空き家に潜む孤児たち
赤い鱗をもった30メートルくらいのドラゴンが3体、イネルバのドラゴンポートに着陸した。首に青い布がある。敵じゃないことを示すために巻いてもらっている。
ドラゴンたちが光の粒子に包まれると赤い髪をした少年たちに変わった。赤い服を着て背中には大きなリュックを背負っている。目印の青い布はどこにいったのか見当たらない。ゴールドもそうだが、ドラゴン形態と人間形態が入れ替わる時、着てるものや持っているものはどこか別の空間に収納され、入れ替わるようになっているみたいだ。
「おはよう。レックス。」
先頭にいた少年に声をかける。
「おはようございます。アキラさま。ゴールドさま。」
「おはようなのじゃ。」
「これから買出し?」
「はい、冒険者ギルドに行って、スライムの魔石とポーションを買い取ってもらって、そのお金で食料を買って戻ります。」
「そうか、気をつけてな。」
「ありがとうございます。では。」
レックスたちには全員冒険者登録してもらった。当面はライトガルドのスライムダンジョンでスライムを討伐してそのドロップ品をもってイネルバへ行き、魔石とポーションを換金して食料を買ってライトガルドに戻る生活してもらうつもりだ。
レックスやゴールドのように人化できるモンスターは従魔としても、冒険者としても、どちらでも登録できる。従魔として登録すれば主人のランクのダンジョンに入れるが単独ではダンジョンに入れない。
ゴールドとブルーはオレの従魔として冒険者ギルドに登録しており、その証の従魔タグを首に下げている。
白いワンピースシャツを着た幼女が光の粒子につつまれ、30メートルくらいの黄金のドラゴンに変わる。
オレはその背に飛び乗り、背中にしがみつく。
「よし、じゃあゴールド、リタンブールの街までたのむな。」
『わかったのじゃ。』
黄金のドラゴンはゆっくりと羽ばたき、フワリと浮かび上がった。
黄金のドラゴンがリタンブールの西門前に作られたドラゴンポートに着地した。
オレがその背から降りると、ドラゴンは光の粒子に包まれ、白いワピースシャツを着た幼女になる。
「おつかれ、ゴールド。」
オレがゴールドの頭をなでてやると、気持ちよさそうに目を細めた。
そこに近づいてくる人影ああった。亜麻色の髪をした中肉中背の20代くらいの男だ。オレと同い年くらいの感じだ。
「おつかれさまです。アキラさん。」
「おつかれさまです。ライラックさん。お待たせしたようですみません。」
「いえいえ、それほどではありませんよ。お気になさらず。」
彼、ライラックさんは国王陛下につけてもらったライトガルド開拓のためのオレの補佐官だ。
ライラックさんと共に、オレたちは身分証を見せてリタンブールの街の中に入った。
「…なんか人が少なくなった感じがしますね。」
「ええ、イネルバでドラゴンダンジョンに加えてミノタウロスダンジョンまで発見されましたからね。かなり人がイネルバに流れたみたいです。それに冒険者ギルドはマスターが逮捕されてまだごたごたしていて、ほとんど機能してませんしね。」
「なるほど。」
オレたちは寂れた住宅街の一角に来ていた。
「このあたりは全て空き家です。許可はとっていますのでどうぞ。」
「そうですか…では、」
オレはアイテムウィンドウを展開してドラッグして手前の石造りの建物の壁に近づけた。
アイテムウィンドウが壁に接触すると建物がフッと消えた。後には土の地面だけが残っていた。
アイテムウィンドウには[石造りの建物]と表示が追加されていた。
「アキラさん…すさまじい収納魔法ですね。」
ライラックさんが目を見開いて驚いている。
「はい。オレも自分で驚いています。ライラックさん、このことはあまり人には言わないでくださいよ。」
「はい、勿論です。」
オレはその要領で次々と空き家をアイテムウィンドウに収納していった。
流石に似たような建物でもまとめ表示はされずに、[石造りの建物2][石造りの建物3]といった感じで表示されていた。
4つめの建物を収納しようとアイテムウィンドウをその壁に触れさせたが収納できなかった。
「あれ?」
「どうしました?」
「なぜか収納できないんですよ。」
ゴトリ
収納しようとした家の中から物音がした。
「…どうやら中になにかいるようですね。」
ライラックさんが目を厳しくして中の様子をうかがう。
オレはオリハルコンの傘を出して手にもった。
「それは武器なんですか?」
ライラックさんが不思議そうに傘を見ている。
「ええ、強いんですよ。」
オレたちが2階建ての建物の中に入ると上に逃げて行く小さな人影があった。
2階に上がって一番奥の部屋の扉を開けると8歳くらいの男の子が5歳くらいの女の子を抱きしめて怯えた目でこちらを見ていた。ボロボロの服を着て全体的に薄汚れている。
「…どうやら孤児が空き家に勝手に住み着いていたみたいですね。」
「なるほど、それで収納できなかったみたいですね。」
アイテムウィンドウには生物は入らないみたいだ。
しかし、この子たち、どうしよう。一緒にライトガルドに連れていくかな。
オレは子供たちに手をさしのべた。
「君たち、こっちにおいで、この家は他の場所に移すんだ。」
子供たちはオレが手をさしのべるとビクリとして少し離れた。
うーん、かなり警戒されているなぁ。どうしよう。
「おぬしたち、我と一緒に来い。美味いものを食べさせてやるぞ。」
見た目、この子たちと同じように見えるゴールドが話しかけた。
「ほんとう?」
小さい女の子が聞き返してきた。
「ああ、本当じゃとも…な?、ご主人さま。」
「ああ。」
オレはアイテムウィンドウから買いだめしておいたオーク肉の串焼きを2本とりだし、その子たちに差し出した。
おそるおそる子供たちはそれを手にとり、かぶりついた。そしてあっというまに食べきると、まだ欲しそうに見上げてきた。
「…もう1本ずつだけだぞ。」
オレはオーク肉の串焼きをもう2本取り出して子供たちに渡した。
なんとか餌付けに成功した子供たちを連れ出して外に出て、その建物をアイテムウィンドウに収納した。
その区画の合計20棟の建物を収納したが、その中に7人の孤児たちが潜んでいた。
孤児たちはゴールドが引き連れて歩いている。なんかすっかりガキ大将みたいな雰囲気にになってるな。
「みんな、我についてくるのじゃ!!」「「「おう!!」」」




