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ここからはじまる物語  作者: 滝沢美月
第2章 同窓会
14/24

7月25日・・・遭遇



 時計を見ると。

 すでに、零時をまわって、二十五日になっていた。

 家に連絡をしなきゃと思い鞄にしまっていた携帯を開くと、自宅からの着信が何件も……

 私はあわててカラオケルームから出て、電話ができる静かな場所を探した。




 カラオケ店から出て、脇にあった非常階段のそばで家に電話をする。

 お母さんには、遅くまで連絡しなくて、すっごく怒られたけど。もう終電もないし、友達も一緒ということで、お父さんには内緒にしてくれると言った。




 はぁー。

 電話を切って、ため息をついて、非常階段に座り込む。

 今日は、あっ。昨日は、いろんなことがありすぎて……

 なんだか、目眩がするよ……




 ピロロロン。

 両手で握りしめていた携帯がなって、見ると夕貴からの電話だった。


「はい」


 立ちあがって、電話に出る。


『もしもし、譲子? いまどこにいるのー?』


 ガヤガヤと、受話器から夕貴の声以外に歌う声やら笑い声が混じって聞こえて、聞きとりづらかった。


「あっ、今、外で家に電話してたの」


『なんだー。急にいなくなって、なかなか戻ってこないから心配したよー』


「ごめーん、もうちょっとしたら戻るから、心配しないで」


 そう言って、電話を切った。




 再び、非常階段に座って、足の上に肘をついて顔を支える。

 たぬき亭での事を思い出す。

 私、御堂君に好きって言われたんだよね。付き合ってって言われたんだよね。

 なんだか現実感がないな。

 中学の頃、大好きだった御堂君に、告白されちゃったんだよ、私……

 御堂君の真剣な顔を思い出すと、切なくて、涙がでそうだった。

 また、胸がドキドキしてくる。

 どうしたらいいんだろう。

 まさか、告白されるとは思ってもみなくて……

 御堂君の事は、好きだったけど、けど……

 そう。

 もう過去形……なんだよね。

 好きだったけど、二年間話さないで、いまさら付き合うとか考えられないし……

 断る……の?

 



 そう思った時、カラオケ店から出てきた御堂君が、辺りを見回して、私を見た。

 私を見てる……

 ドキン、ドキン。

 御堂君に、じぃーっと見つめられて、鼓動が速くなってきた。

 私はまだ、こんなに御堂君にドキドキするのに、断るの? そんな考えが頭をよぎる。

 御堂君は、私を見つめたまま足を止め、それから、こっちに向かって歩いてきた。優しく笑って、私と少し距離を取って非常階段に座った。

 たったそれだけの行動が、すごく長く感じて、私はその間ドキドキしっぱなしだった。

 ああ、私、まだ御堂君に未練たらたら……

 そう思った。




「桜庭がいない、って三井が大騒ぎしてた」


 くすっと笑って、御堂君が私を見た。


「うん、さっき夕貴から電話があった。ちょっと家に電話してただけなの」


 そう言って、額にかかった髪を耳にかけて、御堂君から目をそらして地面を見た。


「俺も心配した。俺のせいで悩ませてるかと思って……心配した」


 えっ……

 ガバっと顔を上げると、御堂君と目があった。

 二つの瞳の中で、やさしさがきらめいて。その顔があまりにも綺麗で、胸に沁み入って、涙が出そうだった。




「違うの、私は御堂君のことが……」




 そう言った時。




「譲子さん!」




 カンナの声がした。




 見ると、通りの向こうにカンナがいて、道路を走る車をよけながらすごい勢いで駆けてきた。

 はぁ、はぁと呼吸を整えながら、御堂君を見る。何かを強く思い定めたような真剣な表情で。

 しばらく、御堂君を見てから、私の方を見てカンナが言った。


「譲子さん、なんでこいつと?」


「カンナこそ、どうしてここに?」


 突然現れたカンナに、私も疑問に思って聞いてみたのだけど。


「俺の事はどうだっていいんだよ! 昨日もコイツと会ってたのか?」


 ええっ?

 カンナが、とっても怖い形相で聞いてくるから、びっくりしちゃった。




※現在は条例でゲームセンターやカラオケ店の18時以降は16歳未満の立入禁止・22時以降は18歳未満の禁止となっています。


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