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第3話 切り裂く悲鳴の霧崎

現在の生存者

涼・怜華・?・?・?

?・?・?・?・?


 暗い教室に、突然、悲鳴が突き刺さった。


男性「うわああああああっ!!」


 上の方——おそらく二階の廊下か階段から、男の声が裂けるように響いた。


 それはただの叫びではない。

 喉が引き裂かれるような、純度100%の恐怖だけを凝縮した悲鳴だった。


 悲鳴が校舎の古い壁に反響し、天井の割れた蛍光灯が一瞬、ビクンと震えた。


 2人の体が、反射的に硬直する。


 涼はドアの前に置いた机に片手をかけたまま、息を殺して天井を見上げた。


涼「……誰か、動いたな。」


 怜華は、床に座ったまま全身を小刻みに震わせていた。

 その声に、聞き覚えがあった。


 同じ聖条院学園1年3組の——霧崎(きりさき) 竜星(りゅうせい)

 いつも体育の授業で、球技や水泳などで情けない悲鳴を上げては

 クラスメイトに笑われていた、あの霧崎。


 でも、今の声は違う。


 普段の「ほわぁあぁーっ!」みたいな

 照れくさそうな弱音とはまるで別物だった。


 これは、死を目前にした人間の本気の、魂ごと絞り出すような絶叫だった。


 怜華の顔から、血の気が完全に引いた。

 唇が震え、喉が何度も上下するが、やはり声は出ない。


 ただ、両手で自分の胸を押さえ、目を見開いたまま涼の横顔を必死に窺った。


 カツン……カツン……カツン……


 足音が、階段を降りてくる。

 一歩一歩、乱れながらも確実に近づいてくる。


 スリッパか靴の底が、埃っぽい床を擦る音。

 時折、誰かが壁にぶつかるようなドンという響きも混じる。


 霧崎だ。


 間違いない。彼は上から逃げてきた——いや、逃げている最中だ。


 涼は無言で怜華の肩に軽く触れた。

 触れるというより、指先で「動くな」と合図するだけの

 そっとした動作だった。


 怜華はビクッと肩をすくめたが、すぐに小さく頷いた。

 彼女の瞳には、恐怖と同時に「霧崎くん……どうして……」という

 動揺が浮かんでいた。足音は一階の廊下に出た。


 教室のドアのすぐ外、十数メートル先を、息を荒げながら通り過ぎていく気配。


霧崎「はッ…はぁ……あぁッ…!」


 荒い息遣いが、ドアの隙間から微かに聞こえてくる。


 霧崎は走っている。


 どこへ向かうのか、わからない。

 ただ、必死に「何か」から逃げている。


 そして——


 ドンッ!


 近くの別の教室のドアが、勢いよく開けられる音がした。

 誰かが叫ぶ声も、重なって聞こえた。


男性「誰だ!?お前、誰なんだよ!?」


 別の生存者の声だ。低い声色のようで、男性の声に聞こえた。


 怜華は、涼の袖をそっと掴んだ。

 指先が震え、布地を強く握りしめている。


 涼はそれを感じながらも、視線はドアの向こうに固定したままだった。


涼「まだ、動くな。」


 涼の声は、いつものように低く、抑揚がほとんどなかった。


 霧崎くんが生きてるってことは……まだ誰も死んでない。

 でも、あの放送の声は本気…。誰かが、もう動き出してる。


 怜華が心の中でそう呟くと、涼がドアへ向けて歩き始めた。


涼「……ここにいろ。俺が少しだけ、ドアの隙間から外を見てくる。」


 怜華は首を激しく横に振った。

 目が「行かないで」と訴えている。


 殺し合いの舞台でもう誰かが動き出してる状況自体で限界なのに

 涼がいなくなったら——


 彼女はただ、必死に袖を離さなかった。足音はまだ廊下の奥の方で続いている。

 霧崎の息遣いが、徐々に遠ざかっていく。


 しかし、校舎全体が息を潜めているような

 重い静寂がすぐに戻ってきた。1年3組の教室の中。


 二人はまだ、床に座ったまま——

 いや、怜華は涼の袖を掴んだまま——動けずにいた。


 ドアの外では、10人のうちの誰かが、すでに「ゲーム」を始めていた。

 廃校の夜は、ますます深くなっていく。


 そして、最初の犠牲者は、まだ姿を見せていなかった。



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