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第23話 手当て

現在の生存者 残り7人

涼・怜華・男(左目負傷)

芽依・楓・?


死亡者

吉沢・笹原・霧崎・姫森


 暗い理科準備室の棚を、涼は素早く探っていた。


 埃まみれの薬品棚の奥に、幸運にも未開封の消毒用アルコールと

 使い古されたがまだ清潔な包帯のロールが転がっていた。


 理科準備室らしい実験用の救急セットだったのだろう。


 涼は無言でそれらを手に取り、芽依の隣に膝をつく。


涼「脚、出して。」


 短く、低い声で指示する。


 口数は少ない彼にとって、これ以上の説明は必要なかった。


 芽依は唇を噛みながら、右脚をゆっくりと伸ばす。


 スカートをめくり上げた太ももには

 チェーンソーの刃が浅く(えぐ)った傷が3本、赤く腫れ上がっている。


 血はまだじわじわと滲み続けている。

 怜華は芽依の反対側に座り、震える手で自分のブレザーの裾を握りしめていた。


 彼女は声を出せずにただ、涼の横顔をじっと見つめている。


 家族以外の男性がクラスメイトの脚に触れる光景に

 胸がざわついたが、今はそんなことを言っている場合ではないと

 自分を抑え込んだ。


 涼はまずアルコールをたっぷり手のひらに垂らし

 傷口の周りを丁寧に拭き始める。


 手際は驚くほど良い。


 中学時代に体育の先生から習った緊急処置の記憶が身体に染みついていた。


 痛みに芽依が「っ……!」と小さく声を漏らしても

 表情一つ変えずに作業を続ける。


涼「我慢して。

  感染したら、ここじゃどうにもならない。」


 アルコールを染み込ませた包帯を傷口に直接押し当て、きつく巻いていく。

 止血を優先し、血が完全に止まるまで何重にも重ね、結び目を固く締めた。


 最後に残った包帯で軽く固定し、完了。


 所要時間は3分ほど。


 涼は手を払い、立ち上がった。


涼「これで当分は持つ。

  走るのは無理だが、歩くくらいなら大丈夫だ。」


 芽依は息を吐き、包帯を巻かれた脚をそっと動かしてみた。

 痛みは残るが、血は確かに止まっていた。


 彼女は涼に頭を下げ、掠れた声で言った。


芽依「…ありがとう、中谷くん……。

   怜華の彼氏…じゃなくて、私たちを守ってるんだよね……?

   ごめん、私、足引っ張っちゃって……」


 怜華は慌てて首を横に振り、芽依の手をそっと握った。


 声は出ないまま、目で「違うよ…涼は……。」と伝えようとした。


 涼はドアの近くに戻り、耳を澄ませながら低く言う。


涼「礼はいい。今は生き残るのが優先だ。

  …チェーンソーの音がまだ遠い。でも、いつここに来るかわからない。

  楓も、最後の1人も、まだ見つかってない。

  ……ここで少し休んで、傷が落ち着いたら移動する。

  怜華と芽依は少しでも休んで。」


 怜華は涼のすぐ隣に体を寄せ、毛布を自分の膝と芽依の脚にかける。

 芽依は包帯を軽く押さえながら、涼に向けて弱々しく笑い

 その後、険しい表情で廊下の方を見つめた。


芽依「…楓、無事だといいけど…。

   あの男、完全に暴走してる…。

   左目潰されてるのに、チェーンソー振り回して……。

   怖すぎるよ……。」


 理科準備室の薄暗い明かりの下、3人は再び息を潜めた。


 外の廊下では、遠くで低く唸るチェーンソーのエンジン音が

 時折、風のように響いては消えていく。


 最上階4階で、傷ついた芽依を加えた三人は

 次の行動を慎重に待っていた。


 夜は、まだ終わらない。


 チェーンソーを握った男と、姿を見せない最後の1人が

 静かに影を伸ばし続けていた。



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