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06-63 睡眠

どこかの扉の向こう。

政府軍とゲリラが、熱帯雨林で戦っていた。

戦争だ。

内戦とも言うのかもしれないし、

クーデターとも言うのかもしれない。


一介の兵士は、そんなことはわからなかった。

名前を仮にジョンとする。


ジョンは休んでも眠れなかった。

過酷な移動、過酷な戦闘、

重い荷物、そして、張り詰めっぱなしの神経。

全てがジョンから睡眠を奪っていた。

眠っては悪夢にうなされた。

悪夢の種類なんて覚えていない。

それほど多くの悪夢にうなされたような気がする。


ジョンは休憩地点で眠った。

引き裂かれる夢を見た。

自分の身体が剣で断たれる夢だ。

きれいなほどに真っ二つに。

ジョンは汗だくになって目が覚める。

(くそったれ)

心で悪態をつく。

今まで殺してきたゲリラが悪夢を見せている気がする。

今度はジョンを殺そうというのか。

ジョンはゲリラの顔なんて覚えていない。

みんなもやもやとしている。

そいつらが、よってたかって悪夢を見せている。

ジョンはそんな気がした。


ここは戦場だ。

奇襲だってありうる。

常に神経を張り詰めたままで、

上はそう言う。

下っ端のジョンがどんなにくそったれを連呼しても届かない場所から。

ゲリラは夢を奪いやがる。

上は安眠を奪いやがる。

みんなくそだ、くそったれだ。

ジョンは心で悪態をつく。


もし、今安らかに眠れたら。

何も心配せずに眠れたら。

それは悪い冗談だとジョンは思う。

それは死んでしまうことに繋がることだと、ジョンはわかっている。

職業軍人ではないはずだった。

でも、いま、自分が平和なときに何をするべきか、ぜんぜんわからない。

心底から、兵士になってしまったんだろうと思う。

くそったれ、くそったれ、

ジョンは心で何度も悪態をつく。

俺は悪くない、みんな悪い、くそったれ!


ジョンは口の中が塩辛いことに気がついた。

顔をぬぐう。

それは涙だった。

ジョンは知らないうちに泣いていた。

くそったれ。

ジョンは悪態をつく。

俺を殺そうとするゲリラも、

上から命令だけするやつも、

死んじまった戦友も、

記憶に全然ない平和ってやつも、

それから、夢の中で俺を殺したやつも、

みんなみんなまとめてくそったれ。

ジョンは顔を覆う。

泣いていることを悟られたくなかった。

誰もが黙っている。


その夜、ジョンは久しぶりに眠った。

夢を見ているのかは知らないが、

安らかな寝顔だった。

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