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浮遊島ライトガルド

オレはスキルウィンドウを展開し、ウィンドボールの部分を右手の人差し指でトリプルクリックする。


ドン!


オレの左腕の手のひらからウィンドボールがでた。


やや下に向けていたので、少しだけ体が浮き上がった。


トリプルクリックを繰り返す。


ドンドン!


1メートルほど浮き上がったところでクリックをやめて、着地する。


ドチャ、


それほど鍛えていないオレは着地に失敗し、転倒する。


「いたた・・・空を飛ぶにはまだまだ練習が必要だなぁ。」


魔法スキルの発動方法はオレの場合、2種類ある。ウィンドウを展開してクリックするのと、音声入力でスキル名を叫ぶのとだ。


そしてターゲット指定の方法は、音声入力の場合、指差し、または手のひらを向けることで指定できる。ミニマップが開いている時は、その中をクリックしていもいい。


ウィンドウを展開する場合は、スキルウィンドウを開くと単体攻撃のスキルはそのウィンドウに敵性ターゲットが並んで出現するので、その中から選んでシングルクリックしていた。


この方法だと、敵性ターゲットしか狙うことができなかった。


しかし、あるとき慌てて、ウィンドウを展開する前のウィンドボールのスキルの部分をトリプルクリックしてしまったのだ。


すると、ウィンドボールは反対側の手のひらからでた。その時は突然のウィンドボールによるジェット噴射で転倒してしまった。


しかし、このことで、オレはスキル部分をトリプルクリックすることで単体攻撃魔法は、反対側の手のひらから出ることに気付き、それを応用した技の練習をしていたのだ。





芝生に座って一休みしていると、ゴールドとブルーが手をつないでやってきた。なんかこの2人、姉妹みたいだな。2人とも白いワンピースのシャツを着ていてとっても可愛い。


「ご主人さま、遊んで欲しいのじゃ、」「遊んでくだしゃい。」


・・・今日はこのくらいにしとくか。


「よし!、じゃあ、ゴールドに乗って空中散歩するか?」


「うむ、まかせるのじゃ。」「わーい、お散歩でしゅ。」





オレたちは、スライムダンジョンの入口を使って、イネルバを見渡せる丘の上に来た。


「じゃあ、ゴールド、オレとブルーが乗れるくらいの大きさのドラゴンになってくれ。」


「わかったのじゃ。」


ゴールドは光に包まれると、その光は大きくなっていき、やがて30メートルくらいの金色のドラゴンになった。相変わらずフサフサで触り心地が良さそうだ。


オレはブルーを抱えて、その背に乗る。


「よし、頼むぞ、ゴールド。」


『まかせるのじゃ。』


ゴールドはユックリと羽ばたき、フワリと浮き上がった。


イネルバの街が小さくなり、東には隣街のリタンブール、その先の王都まで見渡せるようになった。


北はイネルバの街の先にはトロールダンジョンの森が広がっており、その先には岩山が見える。


南は、丘の後、平原があり、その先は海岸線が広がっている。


西は森の後に小さな町が見える。えと、ローランドの町だったかな?


『ご主人さま、何処に向かう?』


「そうだな、じゃあ、あの浮遊島、ライトガルドに行こう。」


オレは海側の上空に浮かぶ岩の塊を指差した。


夜空を見上げたとき、小さめの月が2つあるように見えていたが、実は、地球の月のような宇宙空間にある衛星ではなく、大気圏内を魔法的な力で浮かぶ巨大な岩の塊だった。


この世界の人は、これらを浮遊島といい。大きい方をミッドガルド、小さい方をライトガルドと呼んでいる。


ライトガルドの方は、イネルバの街の上空からそう遠くない位置にあった。


ゴールドは雲海を抜け、ライトガルドの上空に出て、その上を旋回した。


大きさは、直径10キロくらいだろうか?、そこそこ大きい。


上から見ると、中央に湖があり、その回りに草原がある。


ゴールドは湖の畔に着地した。


オレたちを降ろした後、光に包まれ、再び幼女の姿になる。


「綺麗な湖じゃな。」


人の手にまったく触れることのない水は澄んでいた。底まで見通せる。時々魚の姿も見えた。


「そうだな、じゃあ、ライトガルドの縁までいってみよう。」


オレたちは手を繋ぎ、草原を歩いた。やがて、ライトガルドの縁につく。


「ふああ、綺麗でしゅ。」「綺麗じゃ。」


ライトガルドから見下ろす下界は信じられないくらい綺麗だった。


薄くかかる雲海の下に大小さまざまな形の島々があり、複雑な模様を描き出していた。


やがて太陽が傾き始め、景色が赤く染まりだした。


より、幻想的となった風景に2人は見とれていた。


オレはポケットの中で握り締めていた2つの緑色の魔石のついたペンダントを取り出した。


「ゴールド、ブルー、これを受け取ってくれないか?、」


「ご主人さま・・・それは、婚姻魔石と言うやつか?」


「ああ。」


「我の首にかけてくれ。」「ブルーの首にもかけてくだしゃい。」


2人の幼女はお辞儀するように首を差し出す。


オレはそこに婚姻魔石をかけてやった。


2人は草原に正座をし、三つ指をついた。


「ふつつか者ですが、どうぞ、これからもよろしくお願いしますのじゃ。」「よろしくお願いしましゅ。」


オレは膝をつき、2人を抱きしめた。


「こちらこそ、よろしく頼む。ずっと、ずっと一緒にいてくれ。」


「ああ、ずっと、ずっと一緒じゃ。」「ずっと一緒でしゅ。」


誰もいない浮遊島の草原でオレは2人をずっと抱きしめていた。

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