「不屈の弾道」「運命の強敵」
今回ご紹介するのはジャック・コグリンという米軍の元スナイパーが書いた現代冒険小説です。
海兵隊最高の狙撃手カイル・スワンソンという主人公のシリーズ小説ですね。
著者も本職の狙撃手だったという経歴なので、狙撃手順や心理描写などが結構面白いです。
1作目は中東で作戦遂行中だった将軍が、テロリストグループと思われる何者かに拉致されたという事件が発生。
主人公はチームと共にこの事件に対処するように命令を受けます。 しかし任務内容は将軍の救出ではなく、暗殺。
表向きは重要な機密の漏洩を防ぐ為とされますが、その裏にはとある巨大な陰謀が...という内容。
ワシントンで、中東(場所失念)で、ダイナミックに展開していく内容は、一人のスナイパーが戦場で戦うだけのお話では終わりません。
2作目は前回の事件後、極秘裏に創設された大統領直下の特殊作戦チーム"トライデント"に所属することになったスワンソン。
いろいろな成り行きで公式には"死者"扱いされている為、アメリカ合衆国が表立っては行えない作戦を秘密裏に行うそうでその命令系統や権限は(その種の調整を必要とはするものの)軍や政府の制限を受けないというある種夢のようなチームです。
そして今度の舞台もシリア、イラク、パリ、ロンドン、アメリカと世界を又にかけて行われます。
冒頭、"ジューバ"というテロリストが米軍に亡命しようとしたとある化学者を狙撃するところから物語は始まります。
主人公達が暗殺された化学者からもたらされた情報に従って過去にイラクからイラン領内に秘密裏に移送された化学兵器工場を襲撃する頃、ロンドンにて大規模な化学兵器テロが発生。
襲撃した研究所は既に遺棄されていたものの、全く手掛かりがなかったワケじゃなく...
次第にテロリスト、化学兵器、そして別の研究所の存在とトライデントチームは追跡を続けて行く。
鳴海 章先生の「スナイパー」シリーズとはまた毛色が違う作品になってますね。
狙撃手の話が読みたいなら鳴海 章、狙撃手を軸にした軍事サスペンスが読みたいならジャック・コグリンがオススメ、かなぁ。
いや、「スナイパー」シリーズもきちんとサスペンスしてますよ? うーん、今度時間があれば読み直そうかな。
さて本題。
1作目は、敵役に元特殊部隊の傭兵が出てきます、こいつがもう悪いのなんのです。 悪運も強い。
腕は申し分なかったのにその凶暴性から特殊部隊を追放され、傭兵へと身をやつしています。
将軍を拉致したチームに属していて、将軍を監禁している間、現地の少女を監禁、強姦して死に至らしめる等、胸をムカムカさせてくれますね。 相方の傭兵もドン引きさせるまさに"悪人"です。
物語後半には増援を貰ったり、国軍と共に主人公を追い回したり、それでも結構悪運が強かったのが印象的。
ただ、活躍はそこまでしないので"何故か印象に残ってる敵役"といった感じ。
やっぱり憎まれっ子は世に憚るんでしょうか。
2作目は題名通り、運命の強敵に主人公が出会うという内容。
とはいっても面と向かって殺しあうのは物語終盤の1回だけ。
基本的には逃げ回りながらテロ計画を実行していくテロリスト"ジューバ"と追う主人公率いる"トライデント"のいたちごっこになります。
"ジューバ"はイギリス人と"ムスリム"(中東のイスラム教徒のこと)としての二つの顔があります。
その二つの顔や、テロリスト組織のバックアップ等を駆使してテロ活動を行っていく"ジューバ"は元はイギリス軍人として最高の訓練と成果を残してきたとあって、女子供だろうが必要であれば容赦無く殺しまくります。
心理的に優位に持ち込めるから、ということで駐留アメリカ軍にモノをねだる子供を狙撃したり。
優位な場所を確保する為に部屋の住民(若い母子)を殺しては、主人公をおびき寄せるためにその子の血で自分の名前書いたり。
ジューバは徹底的に組織や自分の痕跡を辿られないよう徹底し、仲間やテロの実行グループの人間であっても最終的には殺しまくります、それをするのが"スナイパー"だ。と言わんばかり。
ただ、このジューバという人物の評価が登場人物達の中でもバラツキがあるのは、それだけ複雑な内面を持っている(あるいはいた)ということなのでしょう。
主人公との勝負の前にも、ジューバは実力を遺憾無く発揮していくのでタイトル通り、「運命の強敵」という感じでした。
スナイパーが全員こうだ。というワケではないのでしょうが、ジューバの徹底した戦い方、脅威の見せ方、主人公との因縁等、"敵役"としては結構良かったキャラクターだと思います。
なんというか、ただのレビューになってきてる感ある。
すみません...