お出かけしましょ。
大変長らくお待たせしました。
そろそろ動き出す頃ですね。
真昼。
すっ、すっ、と静かな足音が聞こえる。
「やい三成、どこへ行く」
大谷は部屋の隅で書物を見つめながら声を出した。
障子の向こうから微かなため息が聞こえた。
「よく俺だとわかったな」
石田は障子を開け、姿を見せた。
朝から閉め切っていた部屋は空気が悪く、石田は眉間にシワを寄せる。
「急に開けるな、眩しいであろう。で、どこへ行く」
大谷は書類に目を落としたままそう告げた。
「…西へ行ってくる」
石田は少々ぎこちなく答えた。
大谷はそんな石田を横目に見て、「そうか」と言い、再び書類に目を落とした。
「戸を閉めていけ」
「いや、空気の入れ替えをしろ。空気がこもって気持ち悪い」
そう言って、石田は静かに歩いて行った。
「…三成よ、ずいぶん面白そうなところへ行くのだな」
大谷は、石田がいなくなると、すっと腰をあげた。
微かに口角をあげながら、石田の通った廊下を歩いて行った。
ーー岡富城・長曽我部ーー
「長曽我部、忙しい時にすまんな」
客間に案内された石田の前には、長曽我部元親が堂々とした態度で座っていた。
「別にかまわねえよ、石田。ところで、てめえが一人でくるなんて珍しいな。なんかあったか?」
長曽我部は言葉は荒々しいが雰囲気は落ち着いている。
「実は、一つ貴様らに願いたいことがある」
「ほう…なんだ言ってみな」
長曽我部が面白そうに笑っている。
「次の戦…私たちについてほしい」
石田はまっすぐ長曽我部を見て言った。
静かな時間が流れた。
石田は長曽我部の目をを見たまま一寸も動かない。
長曽我部は目を閉じ、口を開いた。
「わかった。加勢する」
その言葉を聞いた石田の顔に安堵の表情が見られた。
「だが、俺達がしっかり力になれるかは保証できねえ」
「なんせ四国は島。…それに……長曽我部軍は金がないであろう。このような貧乏な軍が私たちについても、戦力になるか心配だ」
石田と長曽我部の顔が固まった。先ほどの声はどちらの声でもない。
「てめぇっ…!!」
長曽我部の目が驚きと怒りでごちゃごちゃになった。
声の主は言わずともわかるだろう大谷吉継だ。
先ほどまで誰もいなかったはずの石田の隣に、ちょこんと座っている。
長曽我部は完全に怒りを顔に出している。
「石田…やっぱり取り消しだ…!!てめえらの軍に手はかさねえ!!他を当たってくれ!!」
「なにっ…!!」
石田は慌てた。せっかく長曽我部を捕まえられたと思ったのに…
「まて長曽我部!!俺はそんなこと思っていない!!」
「もう何も聞き入れねぇ!!悪いが、恨むなら大谷にしな!!話はこれで終わりだ!!」
そう言って、長曽我部は大谷と石田を城から追い出した。
「……」
石田はただただ呆然と岡富城を眺めていた。
「まあ、こういうことも少なくなかろう」
瞬間、ぶちっと石田の何かがキレる音がした。
「だいたいお前が来なければこんなことにはならなかったのだ!!ずっと部屋で書類作業をしていれば良かったものを!!なんてことだ!!」
石田は珍しく歯茎まで見えるほど、声を荒げて怒鳴った。
「何を言っているか三成よ。お前がついて来いと言ったからついて来たのではないか」
「何を言っている!!そんな事を言った覚えはない!!」
「私の部屋の戸を開けて行ったではないか。あれはついて来いということだったのであろう?」
「…!!あれはただ空気の入れ替えをするためだ!!」
「てめえら俺様の城前でもめてんじゃねえ!!!!!!さっさと帰れ!!!!!」
読了お疲れ様でした!!そしてありがとうございます!!
前回の更新からだいぶ経ってしまいました。すみません。
今回は久しぶりに長曽我部くんが登場してきました。
大友くんのお話の時だったと思うんですが、長曽我部くんのところに場面転換する時の表示が「四国」になってた気がしますが、気にしないでください。
それでは、今回も感想、アドバイス等よろしければ御願いします。
まだ後少し続くので、今後もよろしくお願いします!!