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転生魔導師奇譚  作者: Hardly working
第一章
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Vol:7 転生魔導師と山賊

 村の手前まで来た。既に若干暗くなり始めている。完全に日が沈んでから戦うという手もあるが、何を巻き込むか分からないのでやめておこう。


 こちらに送った数人で足りると思ったのだろうか、こちら側にはあまり見張りがいないようだ。とはいえ…

 私は近くの茂みに身を潜めた。

 バレたらヤバいのは変わりないからね。


 真ん中あたりに人集りが見える。どうやら奴らは村人を村の中心に集めているようだ。

 それほど大きな村じゃないからな。制圧は簡単だったろう。

 目立った争いはなかったのだろうか。死体などがあるようには見えない。とりあえずは安心してもよさそうだ。


 観察を続けると、こちらでも同じ要求が出されていた。子供である。

 奴隷目的なのは確実だろう、子供は高く売れる。

 しかしその分かなり怪しまれる。人族なんてなおさらだ。

 こんな方法じゃ足がつきやすいだろう。やり方も雑な上に計画も雑となると、何かありそうだな。


 その時、襲撃者の一人が動いた。一人の男に耳打ちしているようだが、全く聞こえない。あいつがこの集団の頭目か?

 二言三言交わした後に、耳打ちしていた方のやつが何人か連れてこっちに来た。


 しまった、いつまで経っても戻ってこないって話だったのかな?

 とにかく教会に行かれるわけにはいかないので、私は出ることにした。


「ごきげんよう…。」


 茂みからごそごそと出ると、教会へ向かおうとしていた奴らが目を丸くした。

 まあそら唐突に茂みから女の子が這い出てきたらびっくりするよね。


「何だこのガキ…?」

「取りこぼしじゃねぇか?おい、頭の所へ連れて行け。俺は教会に行く。」


 私の隣を抜けて歩みを進め始めた。さすがに全員で頭目の所に行くほど馬鹿ではないか…。


「教会には行かせませんよ。」

「何?うぉっ!」


 即座に私を中心として暴風を起こして吹き飛ばす。


「おい何やってんだ!」


 さすがに頭目もこちらに気付いた。

 さて、思い切って出てみたが、住民に被害無く、かつ敵側にも死者無しで制圧する方法を思いつかん。

 敵を生け捕りにすることにこだわるのは、殺したところで何になるわけでもないからだ。

 むしろ死体の処理に困ったりするので、殺しは極力無し。

 呪いでも埋め込んで労働してもらうのも手だな?


 ただ殺しが無いとなると、使える魔法が基本風か土(石)だ。それでも当たり処が悪ければ死んでしまうだろうが、そこはそれ。普段鍛えているだろうし、運が悪かったと考えるしかない。当てるところには一応配慮してる。さっき石に後頭部を強打してる人いたけど、たぶん大丈夫。うん。


 何か良い手は無いだろうか…?


 その時、ふと思いついた。

 お湯ってどうだろう。


 お湯といっても沸騰させるわけではなく、ちょっと熱めのお湯である。真冬でも使うのを憚るかもというぐらいのお湯。


 そんなものを着衣状態でぶっかけられたら地獄だろうね、あはははは。


 幸いにもお湯を作ったことは何度もあるため、湯加減は自在。冬に水で身体洗うとか普通に考えて無理だもんね。まあお湯は用意してもらえるけど、流石に冷めてしまうので温め直したりしていたのだ。


 もはや拷問に近いが、コレで行こう。


 まずは手近なさっき吹っ飛ばしたうちの一人にお湯をかけた。


「ざばー。」

「ぎゃあああああああああああああ!!!!!!!!熱い熱い熱い熱い!!!!!!」


 効果覿面だ。複数回に分けてかけたところ、男は身につけたものを取ろうと必死になったが慌てた状態では鎧を脱ぐことも叶わず、のたうち回って動かなくなった。


 肩で息をしている。


 なんかコレ楽しいかもしれない。


「あいつ、今何をした!?」

「わからねぇ…液体をかけた途端苦しみ始めたぞ…。」

「まさか毒か…!?」


 お湯です。


 周りにいる奴はおろか、頭目まで怯んだようだ。

 私は満面の笑みで、彼らに問いかけた。


「さぁ、次はどなたですか?」


 そこからはもう酷いものだった。

 頭目の命令で一斉に襲いかかってきた襲撃者たちに熱湯を浴びせかける。


 戦闘中に少し村人にもかかってしまったようだが、まあ水だし問題ないでしょ。


 襲撃者達はかけられた端から芋虫のようにのたうち回り、助けてくれ、身体が焼ける、と口々に喚き倒れる。

 大袈裟な。焼けるわけないでしょ、お湯だよコレ。

 そんなこんなで10分もしないうちに死屍累々と言ったところで、残すは頭目だけとなった。


「あ、ありえねぇ…どうしてガキがこんな魔法を…。」

「降伏しますか?」


 右手に球状のお湯を構える。

 頭目の構える剣がブレた。それでも降伏しないのは子供に負けるというのが気に食わないからだろうか?


「降伏しないならお湯の温度上げますね~。」


 温度を思いっきり上げると右手のお湯がボコボコと音を立てて沸き始める。

 これはやけどする温度ですね。


「ふざけんなクソガキ!沸騰してるじゃねぇか!!!!!!」

「えぇ、ですから降伏しないと大変なことになりますよ。」

「こっちには人質もいるんだぞ!!」

「御心配には及びません。あとで治療魔術を使って治せますので。」

「お前には人の心がねぇのか!!!!」


 子供をさらって奴隷にしようとしていた奴らに人道を問われる系女児。


 こっちは死者が出ないように頑張ってるんだが!


「仕方ありませんね。では貴方は一息に片付けましょう。」

「何だと…うおっ!」


 私は手元のお湯を消すと、急速に練り上げた魔力を使って相手の足を岩で固定した。

 もがいているが、それなりに硬くしたので脱出は難しいようだ。


「クソ!来るな!やめろ!」

「投降しなかったのがいけないんですよお?私は促しましたよねえ?」


 わざとらしい言い方で相手を追い込みつつ、身体を徐々に岩で巻きつけて頭の位置を固定する。

 私は顔の前に氷の槍を生成した。相手も今から何が起こるか分かったのだろう、青ざめた顔で必死にもがいて抵抗している。しかし全身に巻き付いた岩が壊れるわけもなく、いたずらに消耗するだけだった。


「まっ…待ってくれ!俺が悪かった!コイツらはちゃんと解放する!もう2度とこの村には来ない!」

「遅過ぎましたね。」


 私はその言葉と共に、氷の槍を射出した。




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