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鏡合わせのミロワール  作者: 知己
第5章 首都へ

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第23話 次なる目的地

〜〜〜〜〜 第4章のあらすじ 〜〜〜〜〜

 

 

 ————引き続き我が(あるじ)鏡花(きょうか)を捜す(たすく)とジャンだが手掛かりすら見つからぬ中、ジャンが瓦版から大量殺人事件が各地で起こっているという情報を得た。下手人が気にならないというのは嘘になるが、我々のなすべきことは鏡花の保護と憎き仇・月代善磨(つきしろぜんま)を討つことのみ……! 他のことに眼を向けている場合ではない……む? あの者は……まさか————鏡花⁉︎ ピピィッ! ピィ♪ ピピピィッ♫

 

(シュウが嬉しさのあまり興奮してしまったので、以下はナレーション)

 

 タスクの姉・キョウカを捜索する中、二人の前に計ったように現れた謎の女性はタスクによって『ミロワ』と名付けられた————。

 

 

       ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 ————朝食を終えたタスクはお腹が膨れて満足そうな表情のミロワへ優しげな視線を送る。

 

 十年前に生き別れた当時のままの姉の姿がそこにあった。違うのはホクロの位置と髪の分け目くらいなものである。まるで鏡で写したように————。

 

「……付いているぞ、ミロワ」

 

 タスクは苦笑を浮かべてミロワの口元についたマドレーヌの欠片(かけら)を拭ってやった。5歳年上のキョウカもこうして幼い頃の自分の世話を焼いてくれた。取ってくれたのはご飯つぶだったのだが。

 

 生き別れてから十年の月日が流れ、まるで姉と弟から妹と兄に変わってしまったかのような不思議な感覚をタスクは覚えた。

 

 ミロワはタスクに触れられた口元に手を当てて穏やかに微笑む。

 

「……あ、あぃがと」

「…………‼︎」

 

 舌足らずだが、声もまさしく姉・キョウカとそっくりである。タスクはますます分からなくなった。

 

「おっ、しゃべった! 今『ありがとう』って言ったよな⁉︎」

 

 ジャンが身を乗り出すと、ミロワは笑みを収めて、またしても「ウーッ」と唸り声を上げる。

 

「なーんで俺にはそんな手厳しいのよ。あんまり冷たくされると泣いちゃうよ、俺?」

「…………」

 

 ミロワはジャンの泣きマネには構わずプイッと顔を背けた。見かねたタスクが横から助け舟を出す。

 

「大丈夫だ、ミロワ。この男はジャン。さっきも言ったが悪い人間ではない」

「そうそう。こう見えても俺、ジェントルマンよ? ジェントルメーン!」

 

 親指を立てて歯を見せたジャンを横眼にチラリと見たミロワはボソッとつぶやく。

 

「……じゃん、きぁい」

「嫌い⁉︎ なんでだよ⁉︎」

「…………」

 

 ショックを受けるジャンをまたしても無視してミロワはタスクへ伺うような視線を送った。

 

「あ、ああ……、俺はタスクだ」

「……た、たすく、すき」

「…………‼︎」

 

 ミロワの輝くような笑顔にタスクは一瞬思考が止まってしまう。言い知れぬ感情が胸を駆け巡った時、

 

「良かったな、アニキ! ミロワちゃんに好かれてよ!」

「あ、ああ……」

 

 ジャンの言葉に我に返ったタスクが生返事をすると、今度はその袖がクイッと引っ張られた。

 

「ん? どうした、ミロワ」

「ピッピ、ピッピ?」

「急に何やってんだ、ミロワちゃん⁉︎」

 

 突然、奇声を上げて手をバタつかせるミロワに、タスクは彼女の言わんとすることにピンときた。

 

「……ああ、シュウと遊びたいのか。だったら中庭に行けばシュウの方から見つけてくれるはずだ」

「しゅう、あそぶ……!」

 

 ミロワは嬉しそうにタスクが指差した中庭へ飛び出して行った。その背中を見送りながらジャンが尋ねる。

 

「眼を離していいのかよ?」

「なにかあればシュウが知らせてくれる。少しなら問題はないだろう」

「そうかい。そんじゃあ、これからのことだけどよ……」

「ああ」

 

 表情を引き締めたジャンに対し、タスクも姿勢を正して向かい合った。

 

「昨日言ってたように、ミロワちゃんを連れて故郷に帰んのかい……?」

「…………」

 

 予想していたジャンの質問だが、タスクは長い沈黙の後にようやく口を開いた。

 

「……いや、彼女が————ミロワが姉上だという確証が持てないこの状況で故郷の土は踏めない……!」

 

 当初は姉・鏡花と瓜二つな容貌の謎の女性をキョウカと信じて疑わないタスクだったが、彼女を『(ミロワ)』と名付けたことからも彼自身、心に迷いが生じていることは明らかであった。

 

 ジャンも答えを予期していたようにうなずく。

 

「……だよな。それに————」

「ああ、仇討(あだう)ちも成し遂げなければならない……‼︎」

「二兎を追うことを続けるってワケだな。その旅にミロワちゃんを連れてくのかい?」

「……仕方ない。幼子(おさなご)のような彼女を放り出す訳にはいかない」

 

 タスクの決意を聞いたジャンは指を立てて見せる。

 

「アンタの気持ちは分かったよ。そんじゃあ俺の意見だけど、次は首都に行ってみねえかい?」

「首都、だと……?」

「おうよ、この国の首都・『ロワゴール』だ」

「…………」

 

 首都に向かいたいというジャンの意図が掴めず、タスクはしばし沈黙した。その様子を感じ取ったジャンは先んじて口を開く。

 

「『なんで首都?』って顔だな。理由は2つある。まずミロワちゃんだけど、最初アンタが言ってたように、彼女が記憶喪失中の姉ちゃんって可能性もまだ捨て切れねえだろ?」

「……そうだな」

「そこでだよ、首都のデッケエ病院や大学なんかでミロワちゃんを診てもらうってのはどうだい?」

「有識者にミロワの身体を調べてもらうということか……!」

 

 タスクが身を乗り出すと、ジャンはうなずいて続ける。

 

「そういうこと。正直俺ら二人だけじゃ、あの子のこと持て余しちまうと思うんだよ」

「……確かにな。医学に明るい者の意見を聞いておくことも必要なのかも知れない……」

「だろ? そんでもう1つの理由は、人が集まる首都ならアンタの姉ちゃんや仇の情報も掴みやすいんじゃねえかと……」

「……いいだろう。お前の提案に乗ろう。だが、首都まではどのくらいなんだ?」

「んー……、実は行ったことねえんだけど、休み休みゼフィール号を飛ばして4、5日ってトコじゃねえかな?」

「分かった。では次の目的地は首都でいこう」

 

 タスクの承諾を得たジャンは歯を見せて立ち上がった。

 

「オッケ! そんじゃあ俺はまた必要なモンを買い出ししてくっから、アンタはミロワちゃんとここで待っててくれよ」

「ああ、頼む」

 

 ジャンは大急ぎで部屋を出て行ったが、一度閉めたドアを開けてひょこっと顔を覗かせる。

 

「あっ、ホテルスタッフへのチップはコインで充分だかんな!」

 

 ジャンはタスクに注意を促すと、今度こそホテルを出て行った。

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