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06-50 泥酔

斜陽街一番街、バー。

ヤケを起こした探偵が、果てなく酒を飲んでいた。

その場に居合わせた合成屋はおろおろしている。

「どうしましょう」

何度目になるかわからないどうしましょうを、

夜羽は笑って受け流す。

「つぶれたらそれでいいさ」

「でも…」

「探偵なら大丈夫だって」

「うー…」

合成屋は納得しない。

心配なのかもしれない。


やがて、探偵はカウンターで突っ伏す。

しばらく間があり、

合成屋は恐る恐る義手で探偵の頭をつつく。

反応はない。

「夜羽さん、大変ですよ」

「寝てるだけだよ」

「明らかに飲みすぎてたじゃないですか」

「探偵なら大丈夫だって」

「飲みすぎて死んでたらどうしましょう」

「あ、そうか、温度はわかりにくいんだっけ」

合成屋はこくこくとうなずく。

合成屋の義手では、細かい温度がわかりにくいのだろう。

「うーん」

探偵が顔の向きを変える。

噛み付くような険しさがなくなり、穏やかに眠っている。

「こんな感じだし、大丈夫だよ」

合成屋もようやくうなずいた。

「とりあえず自棄酒でつぶれているだけなんですね」

「そういうこと」

「探偵さんなら大丈夫なんですね」

「そういうこと」

「すっごく心配でした」

夜羽は口の端で笑った。

「合成屋さんは優しいからね」

合成屋はおろおろする。

優しいと言われ慣れていないのかもしれない。


少し間があり、

有線放送がゆっくりと店内に流れる。

合成屋が何か話題をふろうとしたそのとき、

がばりと探偵が起き上がる。

「マスター、水」

探偵は短くそういう。

噛み付くような自棄酒の気配はどこにもない。

バーのマスターが水を出してくれる。

探偵は一気にそれを飲む。

タンっと、カウンターにコップを軽く叩きつける。

そうして3秒探偵は考える。

「あのー…」

合成屋が何か言いかける。

「誰か来る」

「はい?」

「勘だ、誰か俺のところに来る」

「それで起きたんですか?」

合成屋の問いに、探偵はうなずく。

酔いのかけらはどこにもない。

凛々しくきりりとした探偵の目がある。

いつもの探偵だ。

多分、もう、仕事モードなのだ。


探偵は酒の代金を払うと、

斜陽街に出て行った。

その足取りに危なっかしいところは、どこにもない。

合成屋が見送ってつぶやく。

「大丈夫だったんですね」

「そういうこと」

夜羽が答える。

そんなバーの風景だ。

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