第36話:アッパレ豹馬、輝く下剋上日本一!
延長12回裏、埼玉ジャガース最後の攻撃。超満員に膨れ上がったベルーナドームのボルテージは極限にまで達していた。下剋上日本一をかけた決戦のクライマックスに、誰もが息を呑む劇的なドラマが待っていた。
この回の先頭打者、1番・猿飛英恵が左打席に入ると、鋭い一閃! 白球は一塁線を痛烈に破り、英恵は忍者のごとく俊足を爆発させて三塁へ滑り込む。見事なスリーベースヒットで、無死三塁という千載一遇のサヨナラチャンスを作り出した。
続く2番・滝川夏央は内野凡打に倒れ、1死三塁。ここで満を持して打席に向かうのは「3番・投手」銭形豹馬!
カーズの守備陣がマウンドに集まり、1塁側ベンチからも投手コーチが駆けつける。ここで打席の豹馬と真っ向勝負するか、あるいは続く本塁打王・ロイまで歩かせて満塁策をとるか――。大議論の末、マウンド上の平松陽星は敢えて敬遠を拒否し、ライバル・豹馬との勝負を選んだ。
(銭形君、君とロイさんを抑えて明日に繋げてみせるぞ!)
平松が心の中で気迫を滾らせれば、バッターボックスの豹馬も鋭い眼差しで睨み返す。
(平松、抑えられるものなら抑えてみろ! ここで勝負は頂くぜ!)
春のドリームチャンピオンシリーズの激闘を彷彿とさせる、本当のエース対決が始まった。
平松は初球、外角低めのストレートで1ストライク。2球目、内角低めのストレートで2ストライクと追い込む。3球目、外角への高速スライダーを豹馬がファウルで粘り、4球目、得意のカミソリシュートが高めにのけぞるボールとなって1ボール。5球目、外角ストレートも豹馬が食らいついてファウル。
カウント1-2。極限の緊張感の中、豹馬は平松の伝家の宝刀・カミソリシュート一本に狙いを絞る。
そして運命の6球目――。平松が投じたカミソリシュートがわずかに甘く入った瞬間、豹馬のバットが一閃!
放たれた鋭いライナーはショートの右を鮮やかに破り、センター前へと転がる! 三塁走者の英恵が生還してサヨナラ勝ち!
「行ったぁぁぁーーッ! 銭形豹馬、春のドリームチャンピオンシリーズの再現! 自らのバットで見事にサヨナラタイムリーを放ちました!『4x-3』! この下剋上決戦は埼玉ジャガースに凱歌が上がり、見事に19年ぶり14回目の日本一を達成しました!!」
実況アナウンサーが絶叫し、歓喜に沸くベルーナドーム!
解説席の松江嘉寿夫、松永大輔両氏も大興奮。ゲスト解説を務めた達摩厳は「豹馬よっ、ホンマに見事や! 平松もようがんばった! 2人にアッパレをあげよう!」と大絶賛。弟の達摩豪も「兄貴の言う通り、やっぱりあのドリームチャンピオンシリーズの再現を喜んで見させてもろうたで!」と兄弟揃って惜しみない拍手を送った。
西方文哉監督の歓喜の胴上げが終わり、超満員のファンの前で行われた優勝監督インタビュー。
「確かにこの日本シリーズまでは非常に厳しい戦いでしたが、この下剋上日本一は選手全員が一生懸命にがんばったことと、ファンの皆さんからの熱いご声援があったからこそです! 本当にありがとうございました!」
そして、文句なしで今シリーズの【MVP】に輝いた銭形豹馬がお立ち台へ上る。
「あの頃以上に体はもうバキバキでしたが、監督をはじめとするメンバーたちやファンの皆さんからの熱いエールがあったからこそ、精いっぱいがんばって投げて打つことができました。相手の平松もよくがんばったと思います。あいつのことも褒めてあげて下さい! 日本一、もう最高です! ジャガースファンの皆さん、本当にありがとうございました!」
【表彰一覧】
[MVP]銭形豹馬(埼玉ジャガース)
[敢闘賞]平松陽星(広島東邦カーズ)
[優秀選手賞]ロイ(埼玉ジャガース)、猿飛英恵(埼玉ジャガース)、エレフリス・モントラ(広島東邦カーズ)
その頃、テレビ前で勝利の瞬間を見届けた家族たちも歓喜に包まれていた。
銭形家では、母・恵子が胸を熱くする。
「さすがは豹馬、よくがんばったわね! やっぱり自慢の息子だわ! もちろん、はなちゃんも朗威君もよくがんばったわ! ありがとう!」
祖父・平五郎も笑みを浮かべる。
「恵子さんの言う通り、俺は野球に興味がないが、さすがは自慢の孫だ!」
祖母・桜子も「豹馬もケガひとつなくがんばってくれて本当に良かった」と安堵の表情を見せた。
猿飛家では、叔父・佐吉郎が力強く拳を握る。
「豹馬よっ、あの時の修行が役に立ったなっ! 心からおめでとう! 英恵も朗威もよくがんばった! ありがとう! そして日本一おめでとう!」
叔母・恭子も「やっぱり豹馬君、自慢の甥だわっ! もちろん英恵も自慢の娘だし、朗威君も素晴らしい甥ねっ!」と笑顔を弾けさせた。
林崎家では、祖父・甚内が髭を撫でる。
「さすがはわしの自慢の孫たちじゃ! 日本一おめでとう!」
伯母・愛子も「朗威も豹馬も、あの時の修行が活かされたような気がしますわね、お父様!」と頷き合った。
さらに東京の某警察署。夜勤の合間にテレビで観戦していた兄・銭形龍馬も、静かに力強い笑みを浮かべた。
「豹馬よっ、お前はやっぱり自慢の弟だ! 日本一おめでとう!」
激闘の日本シリーズが幕を閉じた11月中旬。球界の強豪が一堂に会する「プレミア12」が開幕。
荒武者ジャパンには、銭形豹馬、猿飛英恵、ロイの従兄妹トリオをはじめ、ライバルの達摩兄弟、伊達鷲一郎、金脇総司、そして平松陽星といった球界を代表する猛者たちが集結した。
チームは圧倒的な絆と実力で全試合負けなしの完全優勝を成し遂げ、2028年ロサンゼルス五輪への出場権をも堂々と獲得してみせたのだった!




