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レベル1を35個持ったおっさん、有能すぎて美女三人に包囲される〜レベル10大火力至上主義の世界で裏方が最強だった〜  作者: よっしぃ@書籍化


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第121話:直談判と、先回りした完璧なレポート

「……よし。お前らがなんと言おうと、俺は直接陛下に直談判してくる!」


 ヒロインたちの生温かい視線や、シリルが「閣下、次はこれに全力で魔力を……」と危険な実験を迫ってくるのを振り切り、ヘンドリックは王城へと走った。

 目指すは玉座。この詐欺まがいの侯爵位をなんとしても返上し、自由な平民(あわよくばお行儀見習いからも解放されたい)に戻るためだ。


「陛下! 謁見を急遽お許しいただき、ありがとうございます!」

「おお、ヘンドリック侯爵! よくぞ参った。いや、こちらから出向かねばならぬところであったぞ。ガッハッハ!」


 玉座の間に駆け込んだヘンドリックを迎えたのは、なぜか満面の笑みを浮かべ、上機嫌で玉座をバンバン叩いている国王の姿であった。


「へ? い、いや、陛下。今日は重大な申し出がありまして。以前陛下が仰った『不吉な魔石をばら撒く黒幕を突き止め、脅威を完全に取り除け』という侯爵位の条件ですが……俺、まだ黒幕を捕まえておりません! 故に、条件未達ということで、この身分を平民に返上したく……!」


 ヘンドリックが一気にまくし立てて頭を下げた、その時。

 バサッ、と。国王が分厚い束になった羊皮紙の書類をヘンドリックの目の前に放り投げた。


「何を謙遜しておる。そなたの屋敷に派遣した魔術師ギルドのシリルから、先ほど詳細な『世界樹の根源による魔石無害化レポート』が速達で届いたぞ!」

「……は?」


「見事である! 迷宮の最奥から世界樹の根源を持ち帰り、それを王都のど真ん中で起動させることで、王都全域の瘴気を浄化する巨大な聖域を展開するとは! 現に今朝から、闇商人のばら撒いた魔石はすべてただの石ころと化し、暴走事件はゼロになったという報告が上がっておる!」

「えっ、あ、いや、あれはたまたま俺の魔力が吸われて……」


「戦わずして、血を流さずして、国最大の脅威を完全に封じ込めるとは! 黒幕を捕らえるより遥かに効率的かつ完璧な手腕! さすがは我が国が誇る最強の便利屋……いや、侯爵よ!」

 国王は玉座から立ち上がり、感動で目を潤ませながらヘンドリックの肩をガシッと掴んだ。


「この功績、侯爵位程度では到底釣り合わん。どうじゃ、新たに創設する『王都防衛最高責任者』のポストに就く気はないか? 権限は近衛騎士団長と同等じゃ!」

「い、いやぁぁぁっ! 責任が重くなるのは嫌だぁぁぁっ!!」


 玉座の間に、最強の便利屋の悲痛な絶叫が響き渡った。


 ◇ ◇ ◇


 その日の夕方。

 王都の屋敷の広間では、ソファーで真っ白に燃え尽きているヘンドリックの姿があった。

 その横では、シリルが「やはり私の見立て通りでしたね。さあ閣下、次は王都防衛のための魔力供給ルートの確立を……」と分厚い書類を突きつけている。


 部屋の隅。

「……なぁロッテ。おっさん、自分で平民に戻ろうと動いた結果、見事に自爆して責任者のポストまで押し付けられそうになってるな」

「ええ、ブラム君。あれだけ派手に動けば、国が放っておくわけがありません。シリルさんの完璧なレポートが、完全に旦那様の逃げ道を塞ぎましたね」


 ブラムの言葉に、ロッテは出された紅茶を優雅に啜りながら、生温かい目で頷いた。


「にしても、あの新入りのシリル。最初はあんなに堅物だったのに、すっかり『おっさんのデタラメを最大限利用する』方向にシフトしてないか?」

「ふふっ。優秀な魔術師ほど、旦那様の規格外な魔法の虜になってしまうんですよ。ある意味、彼もすでに旦那様の『被害者』であり『共犯者』ですね」


 絶対に出世したくないおっさんと、それを絶対に許さない国とヒロインたち(+優秀すぎる補佐官)。

 ヘンドリックの引退への道は、ますます遠のいていくのであった。

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