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第3話 次は何をされてしまうの?

 次に目が覚めると、なぜかガタガタと揺れていた。


「あら、もう目が覚めましたか?」


 なぜだろう。聞きたくない声が聞こえる。このまま、意識を手放したい。


「目は開きましたが、意識は覚めてないのでしょうか。次は目薬で治療ですかね。」


 そういうと、視界に青色のビンが入ってきた。


 なぜか、きらきら光ってきれいに見えるが、それ以上に危ない何かを感じる。


「な、、何の治療でしょうか。」


 今度は聞いたことがない甲高い声が響く。


「さあ、何の治療になるでしょうかねぇ。」


 液体は簡単に落ちては来ない。だが、ゆっくりと、迫ってくる。時間をかけ、ゆっくりと。


 入ったらまずいと、手で目の前を防ごうとしたがなぜか手が動かない。




 そう、縄に縛られている。


 なぜでしょう、目から涙が出てきた。そう、恐怖からに違いない。


 目が覚めるたびに、理不尽な状況がさらに悪化しているから涙が出たに違いない。


 決して、視界の端に邪神のような笑顔を浮かべた女性に恐怖を感じたわけじゃないはず。


 最後の抵抗に目を閉じることにした。




 だが、いくらたっても瞼や眉に液体の感覚が来ることはなかった。それと、クスクスと笑う音が聞こえてきた。



「うん、反応は良好ですし、問題なさそうですね。ナルシー、起こしてあげて。」


「はい、先生。」


 寝転がっていたはずの俺は、なぜか石ころのように持ち上げられ、座られされた。


「いい加減、目を開けてこちらを向いてくれませんか。」


「目を開けると、それが最後の景色になりそうなので開けたくありません。」


「あらあら、子供みたいに、拗ねず、恥ずかしがらず、目を見開いていいんですよ。」


「拗ねてる訳ねえだろ、恐怖を感じてるんですよ。」


  目を開けず、言い返しているとぱんぱんと手をたたく音とともに、おでこに何か衝撃と湿気を感じた。


「先生、効きました。」


 なぜか、頭によくわからない感覚が生じ、瞼が自然に開いた。


 そこには、黄色い髪の少女がいた。そして、したり顔を見せながら後ろに下がると、あの女性が目に入った。


「5日ぶりですね、アンタ・マチルニー さん。お加減はいかがですか。」


 少し、思考をしてみよう。ここで万が一、体調が悪いなどの回答をしてみよう。



 うん、毒殺される未来の一択だな。ならば、選択肢は1つ。


「最高ですね。  では、帰るので、ここからおろしてください。」


 馬の鳴き声も聞こえたことから、馬車に乗っていることは確かなようだ。なぜ、俺の名前をフルネームで知っているかは疑問だが、そんなことよりも身の危険から離れることが先決だ。


「先生、どうしましょう。意識は回復しましたが、思考はまだ治療が必要のようです。」


「そうですね。自分のおかれた立場への配慮が足りていませんね。ここは、神に一つ導いていただきましょうか。」


 胸のペンダントに手を当て、何かを唱えようとした時、


「グぅ~~。」


 場に合わない音が響いた。


 目の前の女性からしたのは間違いない。そして、隣の少女はなぜか目が死んでいる。


「ナルシー、今日のやる気が切れました。街に着くまで、あとよろしくお願いします。」


「はい、先生。」


 そういうと、少女はポケットから錠剤らしきものをだし、女性は受け取ると同時に一気に口に放り込んだ。


 そして、横になって寝たようだ。




 寝息が聞こえてきた。そして、少女は俺の隣に座り、姿勢をこちらに向けた。


「それでは、先生はおやすみになられたので、私が代わりにあなたの現状についてお話しますね。」


 少女、ナルシーは小さな声で語りかけてくる。


「俺は、誘拐されてるんだよな。」


「そうですね。見方によればそうとも言えます。」


「なら、元いた場所に返してほしいんだが。」


 ナルシーは、大きなため息をつきながら、コイツ分かってないなという目を向けてくる。


「何か、おかしいのか?」


「あなたは、どうして先生に治療されたか覚えていますか?」


「それは、俺が鉱山で水源を当てて、村の診療所に運ばれたからだろ。」


 俺の記憶に誤りがなければそうだ。


「ええ、そうです。あなたは、運悪く、水源を当ててしまい、けがをしてしまったんです。」


 記憶に間違いはなさそうだ。


「じゃあ、その鉱山どうなったと思います?」


「え、そりゃ鉱山から水が出たんだから、使い物には...  」


 水が止まってないなら、どうなるんだ。ふと、考えが出てくると同時に自分のおかれた状況が見えてきた。


「そうか、俺はもう村には戻れないんだな。」


 ナルシーは目を閉じながらうなずき、そして、つづけた。


「そうなのです。あなたは鉱山を破壊した加害者側になってしまったのです。そして、鉱山を使えなくなったことで鉱山の権利をもつ方々から、あなたは恨みをかう立場になってしまわれたのです。」


 だとすると、俺はどうして縄をつけられているか把握できた。


「つまり、俺は罪人としてどこかに運ばれているんだな。だから、縄で縛って逃げられないように...」


 ナルシーは、ニマッとすがすがしい笑顔で


「違います。縄で縛っているのは、先生の趣味というか、単なる気まぐれというか、そういう類いの何かです。」


「は?」


 目の前で横になって寝ている女性が何か怪しいものに見えてきた。


「あと、あなたはあの村では死んでいることになっています。」


「は?今生きてるけど。」


横に座っている少女の言っていることが分からない。俺は生きているし、死んだらどうせまた、神様のところに呼ばれるだろう、目の前の神子さんのお薬で亡くなったら。


「実際にはそうですけど、加害者はもういないことにした方がうまくいくこともあるんですよ。」


「何がうまくいくんだ?」


「そうですね。被害者への賠償とかもろもろですかね。」


確かに、死人には賠償求められない。だったら、遺族に賠償してもらう方法もあるが、働いてた村に身内はいないからどうしようもないだろうな。


「じゃあ、どうして死んだことになってる俺を連れて行ってるんだ。」


「まあ、それについては先生が起きてから、お話ししますね。とりあえず今、分かってほしいのはあなたに帰る場所がないという事実だけですから。」


さっきまでの楽しそうな声色とは別に低い声で言い終えると同時に、少女は俺の口に何かを放り込んできた。それは舌の上ですぐに溶けてしみこんできた。


「お前、何を...」


「一応死人という体で運んでるので、静かにしてくださいね。」


意識が遠ざかっていくとともに、体を倒され、少女のつぶやく声が微かに聞こえた。


「それでは、次のおはよう迄、ハッピーな夢でも見ててください。げ...は..かぎ...で。」


そして、俺はまた意識を手放した。










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