1/4
第一話 : 洗濯機の中から出てきたもの
主人が帰ってきた。
リュックから仕事着を取り出し、そのまま洗濯機に放り込む。
慎重に洗剤を量って、静かに流し入れる。
少し間を置いてから、スイッチを押した。
仕事着の洗濯は、いつの間にか主人の役目になっている。
主人の肩越しに、洗濯機の中を覗き込む。
「洗濯機の音、どう? 違和感ある?」
回り始めた途端、ガラガラと妙な音がした。
何か、硬いものがぶつかっているような音。
しばらくして、
中から勢いよく何かが弾き出された。
思わず目を凝らす。
それは、緑色にかすかに光っていた。
虫のように、見えた。
それは、小さく蠢いている。
気がつくと、私の方へ少しずつ近づいていた。
思わず、後ずさる。
主人はまだ、洗濯機の中を覗き込んでいる。
何も気づいていない。
足がむずむずする。
逃げようにも、主人と洗濯機に挟まれて動けない。
「やめて……来ないで……」
主人はそれを指でつまむと、何でもないようにトイレへ流した。
「なんやこれ、ただのカナブンやん」
「……だって、虫嫌いやもん」




