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鏡合わせのミロワール  作者: 知己
第7章 血の日曜日

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第39話 驚愕の事実

「————(あるじ)(めい)に従っている……⁉︎」

 

 善磨(ぜんま)の突然の告白にタスクは我が耳を疑った。

 

 タスクの脳裏には、善磨が何者かの命を受けているなどという発想が無かったのである。

 

 善磨に命令を下せる人物と言えばまず彼の両親が思い浮かぶが、彼が元服を迎える頃には二人ともすでに亡くなっておりこれは除外される。次は本家筋である日下部家(くさかべけ)の当主————タスクの父であるが、十年前に善磨の手に掛かって殺害されておりこれも候補からは外れる。

 

 タスクにはこれ以外に思い当たる人物はいなかったが、よしんばいたとしても、このような殺戮を彼に指図している理由が全く分からない。

 

 扶桑(ふそう)のとある里の人間を皆殺しにさせた後、はるか彼方(かなた)の西国でまたしても大量殺人を犯させるなど、通常考えられないことだからだ。

 

「……この()に及んで何を言うかと思えば、命令を受けたからだと……⁉︎」

 

 脳内で結論を出したタスクはギッと歯噛みして仇を睨みつけた。

 

「————ふざけるなッ! 貴様は居もしない架空の人間を仕立て上げることで自らの犯した罪から逃避しているだけだ! 卑怯者め、恥を知れッ‼︎」

 

 タスクに指を突きつけられ罵倒された善磨だったが、特に揺らぐこともなく平然と答える。

 

「信じずとも一向に構わないが、私はまだまだ人間を斬らなければならない。そろそろ決着をつけるとしようか」

「…………!」

 

 善磨のこの返事にタスクははたと閃くものがあった。

 

「……待て。まさか、この国の各地で起こっている大量殺人事件も貴様の仕業だったのか……⁉︎」

「ああ、そうだ。正確に言えば、私と私の同志の手によるものだがね」

「————ッ!」

 

 タスクの心臓がドクンとうるさいぐらいに高鳴った。

 

 ジャンは大量殺人事件の現場が数百キロは離れていると言っていた。犯人は単独犯ではないと思われたためにあの時は善磨と事件が結びつかなかったが、実際にこうして善磨の凶行を()の当たりにしたからには、命令どうのこうのということはともかく、同じような思想を持った仲間が存在していることは確かなのだろう。

 

 タスクは愛刀を力強く握り締めた。

 

「……もはや貴様を斬るのは仇だからだけではない……! 貴様は危険な存在だ。ここで俺が止めてやる————‼︎」

 

 言うなりタスクの身体が揺らめき、掻き消えた。

 

「————流石は『毘沙門天(ビシャモンテン)』……」

 

 表情を崩さぬまま善磨が賛美の言葉を口にした時、一瞬にして間合いを潰したタスクの刀が打ち合わされた。

 

 再び(つば)と鍔、そして憎き仇の顔が間近で突き合わされ、タスクは(つか)を握る力をより一層強める。

 

 

 ————その時だった。

 

 

 驚愕の事実に気付いたタスクの口から思わぬ言葉がこぼれ落ちる。

 

「…………|お前は、いったい何者だ《・・・・・・・・・・・》……⁉︎」

 

 改めて注視した善磨の容貌は、|十年前と寸分違わず同じだった《・・・・・・・・・・・・・・》のである————。

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