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救出クエスト!ラビリンス編(2)

戻ることが出来なくなったユート達。

地下4階の奥地まで行かないと帰れないことになったが…

「さて、これからの事だが…まずは地下4階の地図を確認して、ルートを決めよう。基本はニケとカルマでルートを調べて貰うが、君たち全員を守りながら進む以上徒歩で進む」


 全員が俺の意見に頷いた。

 

 さすがに、この先を攻略しないと戻れないとか考えてもいなかった。

 しかもこの5人を連れて行くとなるとかなりキツイ。

 まずは攻略準備してから、人員配置考え直そう。

 

「この先は、Sランクのリッチロードとかも出るから油断は命取りだ。配置を変える。前衛はニケと俺、中衛にカイトとダンとアイナ、後衛にミラとザイン、殿はカルマだ」


『索敵と道標はお任せください。』


「我が不意打ちしてくる不届き者を消し去りましょう」


 ペットであるふたりはしっかりと答えてくれた。


 カイト達も真剣な顔で頷いた。

 持ってきたMP回復ポーションを5人に使い、ある程度魔法とスキルを使えるようにしたが、いざと言うとき以外は温存して欲しいと説明した。

 また戦闘は、突然挟み撃ちにあう等のイレギュラー以外は俺らでやると説明した。

 正直その方が早いし、陣形を乱れさせたくないからだ。


「今説明したとおり、道中は君たちは手を出すな。身を守ることだけ考えてくれ」


 「「「「「はいっ!」」」」」


 うん、全員いい返事だ。


 よし、ここからが本番だ。

 冒険は町に帰るまでが、本番だとは誰が言ったのか。

 まさにその通りの状況だな。


「よし、出発だ!」


 テント等を素早く片付けて、陣形を組んで階段を降りていった。


 降りてすぐにリッチの集団が現れた。

 何匹かバンシーが混ざってるので鬱陶しいが、透かさずニケがトルネードとライトニングブレスで一掃していく。


 ドロップ品はしっかりと回収させて、ゆっくりと進んでいった。

 リッチとかウィッチ系に見えるのになかなか硬いので本来やり難いのだが、常にアニマブーストと、ビーストコマンドを使っているお陰で瞬殺している。

 彼等には教えていないが、それもこれも天使の塔の腕輪のお陰だ。

 これがあるのでMPが減らない。

 そもそもテイマースキルなんて知らないだろうから、MP消費しているのも分かってないようだけど。


 最初の部屋を抜ける瞬間に、リッチが3体後に現れた。

 死霊系は壁をすり抜けて出てくるからこういうのが厄介だ。


「ああっ!後ろに、3体も!!」


 とミラが叫んだが、カルマは無造作にリッチ2体の頭にかぶり付いた。


 するとリッチの頭から黒い魂が溢れ出て、カルマに吸い込まれていった。

 さらに残った1体も、突然に現れた魔法陣から出てきたシャドウジャベリンに、体中を串刺しにされてチリとなって消えた。


「な、なんだそりゃ…」


 とダンが呟いたのは仕方ない。


 どんどんニケとカルマの凶悪さに磨きが掛かっている。


 いや、魔族幹部アモンの一件があって以来、全く手を抜いた攻撃をしなくなったと言える。

 しかも、火力や魔力すべて調整してあり、無駄に威力を高めたりもしていない。

 雑魚相手にも常に戦闘訓練しているかのようだった。


「いいぞカルマ。腕をさらに上げてるな」


「有難き言葉。二度と失態は見せぬ約束ゆえ」


 言葉は少ないが、とても強い意志を感じた。


「ニケ、カルマ。お前達に任せたからな?頼んだぞ?」


 とわざと俺なりの激励を贈る。


 それに対して、ふたりとも任せてくださいと静かに、そして確実に闘志を燃やしてるのがわかった。

 これは予定していなかったが、ふたりの戦闘訓練に丁度いい機会になったか?

 Bランク以下の雑魚ではふたりの練習にもならないだろうが、Aランク以上であればスキルの威力の調整や魔法の魔力調整にうってつけかもしれない。

 ふたりを見習って俺も練習しておこう。


 先のフロアに入ると、地下3階までと違い出現率がグンとあがった。

 これだと、この5人じゃ普通に全滅していたかも?と思えるくらいの量だ。

 今現れたのはリッチ5体と、カースソルジャーというAランクの鎧の魔物。

 それと、ご待望のSランクのリッチロードだ。

 生物鑑定の結果は、


 カースソルジャー ランクA 種族:死霊族 HP:1200/1200

 リッチロード ランクS 種族:死霊族 HP:1500/1500


 とう感じだ。

 HPだけならリッチロードは俺と同格。

 熾天使セラフ達と比べるとさすがに見劣りするが、ノーマルモンスターでこれなのだからかなり凶悪だ。


「ニケ!リッチロードは俺がやる!お前は周りの雑魚を片付けろ!」


『承知しました主様。お任せください。』


 言うと同時に神秘術ミスティックを発動して、双剣とボウガンに聖と光を付与する。

 最近は何度もやっているので、結構スムーズに出来るようになった。

 熟練度だけではなく、こういう使い慣れというもの戦いには重要だなと改めて思った。


 威嚇でボウガンを撃ち込んでから飛び掛かる。

 リッチロードは怯むどころかお構いなしに魔法を連打してきた。

 ひらりと躱しつつ、追加でボウガンを撃ち込んでから横薙ぎに双剣を切り付けた。


 ちっ、踏み込みが浅かったか。

 半歩下がられてあたりが浅かった。


 その隙をついてリッチロードが闇魔法ダークブラストを真後ろに発動させた。

 ドウゥンっという音と共に衝撃を喰らうが、この程度は想定済み。

 こちらも構わずにぐっと踏み込んで双剣で連撃する。


 中段に両手で2撃、からの後ろに回って縦に上段からさらに2撃をお見舞いしてやる。


 ウオオオオオオオオォという断末魔を上げてから塵になり消えた。

 うん、雑魚相手ならSランクでも勝てるな。


 純戦闘職程の攻撃力は持たないが、魔法とスキルで底上げしている俺は、攻撃力だけならSSランクモンスターに匹敵する。

 まぁ、スキルを完璧に整えたSSランク戦士とかは更に倍近い攻撃力を叩き出すのだが、そこは無い物ねだりだな。


 俺には他の戦士系があまり持っていない属性攻撃付与と、〈天啓〉によるステータスUP、そして常時MP回復のアーティファクトの腕輪がある。

 この腕輪のお陰で雑魚戦闘でもスキル全開で戦えるので、ツイていると言っても過言じゃないだろう。


 リッチロードを倒し終えたあと、ニケの方を見たら既に戦闘が終わっていた。

 ニケも魔力効率のいいライトニングブレスや闘気を纏った羽根での射撃攻撃や強烈な前足での踏みつけによりそれぞれを瞬殺したようだった。

 やっぱ、純粋な攻撃ならニケの方が断然に強い。


 というか、あの闘気攻撃…神秘術ミスティックの属性付与みたいな感じだな。

 魔力消費して威力を上げるような仕組みだと言っていたな。


『主様、こちらも終わりました。』


 ニケからちゃんと報告を受ける。

 周りにはクエクエッ!と言っているようにしか聞こえないケド。


 後ろでも戦闘があったようだ。

 言いつけ通りにカイト達は手を出さずに防御に徹して、カルマがすべて片付けていた。


 カルマもリッチ数体を相手にしたみたいだ。

 どれも魂を吸われて終わったみたいで、アイナがちょっと怖がっていた。

 まぁ、アイツ悪魔だからな。

 習性だと思って諦めてほしい。


 端から見たら、どっかのゲームに出てきそうな魔王そのものだな。


 ニケを警戒に当たらせて、ドロップ品の回収をする。

 魔獣相手だと解体をしないといけないのだけど、死霊系はここら辺が楽だ。

 持ってた物は実体を失った時点でその場に落ちる。


 どれどれ、いいものは無いかな。

 うーん、リッチロードから低級MP回復ポーションが落ちたくらいか。

 あとは魔法素材と言われる錬金術に使われるような変な素材がいくつも落ちてたようだ。

 専門外だからサッパリ分からない。

 唯一ミラがこれはいいモノです!と興奮していたが。

 どっかで聞いたセリフなのは気のせいだろう、若い子だし。


 ついでに地図を広げてここのフロアの情報を書き込んだ。

 こういう地道な作業は、攻略をする上でとても重要だ。

 どっかのゲームの不思議なダンジョンみたいなのでなければ基本はマッピングをするのが常套だ。


 出現した敵とランク、部屋の構造を記載して次のフロアに入った。


 入ると大きな体育館くらいの広さになっていて、奥の扉が小さく見えた。

 中には既にモンスターが沸いていて、ひーふーみーよー…とっても沢山いた。

 ざっと数えて20体くらいか。

 リッチロードも3体いる。

 

 しかも入った瞬間にさっきまでなかった来た入口に扉がガシャンッと降りてきた。


「逃がす気は無しだな」


 こういう形だと、いまの陣形だと5人組に被害が出るかもしれないな。


 ちょっと残念だけど、俺も下がってニケとカルマに任せよう。

 ちなみにスキルはかけっぱなしなので、いつでも突っ込めるハズだ。


「ニケ、カルマ」


「主よ、言わなくても分ります。ニケ、我らで行こう」


『主様、お任せください。若者たちを守ってあげてくださいね。』


 そう言うが早いか、ふたりが全力で突っ込んでいった。


「まとめて駆逐してくれよう、グラビティホール!」


 カルマが部屋の中心地に大きな真っ黒い重力の渦を作り出した。


 グラビディフィールドの進化版みたいで辺りにいるモンスター達をどんどん引き寄せていく。


『さあ、主様の邪魔をしたことを後悔する時間です。風よ!雷よ!我に力を!くらえ〈天嵐〉!』


 今までよりも更に魔力を込めて必殺のスキルを撃ち出した。


 その光景は凄まじいの一言だった。

 中心に吸い寄せられた挙句に、竜巻に飲まれて切り刻まれ、さらに雷に何度も撃たれて一瞬で灰となった。

 つか、怖っ! 何そのコンボ。

 俺でも喰らったら死ぬぞ、それ。


 5人組もその光景を見て、この世の終わりを見ているようだと呟いていた。

 

 唖然としながらも、周りは警戒していたが入口側には敵は湧いてこなかった。

 

 重力に引き寄せられなかった敵も、〈天嵐〉が収まる前に動いていたニケとカルマにボコボコに殴られてあっさりと塵と化していた。


「ユートさん。実は魔王とかっていうオチはないですよね?」


 とカイトに聞かれても仕方ないと自分でも思った。


 本来ならモンスターハウスだ!とか慌ててそうな場所を5分で突破し、さくさくと進んでいく。


 このフロアで最強格は当然リッチロードなわけで、それが藻屑のように蹴散らされている事から地下4階の最奥地にいるであろうボス以外は、脅威ではなくなった。


 その後はちゃんと陣形を元に戻して、俺らの戦闘訓練に全員を付き合わせながら進むこと計1時間弱。

 ついにボスの部屋までたどり着いた。


 正直、俺のあの真剣な「油断したら死ぬからな?」みたいな発言はどこにいったんだろうと言うくらい

順調だった。

 結果的に、しゃしゃり出ないで貰えたから良かったのだが。


「さてと、この奥にボスらしき反応があるとニケが言っている。一旦全員休憩するぞ」


 そう言って、5人にも水と少量の木の実を渡した。


 戦闘に参加してないと言っても、1時間臨戦状態で歩いているので疲れない訳がない。

 ましてや、このフロアは自分たちと同格以上しかない。

 緊張がさらに疲労を呼び寄せる。


「ありがとうです」


 とミラが言って受け取り、仲間に配っていた。


「最初、テイマーって聞いてさ。心の何処かで大丈夫かなって思っていたんだけどさ、自分の視野の狭さに呆れるよ。ユートさんは本物のSランク冒険者だな。俺等なんかじゃ逆立ちしても敵わない」


 とダンが自嘲気味に呟いていた。


「ああ、本当だな。戦闘もこなせて回復も出来て、バフも可能。それでいてペットが最高に強いってちょっとチートっぽいよな」


 と冗談気味にザインも言う。


「それだけ努力していたって事でしょう?私達はゲームの時も、現実になってしまった今も中途半端な覚悟しかなかったというだけだと思うのです」


 とミラだけかなり真剣に言っていた。


 そういうのはおじさんちょっと照れくさいので遠慮して欲しいな。

 しかし、一点だけは違うかな。


「いいや、俺もお前たちと同じだったさ。たまたまなんだ。こんなスキルあったりとか、こんな優秀なペット達がこっちに来てくれていたっていうのはね。だけど、天使の塔で俺も思い知らされたんだよ」


「え?天使の塔は無事に攻略したって言ってましたよね?」


 俺の言葉にアイナが反応して聞いていた。


「ああ、ボス攻略は問題なかったよ。戦いは厳しかったけど大方問題無かったよ。でも、その前にな俺らも全滅しかけたんだ」


 それを聞いて全員の視線が集まる。


「ボス部屋よりも前に、乱入者がいてな。そいつが今までの中で最高に強かったんだ。予想もしていなかったから、撤退するのも遅れてね。機転を利かせた仲間ペット達がいなければ俺等全員死んでいたよ」


「それは、カルマさんとニケさんも敵わなかったという意味ですか?」


「ああそうさ。こいつらが手も足も出ない本物のバケモノだった。ふたりが命を懸けて守ってくれていなければ君たちに会うことも無かったろうな…。その後さ、俺が本当の意味での覚悟を決めて生きるようになったのはね」


 思い出すだけで胸を締め付けるあの光景。

 俺もあの光景だけは二度と見たくない。

 ふたりだけでなく、ほかの家族となったメンバーたちのもだ。

 だから失いかけたあの時に本当の意味で覚悟を決めたんだ。


「そんな事が…。だから俺の依頼にも慎重だったんですね」


「ああ、カイトには悪いがその通りだ。二の轍は踏まないと決めていたからな。お前の覚悟が本物じゃなければ受ける気は無かったよ」


 俺の言葉を聞いて、カイトがどれだけ真剣に俺に頼み込んでたか改めて思い至ったようだ。

 その場にいなかった三人も、カイトに託して良かった、見捨てないで助けに来てくれてありがとうと言っていた。


 その様子を見て、この若者たちは心根がとてもいいのだなと感じた。

 裏表なく、本当に信頼しているように見える。

 ゲーム上だけではこうはならないだろうなと思い、ふと聞いてみた。


「君たち、とても仲いいし信頼しあっているようだけど、元々知り合いなのかい?」


「ああ!はい、そうですね。みんな同じ学校の同級生だったんです」


 話を詳しく聞いてみると、知り合ったのは高校生の時で同じクラスだったらしい。

 よく一緒にカラオケやらゲーセンやら海やら旅行やら、その時からずっと一緒に遊んでいる親友の集まりということだった。

 全員ゲーム好きなのもあり、LBOもバイトしまくって買ったんですよとはザインの話だ。

 他のメンバーも同じくバイトしたり貯金をはたいたりして買ったらしい。

 

「ちなみに、カイトとアイナは彼氏彼女なのです!」


 とミラの爆弾発言もあったが。


 なるほどな。

 ザインがいるとはいえ回復が出来るアイナを一緒に逃がしたのはそういう理由か。

 うーん、ミラも憎いことをする。


「ははははは、町に帰る前にちょっといい話を聞けて良かった。お前らを死なせないで良かったよ。まぁ、安心しろ。俺らが全力で町に送り届けるからな?」


 ここまで聞いたら、年長者の俺が約束を破るわけにはいかない。

 元々、約束は守る性格なのでね。


 そんな俺の言葉を聞いて5人も嬉しそうにウンウンと頷いていた。


「よーし、行こうか。おっさんテイマーでも本気出せば凄いんだぜってとこ、見せてやるからな」


 そう冗談めかして言いつつ、扉を開いた。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴっと重い音をたてて開いていく扉。


 その奥には、一体の巨大なモンスターが待ち構えているのだった。


「ははッ、なんだやっぱりお前かよ!よーし、やったろうぜ!」


 そう言って、俺らはボス戦に飛び込んでいった。

 

ちょこっと更新しました!


いつもご覧になって戴きましてありがとうございます。


日々、見てくださる方が増えて、恐縮至極です。


また、ブックマークをしていただいて、本当に励みになっています。


重ねて有難うございます。




次回で救出クエスト!ラビリンス編が完結となります。

宜しくお願いします。


急遽更新しましたが

次回更新は、10/2 25:00頃迄の予定です。


次回もよろしくお願いします!

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