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07-02 良否

斜陽街一番街。

酒屋はいつものように営業している。

酒屋の主人は、へんてこな関西弁を使う男で、

弟子が一人いる。

弟子は最近少しずつ酒を作る腕を磨いており、

酒屋の主人は、そんな弟子の成長を見守っている。


酒を作る方法。

斜陽街ではよく知れ渡っているが、

場所に残った思いを、酒瓶にくゆらせて酒にするのだ。

血筋なのか技術なのかはわからないが、

斜陽街以外で聞かないところからすると、

ちょっと変わった能力ではあるらしい。


今日は弟子がどこかへ酒作りに出かけている。

扉屋に行けば大抵どこかとはつながっている。

あとは良質の酒が作れそうな場所の予感。

それさえあれば失敗はしないし、

もう、弟子は半人前以上には成長しているかと、

酒屋の主人は思う。


店の前を軽く掃除。

並べられている酒瓶を掃除。

すっきりしたところで、水を飲むように酒を飲む。

売り物ではないが、

貴重というわけでもない。

それこそ水のようにあふれる思いから作られた酒。


「ただいまー」

弟子が重たそうに風呂敷を担いで帰ってくる。

「おう、帰ったか」

「はい、いっぱい作ってきました」

「数こなすのもええけどな、質もよくないとあかんで」

「わかってますけど、とにかく夢中で」

「まぁええわ。どれからいく?」

「ええと…」

弟子は風呂敷包みを下ろし、

酒瓶を並べだす。

多いもの少ないものいろいろな色。

どれも酒屋の主人に成果を見てもらうための、

良否を判断してもらうための、

弟子の全力投球なのだろう。


酒屋の主人は思う。

この弟子は隠し事ができないし、

とても素直だと。

だから、きっと、

弟子自身が感じるもの以上の味を、いずれ作り出せるような、

そんな成長をする。そんな気がする。


酒屋の主人は、一口、弟子の作品を飲んだ。

夢心地のような、それを覚まさせるような、

不思議な味がした。

「悪くないな」

酒屋の主人は素直にそう言った。

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