聖域と帰路
「こちらからなら見えると思います。」
そういえば、あの岸壁が見たいのよね?と、キース達の会話を思い出したように言うリゲルに反応したリリーが移民街のある場所を案内してくれた。
確かにそこからは城(仮)は見やすかった。
キースはあの少女がいないか、目を凝らして見てみたがそこに彼女の影はなかった。
リリーは、あの建物のどこかに夫が天寿を全うした部屋があると思うと、
「あの建物はとても神聖なものなのです。」
と言い、今は亡き夫に思いを馳せるのだった。
カエルが鳴く声が辺りに響く、夕暮れ時になった。
今日も夜は天気が悪くなるから、お早めに。
と、リリーに促されてキース達は帰路についた。
だが、何かおかしい。キース達の後をつける足音が聞こえる。
最初は気づかぬふりをしていたが、だんだん歩く速度を速めてみると、後ろの足音も同じように速くなった。
ふと止まって振り返ってみれば、足音の主はさっと物陰に隠れる。
キースはマリウスとベンに手で合図をだし、3人は同時に違う方向へ解散した。
流石にそこまでされると、どう辿っていいのかわからぬようで、足音の主はもうそれ以上ついてくることはなかった。
それに、キース、マリウス、ベンは、そういった類のことに対する訓練も十分に積んだ猛者たちである。よほどの手練れでない限り、彼らを就けることは難しいのだ。
キース、ベンと分かれたマリウスは木の上へと身を隠し、上から様子を確認すると、どうやら後をつけていたのは子供のようだった。
(子ども、ねぇ・・・)
マリウスは心の中でそう呟き、その子の姿が見えなくなるのを待って宿へ帰り、キースとベンに報告した。
「そぅみたいだね。」
確認していたのか、キースが言う。
「特に、害はなさそうでしたが。」
ベンもキースと同じような反応をする。さすが、未来の国を背負って立つメンバーだ。
マリウスもベンには同意見で、後をつけていた少年には特に邪気を感じなかった。
「明日、もう一度あの城(仮)を確認したいと思う。」
キースが言った。
手元の本をパラパラとめくるベンも
「まだ調べ足りないことばかりですしね。」
と言い、マリウスと共に賛同した。
マリウスは、ベンの持つ城(仮)から手に入れた本を覗き見た。ベンならともかく、もちろん自分には全く読めないが、
(こいつぁやっぱり何かあるぞ)
と、心の中で思うのだった。




