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村へ行くなら地下迷路をどうぞ  作者: 月 影丸
第1章 はじまり
22/200

17話 初出勤日

4の月18日目。

曇り空が広がる早朝。コードは着替えを済ませるとダイニングへ向かった。

時刻は6時半頃。ダイニングにはまだ誰も来ていなかった。

『おはよう、コードさん。今日から学校ね!』

コードは突然の声に体を強張らせた。が、それがマチルダのものだと知るとふうっと息を吐いた。彼女はキッチンで朝食の準備をしていたようだった。彼女はパンとサラダとトマトのスープを用意すると手際よくテーブルに並べていく。

『マチルダさん、おはようございます。朝早くからありがとうございます』

コードはマチルダにお礼を言った。

『いいのよ。今は貴方も家族のようなものよ。あとでティオとライナがお世話になるわね』


コードは村長の紹介で学校の中等部でイズール語を教えることになったのだ。村唯一の学校には村の子供たち全員が通い卒業していく。6歳から12歳までが初等部、15歳までが中等部、18歳までが高等部となっている。中等部には現在15人が在籍しているらしい。ここまでがヘルムート村長からの情報である。

『本職の先生のサポートですけどね。仕事を紹介してもらえて助かりました。これでここにお金を入れられます』

『そんなこと気にしなくていいのに。うちは野菜はほぼ自給自足だし肉と魚は村からの配給分で足りているしね』

マチルダ曰く村の食料品はほとんどが配給チケット制らしい。贅沢品や配給で足りない分は自費で購入するとのことである。

『いやいや、こういうことはしっかりしておかないとダメなんです』

『律儀ねぇ。じゃあお言葉に甘えさせていただくわ』

マチルダはありがとね、と付け加えた。



コードは食事前の祈りを済ませるとスープに手を付けた。

その動作は美しく優雅であった。

マチルダはそれを斜め前の席から眺めていた。

『ほんと、貴方達は食べ方がキレイね。まるで貴族様みたい』

マチルダのさり気ない呟きにコードがむせた。スープが気管に入ったようで苦しそうに咳き込んでいる。


『大丈夫?!』

『すみません!ゲホッ』

コードはマチルダから手巾を受け取り口を押さえた。

『ごめんなさいね、余計な詮索はされたくないわよね』

『いいえ!アベルが退院して落ち着いたらお話しますので』

コードの言葉に、マチルダはありがとうと言うと、水を持ってくるためにキッチンへ戻った。




キッチン裏で、マチルダが複雑な表情を浮かべていたことを、コードが知る由もなかった。




コードが朝食を食べ終わる頃、ライナとティオがダイニングに顔を出した。キッチンにいる母親に挨拶を済ませると、二人は席についた。

『おはようございます、コードさん。学校でもよろしくお願いします!』

『おはようございます』

ライナとティオがコードに挨拶した。

『ライナ、ティオくん、おはよう。なんか不思議な感じだね』

コードは琥珀色の瞳を細めた。


『はい』

えへへ、とライナが笑う。

「ねぇ、お兄ちゃん、顔怖いよ?」

ムスッとしているティオにライナが声をかけた。

「お前ら仲いいよな」

「ティオだってアベルと仲良しじゃん」

「確かにそうか」

ティオは少し納得したようで目つきが穏やかになる。

『ライナ、ティオくんはなんだって?』

『いえ、気にしないでください。兄はアホなだけですので』

『アホっていうんじゃない。さ、飯にするぞ!』

こうして二人は食卓についた。



『じゃあ後でね。マチルダさん、行ってきます』

コードは二人とマチルダに声をかけると、支度をしてイーリス家を出た。





◇◆◇


学校の敷地には2階建てのレンガ造りの大きな建物が3つ連なっており、少し開いたコの字のように配置されていた。真ん中の部分が大きな広場になっている。在籍人数の割には敷地が広い。 


コードは中央の建物の中にある職員室に向かった。ドアをノックし中に入ると、10人ほどの職員がいた。


『おはようございます。初めまして、今日からしばらくお世話になります、コードです。よろしくお願いします』

コードは頭を下げて挨拶した。

『おー、若い兄ちゃんが来てくれて助かったよ!俺はロドルフ・ヴァルト、ここの校長だ。よろしくな!』

白髪に白いひげを蓄えた大柄な老人がコードに声をかけた。白い肌にピンクがかった頬、灰がかった金色の瞳が特徴的である。

『なんかあったら俺か、中等部ならカイ先生を頼ってくれ。イズール語とリズニア語両方喋れるから。他の職員はそれぞれの言葉以外はちょっと片言だったり厳しいからな。こどもたちはすげぇよ、いろんなことをどんどん吸収してくれる』


"村のみんなが両方話せるわけではないのか。ん、カイ先生?まさかな"

心臓が高鳴った。有り得ないとはわかっていても、期待せずにはいられなかった。名前が同じ人はたくさんいるけれど、それでも、その人だったらどんなに嬉しいかと考えてしまっていた。


『お、いたいた!カイ先生ー、サポートで来たコードさんだ。こっちで顔合わせしてくれー!』

ロドルフが部屋の奥で書物を整理していた眼鏡をかけた中年の男に声をかけた。

『コード?コードだって?!』

赤毛のくせ毛に金色の瞳を持つ中年の男は、そういうと二人の方に足早に近づいてきた。



コードは目を瞠った。


その髪色が、その瞳が、その声が、まさにその人と一致していたのだから。



『せ、先生?!?!』

『コード?!なんでここに?!』

二人は同時に大声をあげた。



その声に職員室は一瞬静まり返った。




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