第110話 人類最後の砦
一面の荒野の空中を、三機のMTが一列となって飛行していく。
衝撃の事実を口にしたのち、テルモ基地への護衛を申し出たダストンと名乗ったパイロット。
不安材料は多々あるが、ユーリも申し出を承諾し今に至る。
とは言えこのまま護衛されるだけと言う訳もいかず、情報を集めるためにダストンへと通信を繋ぐ。
「少しいいか?」
「何でしょう中佐」
「随分と俺の事を知っているようだが、どこから聞いた」
「何処からも何も、この世界では伝説の英雄ですよ。ユーリ・アカバとAIアイギスは」
「アイギスについても知っているのか」
伝説というワードには引っ掛かったものの、六十年近くも経てばそう言う事もあるだろう流すユーリ。
「何でも裸一貫でMTを撃破したとか。初任務で大隊を壊滅させた。さらにはメシア・リベリオンの際には二千機を撃破とか」
「待て待て待て! 流石に尾ひれが過剰過ぎるだろう! 特に最初なんて人間辞めてる!」
「で? どこまでが真実なんです?」
「一個も当てはまるか! 出来る奴がいたら俺が会ってみたいぐらいだ!」
【ですがユーリなら出来そうな気も】
「アイギス! 余計な事を言うな!」
息を荒く吐くユーリの耳に、ダストンのクスクスとした笑い声が聞こえ憮然とした表情になる。
「からかったな」
「いえ思ったよりいい反応をするものでね。ですが英雄として伝わってるのは本当ですよ。なぁイザベラ」
そこでようやくユーリはもう一人のパイロットの名前を聞いて無い事に気付く。
だが問いかけられた方は、何時まで経っても答える様子がない。
「どうしたイザベラ。憧れが目の前にいて緊張してるのか?」
「憧れって」
「こいつ熱心なあなたのファンなもんでね」
「……緊張しすぎて吐きそう」
ようやく言葉を発したイザベラであるが、第一声の後に通信が途絶えたため本当に危ないのだろうとユーリは結論付けた。
「まあ俺の過度な評価についてはいい。……あの生物は何だ? どうしてお前たちの兵器は通用する? 聞きたいことが山ほどある」
「一気に説明しても理解できないでしょう? もうすぐ基地なんで、トップがご説明しますよ」
「……信じていいんだな」
「嘘なんて吐きませんよ。必要な時以外はね」
疑いの視線を送るユーリであったが、諦めの表情の後に通信を切る。
罠なら罠で噛み切ればいいだけの話だと割り切って。
そのような事を考えている内に、テルモ基地が見えてきた。
「ようこそ中佐。人類最後の砦へ」
しばらくぶりに見たテルモ基地であったが、まず外観から変わっていた。
基地というよりは一都市のような様相を呈しており、ダストンの人類最後の砦という言葉が嘘ではない事を感じさせる。
二人のMTに導かれるように基地へと踏み入れるユーリを出迎えたのは、万雷の拍手であった。
よく見てみれば泣いている人もいて、ユーリは只々困惑するしかない。
「過剰すぎるだろ」
「それだけ期待の星という訳ですよ。さあ降りましょう」
言われるがままにジークフリートから降りると、拍手の音がより鮮明に聞こえる。
どう場を収めようか考えるユーリであったが、突然囲んでいた人の壁を割いて一人の老婆が目の前に現れる。
痛んだ金髪に碧眼が特徴であるが、何よりも目を引くのは義足である右足であった。
杖を突きながら現れた老婆は、恭しく頭を下げる。
「アカバ中佐。よく着いてきてくれました。テルモ基地の責任者として、一同を代表して感謝します」
「頭を上げてください。期待してくれるのはありがたいが、俺は何も」
「いえ。少なくとも私は貴方に多大な恩がありますよ、中佐」
「?」
「六十年も経った姿なのです。分からなくても無理はありません。ですから改めて名乗らせて頂きます。私の名はイレーナ。旧バンデルの王女にしてエデンの政治家、今はテルモ基地の総責任者です」
柔らかな笑みを見せるイレーナに対し、ユーリは呆然とした表情を見せ続けるのであった。
今回のエピソードは如何でしたか?
意外なキャラも登場し、謎も徐々に明らかになっていくので今後もよろしくお願いします!
※お気に入りのキャラ等がいれば、コメントで知らせてもらえると登場回数が増えるかも知れません




