またお化け退治!?
家を見終わってギルドに戻ってきたユートは、ゼオスから例の冒険者について報告を聞くことになった。
「で、彼らは帰ってきたか?」
「まずは、彼らだが…生きていた事が分かった」
お、じゃあ行かなくて良くなったな、良かった良かったとほっとしたのも束の間。
「だが、途中の罠にハマってしまい二人だけしか帰還出来なかったようだ」
すぐさま、そんな期待は打ち砕かれた。
「なっ、じゃあ残った仲間は死んだのか?」
とても嫌な予感がする。
「いやまだわからない。安全圏にまでは後退したようだが、そこで帰れなくなったようだ」
安全圏とセーフティールームは意味が違う。
全くその場で敵が出現しないのがセーフティールームなら、安全圏はあくまで出現する数が少ない部屋の入口とかを指す。
「それならどうやってその二人は帰ってきたんだ?」
素朴な疑問をゼオスに投げかけた。
「彼等のパーティーで一人づつ外に離脱させる魔法”ゲート”を使える者がいるようだ。しかし、既に瀕死になってた為に二人しか外に送れなかったようだ」
「じゃあ残りのメンバーはダンジョンの奥に取り残された訳か」
「そうなるな。既にポーションは殆ど尽きている状態だったし、魔力を回復するにも安全圏とはいえ難しいだろう。まして瀕死の状態だ、一刻も争う状態と言えるだろう」
「うーん、なるほどなぁ。で、二人はどうしてるんだ?」
「今、ギルドの治療院で治療を受けている。町に着いたときはかなり危険な状態だったからな。脱出したその足ですぐ町に戻ってきたみたいだ」
状況はかなり悪い。
今から助けに行ったとしても生きている保証はないし、行くにも負傷中の二人を連れて行かないといけない。
二人の治療は、俺の方でどうにかなると思うが。
しかしダンジョンまでの道のり自体がかなりある上に、中に入ってからも結構潜らないといけない。
焦って急げばミイラ取りがミイラになる状況だが、時間が掛かれば助かったかもしれない命が消えてしまう。
「で、俺にどうして欲しいんだ?」
「そこは治療中の二人に聞こう。俺が決める内容ではないからな」
「聞かなくても要望は分かるけどなぁ。…取り敢えず二人に会おう。案内してくれ」
「感謝する。こっちだついてきてくれ」
ギルマスに案内されてギルド内の治療院に来た。
専門のヒーラーが常駐しているらしく、結構な数の冒険者が治療を受けていた。
「失礼するぞ」
ギルマスが奥の一角で治療受けていた冒険者に声を掛けた。
「ああ!ゼオスさん!一緒に救出行ってくれる方見つかりましたかっ?」
ギルマスことゼオスを見るなり食い気味に聞いてきた。
よっぽど焦っているのが分かる。
「まぁ待て。あんなとこにすぐ行ける奴なんてそうそういない。その中でも唯一行けそうな冒険者を連れてきた。まずは彼と話をしてくれ」
そういうと俺を呼び寄せた。
「やぁ、俺はユート、テイマーだ」
「俺はカイト、ドラゴンライダーです。テイマーのユート?…ああっ、貴方があのSランクテイマーですか?!あのケルベロスも倒したという」
「そんな話まで出回っているのか?まぁそれも事実だ。…それでそっちの女性は?」
カイトの隣で顔色悪くしながらも身を起してこちらの話を聞いている女性に目を向けた。
「私はアイナ、職業はプリーストです。ユートさんお願いします、私たちの仲間を…」
「ああ、まてまて。その話はカイトと話をしてからな」
「ああっ、すみません!でも仲間が心配で…早くしないと…」
アイナという女性は今にも泣きだしそうな顔をしていた。
「とりあえずカイト。君のパーティーがどこまで攻略したのかを教えてくれ」
まずは状況を正確に確認しないといけない。
「わかりました。自分たちは【迷宮】の地下3階にある中央部分まで攻略しました。そこまでは順調だったのですが、地下4階への入口を見つけたときにリッチ数体とバンシー数体の集団に囲まれてしまいまして。なんとかリッチを一体倒したのですが、バンシーが錯乱スキルを使ってきた時にパラディンのダンが行動不能になって囲まれてしまったのです」
「そこで戦線が崩れたか」
「はい。壁役兼前衛として自分と二人で担っていましたが、彼が倒れた瞬間に後衛にまで被害が及んでしまい、ソーサラーのミラが重傷を負ってしまいました。そこで自分も焦ってしまい抑え込めなくなりました。そこからは撤退を余儀なくされ敵の少ない安全圏まで後退したのです」
そこまで苦労無く来たせいで余計に焦りが出たか。
それよりも…
「なぁ、お前たちはLBOプレイヤーか?」
「えっ!もしや貴方もですか?」
「ああ、そうだよ。俺らのパーティーも全員そうだよ」
そう言うと途端に反応が変わった。
「ああ!俺らだけじゃ無かったんだ!と言う事は、貴方が噂の奇人テイマーのユートさんですか!?貴方に出会えるなんてなんて幸運なんだ。良かった、助かった!」
泣き出しそうな顔で喜んでいるカイトだが、まだ行くとは言ってない。
つか、何気に今ディスられてなかったか?
「おい、勝手に決めるな。まだ行くとは言ってないぞ?お前たちも分かっていると思うがココは現実だ。死ねば本当に死ぬ。俺もお前もな。だから、わざわざ危険しか無いところには行けない。俺がお前らを助けた場合の報酬を示してくれ」
厳しい言い方だが、本当の命が懸かるこの世界では甘さは命取りになる。
「う、それは…そうですよね。つい突っ走った事を言ってしまいました。報酬は…俺の金庫にある全額出します!」
なかなか思い切ったな。
しかし、それほど真剣だということか。
まぁ、持っている額にもよるだろうが…。
「で、それはいくらになるんだ?端金なら命懸けれないぞ?」
「はい、俺の金庫には1000金貨と少しあります。それが全てです。お願いできませんか!?」
真剣な目で訴えてくる。
そこまで貯めるのには、相当みんなで頑張ったんであろう事がわかる。
装備も一般的な装備の様だし無駄遣いなんかしてなかったんじゃないか?
「分かった。その代わりに一つ追加させてもらう」
「まだ何か必要ですかっ?!」
さすがにこれ以上は出したくても出せるものが…と言いかけてたのを抑えて。
「大した事じゃない。カイト。お前はドラゴンライダーと言ったな?」
「はい、そうですが?」
「じゃあ、『騎乗戦闘』と、『竜騎士』持ってるな?」
「ええ、それはありますよ」
「戻ってきたら、うちのメンバーにスキル伝授をやってもらいたいんだ。それが追加条件だ」
「そんなことでいいんですか!?それならいくらでもやりますよ!」
思わぬところで狙っていたスキルを手に入れそうだと心の中でガッツポーズし、すぐに承諾の意思を示した。
「よし、決まったな。お前達の依頼は俺が受けよう。すぐ準備に取り掛かる。お前達も案内に必要だ。最低限の回復アイテム等を用意してギルドロビーに集まろう」
「はい、ありがとうございます!すぐ準備しま…す!?」
カイトは顔をぱっと明るくして起き上がろうとしたが、体がまだ思うように動かないようで苦痛に顔を顰めた。
「そのままじゃ、向かうのすら無理だな。…ちょっと待ってろ。…水の精霊よ、この者に治癒の加護を。アクア・ヒール!」
精霊魔法で、カイトを回復する。
ついでに隣にいるアイナも治療した。
驚いている二人を置いといてさらに魔法を掛ける。
「神聖術スキル、〈天啓〉!」
疲労回復と気力回復効果のスキルを二人に掛けた。
「これで、すぐ動けるな?」
そう言いながらぽかんとした二人を立たせた。
「なんというか…テイマーですよね?なんで神聖術なんか持ってるんですか?」
アイナがプリーストである自分のお株を取られたのもあり、疑問を投げかけてきた。
「そこは話せば長くなるから、必要になったら教えてやる。今は準備を急げよ?」
「あ、はい!そうでした。私達は金庫からポーション類を取ってきます。ユートさんよろしくお願いします!」
そういってゼオスに一礼してから足早に出ていった。
「結局受けるんだな?」
ゼオスがやっぱりな、というような顔で言ってきた。
「そりゃあ、対価が合えばね。それに、自分にとってはお金よりもいい収穫がある事が分かったからな。これは本当に大きいんだよ」
「ほう、それは一体なんだ?」
ゼオスは方眉を上げて聞いてくる。
「スキルだよ。有るか無いかで大きく変わるスキルを持っていた。うちの子に適正がある子がいるんだ。まぁ、実際に使えるかは取得してからのお楽しみだね」
と、満面の笑みで答えたら若干引かれた。
まぁ、おっさんの笑顔なんて見せられても嬉しいことはないか。
「じゃあ、俺も準備するために一旦宿屋に戻る。それまでに正式依頼としてクエスト発行手続きをしておいてくれ。そういうのはちゃんとしたい」
「了解だ。ミルバに伝えておくから戻ってきたら彼女のとこに来てくれ」
「ああ、分かったよ。じゃあよろしく頼んだな」
「はっはっは!それはこっちのセリフだよ。じゃあ頼んだな」
そう言うと、豪快な歩き方で治療院を去っていった。
自分もすぐに準備しないとだな。
ギルドのロビーに戻ってくると、ガントが丁度来たようだった。
「おう、探してたぜ。 お前から預かった素材で早速防具が出来たんだ。工房まで来てくれ」
「分かった。俺も丁度防具が欲しかったんだ。じゃあ一緒に行こう」
そう言って二人でギルドを出た。
道中で、この後にまた冒険者を救出しに行くことを話した。
「じゃあタイミング的にはバッチリだな。急ぎで行くとは言え俺らも行くんだろ?」
「いや、今回は相性が悪すぎる。ガントはまだしも、リンとシュウでは耐えきれないだろう。それに速度が重要になる。今回は俺だけのほうがいいな。当然だがニケとカルマは連れていくがな」
「うーん、そうか。俺らのリーダーはお前だし、そう決めたなら何も言わないさ。待っている間はどうする?」
「ああ、そこを丁度話そうと思っていたんだ。天使の塔で思ったんだ。ガントが一緒に居れば近場のダンジョンに二人を行かせてもいいかなと」
「んな、俺は戦闘職じゃないぞ?無理ないか?」
「何言ってるんだ。他のゲームとかではそういう事やっていただろ?」
「まー、それは否定出来ないな。ノウハウというよりも、ゲーム上での実践ベースになるから確実とは言えないぞ?」
「それでいいよ。無理してもらうつもりはない。ランクBくらいの相手にスキル上げをしてきて欲しいだけさ」
「わかった。安全マージンはかなり取っていいんだな?」
「そこの塩梅は任せるよ。信頼してるさ。ただ、念のためフィアとゲンブはガードと荷物運びに付けるよ。いざという時に使ってくれ」
「それはありがたいな!特にゲンブは荷物運ぶのにいるといないとじゃ雲泥の差だからな。その分の収穫量は期待してくれていいぜ」
「ははは、気張り過ぎるなよ?」
「それは俺よりも二人に言ってくれ」
がははとガントが笑う。
だが、次の瞬間に真顔になった。
「同じ世界から来た奴らとは言え、命を懸ける程じゃないハズだ。ぶっちゃけユートが居なくなるのは困る。あの男がうろついてるとも限らないし、無茶はするなよ?」
「ああ、分かっているさ。多少の無理はするが無茶しないさ。彼らにとって仲間が大事なように、俺もお前達三人のほうが大事だからな」
「それを聞いて安心したよ。さ、ついた。入ってくれ!師匠~!連れてきました!」
ガントはそう言うと扉を開けて入っていった。
中から、あいよーって声がする。
若い女性の声だ。
「ああ、いらっしゃい!あんたが噂のテイマーだね。アタシはこの工房やってるマリエルだ。よろしくね!」
姐御!って言いたくなるような男前の性格してそうな女性が現れた。
短めに切った青い髪にオレンジの瞳、女性にしてはしっかりついた筋肉とそれに負けずに主張している胸が皮ジャケットを押し上げていた。
歳は20後半から30前半と言ったところか。
「ああ、ユートだ。よろしく頼む。それで師匠ってのはこの人か?」
「ああ、そうさ!この人はこの町唯一のSランク鍛冶屋なのさ。俺も一昨日知り合ったばかりだが鍛冶屋トークで意気投合してな。工房を貸してくれているんだ」
ガントがそう言うとマリエルもガントを持ち上げた。
「ガントは腕がいいし、センスも中々なもんだよ。壊しちまったキマイラの鎧も見せてもらったが、バランスがいいね。アタシが見ても参考になるくらいデキが良かったし、ギブアンドテイクさ!」
そういうと、師匠のあの防具なんかは…とか、昨日作ったグローブなんかはとか、話が盛り上がってきたのでストップしておく。
「済まんが急がないといけない案件があるんで、先に防具見せてもらっていいか?」
急ぎの件がなければ二人の会話に興味もあるんだが、そうは言ってられない。
それに、防具が無ければ死にに行くようなもんなので今貰えるなら貰っておきたい。
「ああ、すまんすまん。マリエル師匠と話しているとネタが尽きなくてな。二晩くらい話せると思うよ。さて、本題がこっちだ」
と、やっと出来上がった防具を見せてくれた。
今回の防具は、ベースの魔獣の革はSランク素材のケルベロスの皮が使われていた。
留め具にはミスリルが使われて、装飾の一部にユニコーンの角が使われている。
また、継ぎ目の革にはヘルハウンドを使ったということだ。
「え、てかどうやってSランク素材使ったんだ?」
「そこは、師匠がやってくれたんだよ。珍しい素材だから触らせろってね。そうそう師匠は一年前からこの町にいるが、ギルドへ登録していなんだ。だからSランクというのも知られていないから、あんまり言いふらすなよ?面倒ごとは嫌いらしいからな」
「ああ。なんでアタシがわざわざギルドへ報告しないといけないんだかね。自分で素材も取れるし、素材は全部武器防具にして売っちまうからギルドなんか通さなくてもやっていけるのさ」
ニカっと笑ってそう言うマリエル。
なんとも頼もしい人だなぁ、嫌いじゃない。
「手伝ってくれたなら、俺からマリエルに支払わないとな。うーん、金貨1枚でいいか?」
「はっは、別に金は要らないがくれるなら貰っておくよ。ありがとう」
言ってる割には躊躇せずに受け取り、あとは勝手にやっといてくれ~と奥に入っていった。
「いろんな意味でいい人だな」
「ああ、俺もこっちでこんな人と会えるとは思っていなかったよ」
頭をポリポリと掻きながらそんなことを言った。
「なんだ?惚れたのか?」
「ははは!そうとも言うかもな。気が合うし話が合うからな。惚れてないとは言わないぜ」
そう言いながらも、鎧を装着していく。
所々の長さとかきつく無いかとかを調べて最終調整をしてくれているようだ。
「素直だなー。イジリ甲斐のないやつめ。…よし、とりあえずこれを早速使わせてくれ。今日の深夜には出発するから、済まないが二人にはお前から言っておいてくれ」
「分かったよ。じゃあ厩舎からゲンブとフィアを出しておいてくれ。明日の朝迎えに行くからさ」
「了解だ。じゃあこの後に出しておくよ。その後宿屋にニケとカルマを迎えに行くから、ガントは先に宿屋に戻ってくれ」
「分かった。じゃあ宿屋で会おう」
ガントは工房を片付けてから宿屋に戻るという事なので、そこで一旦別れた。
外はもう夜に差し掛かっていた。
俺は厩舎が閉まる前に行くために、急いで向かった。
「あら~、こんな時間に珍しいですね。どうかされましたか?」
厩舎の娘が出てきた。
夜なので昼間と違い薄手のカーディガンを羽織っていた。
「夜分に済まないな。明日の朝に仲間のガントがうちの子たちを預かりにくるので、出しておいてくれないか?」
「ええ、そういう事でしたら大丈夫ですよ。では、クリスタルから出しておくのでこの札を渡しておいてください」
そう言うと、木片を渡してきた。
「それさえあれば、他の方でも受け取り可能です。忘れたらお渡し出来ないので必ず渡してくださいね」
「へ~、そういうものもあるんだな。知らなかったよ」
じゃあよろしくと言って、その場を後にした。
完全に日が沈んだ空を眺めて、少し急ぎながら宿屋に向かった。
到着すると馬小屋へ直行しニケとカルマに会った。
ふたりは待っていたかのように起きていて、いつでも出発出来ますとだけ言ってくれた。
宿屋に入ると、ガントは部屋に戻っているらしく俺も部屋に向かった。
「あ、おかえりパパ!話はガントさんから聞いたよ」
「ユートさんお帰り。またすぐ出るんだってね。きっと助けてあげてね」
ふたりはガントから話を聞いていたようだ。
ダダを捏ねるわけでもなく、自分たちがまだ実力不足であることを棚にあげたりはしないようだ。
「おう、帰ってきたか。ゲンブとフィアは出しておいてくれたか?」
「ああ、いま丁度行って帰ってきたところだ。この札があれば渡してくれるから、厩舎の職員にそれを見せてくれ」
そう言って、ガントに札を渡した。
「ガントから話は聞いたと思うが、俺らと同じLBOの世界から飛ばされた元プレイヤーを助けに行く。今回は兎に角スピードが命だ。完全にゴリ押しで行くから三人は連れて行かない。ただ、だからと言ってぼーっと待っていたんじゃ勿体ないから2、3日近場のダンジョンに籠ってスキル上げをしておいてくれ」
真剣な目線を二人に送る。
二人も、どこか不安そうな雰囲気もあるがそれは俺を心配してのことのようだ。
だが、そこには口出しはしてこなかった。
「うん、分かったよパパ。丁度私たちもそうしようと考えてたの。だから、ガントさんに教わりつつスキル上げしてくるね」
「俺も、ユートさんともっと冒険したいから、今のうちに上げておくよ。そのうち追い抜かすつもりだから覚悟しておいてよね!」
二人も今のままでは付いていくのが大変になると思っているみたいだ。
なんとも出来のいい子供たちだ。
ついつい二人の頭を撫でてしまいリンは蕩けたが、シュウは嫌そうな顔だった。
すでに立派な男子ということだろう。
そんな二人を微笑ましく思いながらも気を引き締めなおす。
自分が万が一死んだらこの子たちが路頭に迷うことになる。
それだけは避けないといけない。
ガントも自分を必要だと言ってた。
ならばやることは一つだ。
「じゃあ、行ってくるよ。2日間くらいは掛かるかもしれないけどちゃんと無事に帰ってくるからな。みんなも大ケガとかしないようしてくれ。じゃあ、行ってくる」
特にシュウな。
と言ったら、わかってるよ!と不貞腐れたかけたがもう突っ走ったりしないよと約束してくれた。
装備を再度確認し、ストレージとバックの中を確認する。
ポーションは本当ならもっと持っていたいが嵩張るのである程度抑えめにした。
夕飯は三人で済ましてくれと伝えて出ようとしたら、サンドイッチ弁当をリンに渡された。
水の入った水筒付きだ。
どうやら、ガントから話を聞いて宿屋に言って弁当を用意して貰ったらしい。
さすが女の子だ、良く気が付く。
「おお!リンありがとう。リンは将来いいお嫁さんになるぞ。パパも応援するよ」
と言ったら、はにかんで嬉しそうにしていた。
シュウも俺も手伝ったんだよって言ってたのでありがとうなって言いながらわしゃわしゃ頭を撫でてやったら、今度は照れくさそうにしてた。
部屋を出て、馬小屋に向かいニケとカルマを引き連れてギルドへ出発した。
出るときにリンが手を振りながら、パパいってらっしゃ~い!と仕事に行く父親を見送る娘をやってくれたので、ちょっとやる気出たのは内緒だ。
10分ほど歩いてギルドに向かっていくと、飛竜と二人の冒険者が見えた。
カイトとアイナだ。
二人は準備を終えて俺が来るのを待っていたようだ。
「ユートさんお待ちしてました。中でギルドの方がお待ちしております。手続きが終わりましたら出発しましょう」
「ああ、分かったよ。すぐに終わらせてくるから待っていてくれ。カルマ、ニケ。この二人が今回の依頼主だ。道中この二人も守ってやってくれ」
そう言ってカルマとニケを二人に紹介した。
「承知しました。我らがいれば道中の雑魚など取るに足らないでしょう」
『主様の仰せのままに。私達にお任せください。』
カルマとニケもやる気十分だ。
「これは…噂のナイトメアとファルコニアでしたか?さすがSランクテイマー。どちらもすごい魔力ですね」
と、ふたりを見てカイトは圧倒されていた。
「凄いですね!こんなレアな魔物を間近で見れるなんて信じられないです。よろしくお願いしますね、カルマさん、ニケさん!」
アイナはレアモンスターであるふたりを見れて感動しているようだった。
じゃあ行ってくるから待っててくれと、カルマとニケもその場で待機するように言ってから中に入った。
「ユートさん!お待ちしておりました。早速こちらへ。急ぎの案件ということで書類の方は処理しておきました。内容の確認をしてサインをお願いします」
俺を見つけるなり、ミルバは俺をカウンターへ招き入れた。
「…うん、内容に問題はないな。本当に金貨1000枚出すのか。カイトの本気度が分かるな」
「救出クエストでこの金額は初めて見ましたよ。王国貴族救出並みです。ユートさん、私からもお願いです。お二人の仲間を救出してあげてください」
「ああ、受けた以上は必ず達成するよ。…但し、まだ生きていればだが」
「そうですね…そこは祈るしかないです。ユートさん頑張ってください!」
「ああ、ありがとうな。家の方もよろしく頼むよ。あの貴族が戻ってきたら、依頼が終わって戻ってきたら話をしようと言っておいてくれ。多分、俺に売るしかないからな」
「…詳細は怖いので聞かないでおきます。そのままお伝えしますね。では、ご武運を!」
ギルドの認可印を押したクエスト書を受け取り、じゃあなと言ってギルドから出た。
「終わりましたか?」
カイトが出てきた俺に聞いてきた。
「ああ、手続きは終わった。早速向かおうか。ああ、アイナ。飛竜に二人では遅くなる。ニケに乗ってくれ」
「え、いいんですか?」
「ああ、速度優先するから振り落とされないようにしっかり掴まれよ?」
「分かりました。では、失礼します」
そういうと、早速アイナをニケに乗せる。
俺はカルマに乗り、カイトは自分の飛竜に飛び乗った。
「じゃあ、出発しよう。カイト飛竜を全力で飛ばせ。俺らは後をついていく。っと、その前に…」
ストレージからペットポーションを取り出し、カイトの飛竜を治療する。
町へ帰ってくる途中に出てきた魔物を振り払ってきたのか、多少のケガをしているようだったので治療を施した。
こういうのは放っておくと後で悪化する。
テイマーとしては、こういうのは放っておけないのだ。
「自分の相棒だろ?もっと大事にしてやれ。こいつらは単なる乗り物じゃない、命を共にする友でもあるんだ」
撫でながら、干し肉も与えてやる。
嬉しいそうに食べていた。
ついでに、カルマとニケにも食べさせて再びカルマに飛び乗った。
「よし、ダンジョン迄は休み無しで行く。みんな頼んだぞ!」
そういうと、カルマとニケ、飛竜も気合十分の鳴き声を上げて出発をした。
「ザイン、ダン、ミラ…今行くからな、待っててくれ…!!」
カイトの祈るような声は夜空にかき消えていった。
今回更新がかなり遅くなりました。
お待ちしていただいていた方には申し訳ございません!
いつもご覧になって戴きましてありがとうございます。
日々、見てくださる方が増えて、恐縮至極です。
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重ねて有難うございます。
次回からまたダンジョンへ救出へと旅立ちます。
天使の塔よりは短い予定ですが、またしばらくダンジョン編をご覧ください。
次回更新は、9/28 25:00頃迄の予定です。
次回もよろしくお願いします!




