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真っ白や
うちの頭に白い世界の記憶が流れて来はった。
暴走ダンプが真っ直ぐ突っ込んで来るのが窓の外に見えたんよ。運転席の運ちゃんは涙目になんながらハンドル切ってたわ。
乗ってるお客はん達は叫んで叫んで、流石のうちもこらあかんなって。
ガーンぶつかって、うちらのバスもいなす感じに軽く避けたんやけど、ダンプでっかいやんかー。みんなバスん中で揉みくちゃに舞ってったんよ。
うちも吹っ飛ばされてな。ミヨちゃんから離れてしまったんや。
かすり傷程度で済んでよかったわー。
運転手はんが誘導してな。お客はん達はみんな避難しはった。
ガソリン漏れてるでー、て、誰かが言うてるの聞いてうちも覚悟決めたんや。そしたらな。ミヨちゃんがうちに気付いたんよ。
「ママー、オニンギョさんないー」
戻ってきたらあかんで。うちは命無いんやから、大丈夫や。
「ママー!オニンギョさんない!」
あかんで。うちなんか安モンの量産品や代わりならいくらでもおるよ!
「ママー!うわーんわーん」
なんやろなー。何でうち、生きてないのに意識あるんやろ。残酷やん。
動く脚があったらすぐ行ったるのに。な、ミヨちゃん。