー、ぶーぶー。ちょっとくらいいいじゃん~」

「そうだそうだ!役に立つって言ってるんだからやらせてよ~」

「ん?我に逆らうのか?」

「「いいえ!何も言ってないです!」」


 この身の代わりようは、もはや呆れるしかない。

 ということは?


「我がやる。お前たちにも見せておいてやろう。歯向かった場合にどうなっていたかを」


『グハハハハハハハハハ!我は【ロードオブアビス】也。貴様たちだな、我が居城に踏み入れた愚か者は…。私自らの手で、この世から消し去……、そ、そこにおられるのは…カルマ様!?なぜこんなところに!?それにディアナ様、ヘカティア様まで!?』


 出現した【ロードオブアビス】は今までの事は知らない様で、目の前にカルマや魔王幹部達いることで動揺を隠しきれなかったようだった。


「ふん、貴様も仕事だろうが、どうせ契約により倒されても魔力が溜まればまた復活するのだ、今は大人しく消されるといい!!〈混沌の終焉(カオスエンド)〉」


 左手を相手に翳≪かざ≫すと、黒い球体出現し相手を包み込んでそのまま上空に浮いていく。

 そして、一気に収縮して破裂した。


 ───ガアアアアアアアアアアアアア………!!!!


 その後には砕け散って塵となった【ロードオブアビス】の残骸と、消えていく断末魔だけが残っていた。


「あはははははは、命拾いしたねお姉ちゃん…」

「うへぇ~、本当だねーヘカティア。しばらくは大人しくしとこ!」


 二人も、たったの一瞬で消滅させられた元部下の末路を見て改めて逆らうべきじゃないと感じたようだった。


「さて、主よ一度帰りましょうか。…このままの姿だと色々不都合がありそうですね。道中はこの二人に任せますので、我は悪魔の姿に戻りますね」


 カルマはそう言うと、全身を闇で包みこみ悪魔≪ナイトメア≫の姿に戻った。

 しかし、少し姿形が変わったようだ。


「おお、()()()()姿()()変化したのですね。我はこれより【ナイトメアロード】に進化したようです」


 今までよりも一回り大きくなり、更に一対の黒い翼が生えていた。

 まるで黒い大きなペガサスだ。

 頭にも、さっきまでと同じようにうねりのある大きな角が生えていた。


 ステータスを確認してみると、

 カルマ ランクSS 種族:悪魔族 HP:4444/4444〔従属〕

 となっていた。

 アイコンがもとに戻っていた。


「前よりも格段にステータスが上がっているし、姿もカッコいいな」

「主よ、勿体なきお言葉。こちらの姿でも更に精進します」

『私も、早く力を付けないと差をつけられてしまいましたね…」


 とりあえず、ボスのドロップ品を拾って部屋を出た。

 メンバーも、ちょっと姿が変わったが元のカルマに戻ったので一安心したようで、落ち着きを取り戻した。


 カルマの姿が変わったことで、もしかしたらと反旗を翻そうと双子が逆らおうとしたようだが、カルマの『黙れ』との一言に逆らえなかったのを見ると、無理なようだった。


 さすがにちょっと可哀想なくらい落ち込んでたが、自業自得なのでしょうがないと思う。


 ボス部屋を出てから城の外に出るまで、双子は大活躍だった。

 さすがに元魔王幹部だった二人だ。

 しかも双子なので、息がぴったりで相手の反撃を受ける前にドンドン倒していった。


「あっははー!なんか丁度いいストレス発散かも~!楽しいね、おねーちゃん!」

「うんうん、なんか途中からやられっぱなしだったもんねー。魔力は落ちたけど、逆に丁度いいくらいだねヘカティア!」


 魔法は殆ど使わずに、拳だけで戦う姿を見て、カルマの『闘気法』と同じことをしているんだと気が付いた。

 なるほど、上位魔族は結構習得しているんだなと感心した。


 

 ──城外まで問題なく戻ってきた。

 カイト達は、帰りに出番がなくて残念なような、ほっとしているような顔をしていた。


 城門を開けて外に出ると、そこにリン達が待っていた。


「あ!帰ってきた!!パパ!おかえりなさ~い!」

 そう言いながら、俺を見るなりすぐに飛びついてきた。


「おお、リンただいま。ケガとかしてないか?」

 リンを抱きしめて、頭を撫でながら大きなケガをしていないかをチェックした。

 …うん、大丈夫そうだ。


「うん、大丈夫だよ。…それにしても、随分時間が掛かったんだね?なかなか出てこないし、途中すっごい嫌な感じがしたから心配してたんだよっ!」

 外にまであの気配が漂ったか。

 確かに、本能的に逃げたくなるような感覚だったからな。


「よお、やっと帰ってきたか。さすがに3時間も掛かるとは思っていなかったぜ。無事で何よりだ。…で、そいつらは誰だ??」


「ああ、話せば長くなる。まずは全員キャンプまで戻ろう」

「賛成です。ここだと落ち着いて話せませんし」

 と、サナティも賛同してくれた。



 ───入口前キャンプ


 俺たちは全員、キャンプ前まで戻ってきた。

 そこで、中であったことを隠さずに説明をした。

 一応、カルマにも話していいと許可は貰っている。


「な…そんなことが…」

「じゃあ、そのお二人は元魔王幹部ということなんですね。なんという事でしょう」

 ライとサナティも驚きを隠せない様だった。

 

「俺達が倒れている間にそんな事があったんですね」

「中に入ってから恐怖しか感じてなかったですがね」

 とザインとダンが言っていた。


「それで?これからどうするんだ?その二人は、拠点に連れていくのか?」

「ああ、ガント。この二人は連れていくよ。ギルドには当然黙っておくがな。カルマが居る限りはこの二人も悪さは出来ない。もし、やらかしたらカルマとの契約上、死に至るからな」

 ただ、口で反抗しただけで石化するくらいだ。

 さっきも実感したようだし、余程じゃないと暴れたりもしないだろう。


「そうだな…だが、もっと保険が欲しいな」

 ガントが珍しく、悩んでいる。

 お前らしくないぞっと声を掛けようとしたとき、カルマがひとつ提案してきた。


「その事でなんですが、主よ、一つ試したいことがあります」


 ───この提案がのちの事に大きな影響を及ぼすなど、この時は誰も思ってもいなかった。


いつも見てくださっている方、有難うございます!


また、ブックマークしていただいている方、評価していただいている方、とても励みになっています。


本当に有難うございます。


今回の主役は双子の予定だったのですが、カルマにお株を奪われた形になっちゃいました。


もちろん、主人公も更に強くなってもらう予定ですので待っていてください。


次回更新は、10/31 25:00頃までの予定です。


次回もよろしくお願いします!

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