酒瓶を持った男
翌日、イオ婆ちゃんの手伝いのペンキ塗りを終えたキース達は、今日は用があると言うリゲルと分かれて再び移民街に向かっていた。
昨日リリーに案内してもらった場所からもう一度建物を確認して、それからどう動くか作戦を練ろうということだ。
移民街に行く、
と言ったキース達にイオ婆ちゃんはあまりいい反応をしなかったのが気になるが、
リゲルが言うには年配の方には過去の歴史を気にする方が多いようで、今でも心のどこかで差別的な思いがあるんだと思うと言うことだった。
再び移民街を訪れたキース達が双眼鏡を手に建物を見ていると
「あんたらも物好きだなぁ」
と、後ろから男に声をかけられた。
キース達の後ろであぐらをかくその男は中年くらいで、がっちりした体格だが、少し腹が出ていた。
片手には酒瓶を持っており、昼間から酒をあおいでいる。ビール腹、と言うやつだろうか。
「移民街にはくるなとか、外の奴らに言われなかったのか?」
男は酔いの回った紅い顔でキース達に近づいていきた。
突然飲んだくれの男に絡まれて戸惑っているキース達3人に、男が続ける。
「なぁ、あんたらには、あの建物が何に見える?」
キース達はもう一度建物を見た後、3人で目を合わせて頷いてから答えた。
「お城・・・に見えます」
「ほう、なかなかいい線いってんじゃねぇか。」
男はニヤリと笑ってまた酒瓶に口をつけた。
「だけど、僕らは昨日リリーさんに、あれは聖域だと教わりましたが・・・」
初めての飲んだくれに戸惑っているのか、いつもより敬語が乱れたベンが言うと男は豪快に笑った。
「あれは聖域なんてもんじゃねぇよ、あんたらが正解だ。」
「ってことは城ってことか?」
マリウスが再度確認をとる。男は「正確には今は、」と言いかけたところで急に苦しみだした。
「大丈夫ですか!?」
慌ててキースが声をかける。
心臓発作でも起きたのだろうか。支えようと肩をかすマリウスに男は「あぁ、そうだったな・・・」と独りごちて、
「大丈夫だ、いつものことだ」
と、それを制した。
ガハガハと苦しそうに咳き込む男を心配しながら、彼が落ち着くのを3人は待った。
「すまねぇな。」
男はようやく状態を起こした。
「まぁ、頑張ってくれや。でも、気をつけろよ。」
そういって去ろうとする男の背中に、キースが質問を投げる。
「ここからあの場所へは入れないのですか?」
男は返事に困ったように少し間を置いてから、
「ここからは行けない。」
と、だけ答えた。
そして男は数歩進むと、またキース達の方を振り返った。
「聖域には決められた人間しか入れない。門は閉じられている。一般民は近づくことも許されない。」
そう言い残し、彼はそのままどこかへ去っていった。




