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終わるトキ  作者: 天原 重音
リア編

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出立準備

 コリフェーオ達三人が去った翌日からの日々は大変だった。

 スウィフト大尉は『行かないでくれ』と泣き付いて来るし、『引継ぎは必要無いが、これだけ終わらせたら行って良し』と、ヒース大佐から書類の山脈を十個も割り振られた。

 フルード大尉は透き通った顔で『頑張れ』としか言わない。

 マジで混沌とした日々と化した。

 書類の山脈は一年掛けて全部終わらせたけど、追加が『第五弾』まで発生したので、完全に終わらせるまでに合計で六年も掛かったわ。

 出立を決めた日から書類仕事だけで、六年以上もこの職場にいた計算になる。

 


 仕事に関して心残りは無くなった。引継ぎが不要って素晴らしい。

 けれども、いざ出立する為の準備を始めようとした段階で、長らく自分に接触して来なかった上層部から依頼を受ける事になった。

 簡単に言うと、『実用性の高い刻印機を幾つか作れ』と言うものだ。簡単なようで難しい内容の依頼だ。

 パワードスーツと眼精疲労対策のアイマスク以外にも作れと言う命令そのものだが、何を作れば良いのか分からない。

 思い付くものを片っ端から作った。

 地球で言うところの家電製品がメインになったが、他に思い付かなかった。家電だったので却下されたよ。

 他に思い付かなかったので、ヒース大佐とフルード大尉の二人に、自分が過去に作った習作の魔法具を見せた。魔法具をそのまま刻印機として作り直すのではなく、習作の中から機能を取捨選択したものを、新しい刻印機として作り直す事にした。

 ヒース大佐とフルード大尉は、多機能サングラスと多機能伸縮式特殊警棒に携行濾過器の三つを選んだ。


 多機能サングラス(四角型)は、『とあるラノベのウェブサイト版』に登場するものを参考に、多種多様な機能を詰め込んだ一品だ。

 十キロ先の豆粒の種類が見分けられる精度を誇る望遠カメラ。この望遠カメラと併用可能なサーモグラフィーと暗視機能、レンズに映った光景の録画機能の三つの他に、念話を可能とする。

 緊急時には、サングラスが光り輝いて敵の目潰しを行い、更には両のレンズからビーム(最大射程一キロ。勿論、片方ずつからも可能)が放てる!

 披露した時のパーティメンバー九人の反応は……慈愛に満ちた顔で『頑張り過ぎだ。ちょっと休め』と言われたっけ。夜に一人でコッソリと泣いたわ。

 

 多機能伸縮式特殊警棒は、その名の通り伸縮式特殊警棒に幾つかの機能を詰め込んだものだ。

 普段は短くして携帯(全長約三十センチ程度)し、必要ならば最大一メートルにまで伸びる伸縮式の警棒として使用出来る。

 ここまでは、地球にも存在するような伸縮式特殊警棒と同じだ。刻印機の候補に挙げるようなものではないし、何ならこの世界にも実在している。

 ヒース大佐とフルード大尉が着目した点は『ラ〇トセイバー』モードだ。長さが変えられるし、白く光るよ。

 緊急時には分厚い鉄の板を切り裂き、穿つ逸品だ。ラ〇トセイバーとして扱わなくも、緊急時の白色ライト代わりに使用出来る。電気を使用していないので、水中や海中でも使用可能だ。

 また、熱を放出しないので使用する場所を選ばない。

 披露した時、パーティメンバーのペドロ以外の八人はス〇ー〇ォーズをして遊んでいた。


 携行濾過器は文字通りのものだ。

 汚水や海水を始めとした『液体』を、浄化あるいは水分だけを分離させて、短時間で真水を作り出すだけのものだ。掛かる時間は最大で十分程度だ。

 液体の種類を問わない点が大変受けた。放射能に汚染された水をただの真水に変える事が出来たので、かなりの好印象を受けたらしい。しかも、分離させた不要な部分は、可燃性な無害な塵に分解可能だ。

 欠点は一度に三リットル以上の真水を作る事が出来ない事と、仕切りの定期的な掃除だ。

 ちなみに携行濾過器の見た目は、真ん中に仕切りが付いた『蓋付きのバケツ』だ。


 サングラスの方は念話と目潰しとビームの三種類を除いて、伸縮式特殊警棒はそのままの性能で、それぞれ刻印機として作り直した。

 携行濾過器は大きさと形を変えて二種類作った。

 見た目をウォーターサーバーみたいな感じに作り直して、一度に作れる真水の量を最大十リットルに増やした大容量型と、その半分の大きさの小型の二種類だ。仕切りの掃除は定期点検のついでに行えば良い事になった。

 再提出の結果は、見事に合格を貰ったよ。

 ただ、サングラスの方は骨伝導式の通信機を後付け出来るようにしたいと、希望を貰ったので、ちょっとだけ作り直した。

 サングラスと伸縮式特殊警棒の二つはとある部隊に試験的に提供したところ、高評価を頂いた。

 携行濾過器は『船に乗る職種』の方から『水不足対策になる』と評価を受けた。

 既存の濾過機(数十リットル単位で真水を作る大型しか存在しなかった)は半日の時間を要するだけでなく、大型船舶でも搭載を躊躇する大きさと重さだった。

 故に、携行濾過器は船乗りを始めとした職種の方から大変好評だった。

 その後、この三つは他の州から販売要求を受ける事になったのだが、それは自分がこの世界から去ったあとの事である。詳細は知らない。

 


 さて、やり残しは全て終わった。

 自分は出立の準備を始めた。

 準備と言っても、衣類の買い足し、当面の間の食料と飲料水や必需品の購入、日持ちする携行食を作るなどである。日持ちする携行食は色々作った。

 激務で給料を使う機会が少なかった事もあり、盛大に使ったわ。

 これらの他に、支給品の返却、寮部屋の退去などを済ませた。

 あれこれと色々やっていたら、コリフェーオ達と別れてから七年近い時間が過ぎていた。

 気づけば、自分は三十歳手前の年齢になっていた。時間の経過は早いな。



 出立の前夜。

 寮でお別れ会が行われた。

 結局、ヒース大佐とフルード大尉、スウィフト大尉の三人以外の同僚と会う機会は無かった。

 自分が抜ける穴は、ヒース大佐が上層部と交渉して三人も回して貰える事になった。新人三名は来週からの配属になるそうだ。

 翌朝。ヒース大佐とフルード大尉に見守られる中、自分はコリフェーオから渡された魔石を起動させた。

 もう二度と会えない。

 それでも、色々と知る為には行くしかない。真実が重くても、知らねば何も始まらない。

 自分は二人に頭を下げてから、魔石が作り出したゲートを通り、この世界から去った。


分けた方が良さそうに感じたので分けたら、ちょっと短かくなりました。

何気にこれまでの謎や疑問が解消される話が多かったので、分ける事にしました。

次回、緑の中の緑と呼ばれているあの人が登場します。


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