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ステラの活躍

「リタンブールのギルドマスターが?」


「ええ、おそらくそのトムソン氏は昼過ぎにはここに乗り込んでくるでしょう。」


あたしはイネルバ冒険者ギルドの調査担当職員、グラムの報告を受けていた。ここはイネルバ冒険者ギルド、マスター執務室。あたしはそのギルドマスター、ステラ。


「やはり、ここのミノタウロスダンジョンの件かしら?」


「そうですな。かなり強引に秘匿するように要求してきそうです。」


「そういえば、ここの前ギルドマスターは、トムソンさんとの会談直後に謎の死を遂げたんだったわね。」


「はい、まったく不自然な死に方でした。」


半年前、前ギルドマスターは帰宅の途中、行方不明となり、3日後、南門の外側で死体で発見された。遺体には多くの打撲の後があった。今あたしが住んでいる社宅は以前その方が住んでいたのだ。ここからたった数十メートルの家路でいったいなにがあったのだろうか?、


その事件以来、あたしが就任するまで、イネルバのギルドマスターは空席だった。


「・・・備えが必要ね。トムソンさんを押さえ込める審議官が来てくれれば・・・」


「しかし、リタンブールのギルドマスターを押さえ込める審議官なんて、王都にいる国王様直属の方くらいしかいませんよ。今から派遣を魔道具で依頼しても、ここに来てくれるのに最低2日はかかる。」


「・・・そうね、普通じゃ間に合わないわね。」


でも、アキラさんから預かっているスキルを使えば・・・


「奥の手を使うわ。グラム、ちょっと普通では考えられないことが起きるかもしれないけど・・・その原因については聞かないで・・・ね?」


あたしは、上目使いでグラムを見た。


「はい、マスターにその眼をされたら、かないません。」


グラムは真っ赤になった。・・・ふふ、この人もケッコウ可愛いとこがあるのよね。まぁ、アキラさんには負けるけど。


「では、引き続き、トムソンさんの動向の調査をお願い。」


「わかりました。失礼します。」


バタン、


あたしはグラムが出て行ったのを確認して、呟く。


「クリシュナ迎賓館クローゼット」


あたしが壁をタッチするとそこにクローゼットの扉が現れる。


これを開いて、中に入る。そしてその扉を閉じて再び開けるとそこは迎賓館の客間だった。


あたしは両側から抱きつかれた。


「「いらっしゃいませ、お姉さま!!」」


この迎賓館を管理しているアイ王女とレイ王女だ。


「こんにちは、アイ、レイ・・・あなたたち、ずっとここで誰かこないか見てるの?」


「まさか、なんとなく、お姉さまが来ると思ったから、今きたんですよ。ね?、レイ。」「はい。私たちの勘はお姉さまやアキラ様に関することには抜群の冴えをみせるのですよ。ねー?」


「・・・まぁいいわ。ところで、急いで国王様直属の審議官の方にお会いしたいのだけれど・・・」


「はい、それでしたら、丁度、ここにジャスティス審議官がいらしてますわ。」


「そうなの?、すぐ会えるかしら?」


「はい、先ほど、審議のお仕事を終えたみたいですから、大丈夫だと思います。」


あたしは、アイ王女とレイ王女の案内で別の客間に来た。


コンコン、


ドアをノックする。


「どうぞ。」


「失礼します。」


中に入ると椅子で書類を見る金髪をオールバックにした紳士がいた。


「おや?、黒縁メガネに黒のスーツ、金髪碧眼の美女・・・もしやあなたはイネルバ冒険者ギルドのマスター?」


「はい、イネルバ冒険者ギルドのマスターのステラです。はじめまして、よろしくおねがいします。」


あたしは歩み寄って右手を差し出す。


「これはこれは、噂以上の美人ですな。私は国王陛下直属の審議官、ジャスティスです。はじめまして、こちらこそよろしくおねがいします。」


ジャスティスさんはあたしの差し出した右手をがっちりと握ってくれた。


「ジャスティス審議官、突然ですが、一緒に来てください。悪を裁くのにあなたの力が必要なんです。」


「ほう・・・悪を裁くのに・・・」


審議官はその金色の瞳で私の目を覗き込んできた。その瞳は全ての真偽を見通す。あたしはひるまずに見返した。


「・・・いいでしょう。ただし、夕方までには私は王宮に戻らなければなりませんよ?」


「ええ、それほどお時間はとらせません。」


それから、審議官に目隠しをしてもらって、あたしが手を引いてイネルバ裏路地袋小路まで一緒に移動した。


目隠しをとった時にイネルバの街中だったことに驚愕していた審議官だったが、この移動方法については何も聞かないで欲しいと言ったら素直に聞いてくれた。誠意をもって彼の瞳を見つめるとその真剣な思いは伝わるのである意味付き合いやすい人だ。


そして、審議官にあたしの執務室のカーテンの中に隠れてもらい、あたしは何食わぬ顔で書類仕事をした。グラムの報告によれば、もうすぐトムソンがここに来るはずだ。


コンコンコン


「失礼する。」


ノックと同時に部屋に入ってくる男がいた。リタンブール冒険者ギルドのマスター、トムソンだ。


あたしは驚いた風を装って声をかけた。


「これはトムソンさん。どうしました?、突然。」


ドカ!


彼は乱暴に応接セットの長椅子ソファに腰を下ろした。


「ドラゴンダンジョンに続いて、ミノタウロスダンジョンまで発見されたそうじゃないか?」


「あら、お耳が早いのですね。流石、トムソンさんです。」


「世辞はいいい。・・・で、どうするつもりだ?、」


「勿論、白金ランク以上の冒険者に開放しますわ。」


ガタン!


「リタンブールのギルドを潰す気か!?、」


彼は叫んで立ち上がった。


「大丈夫ですわよ、今回見つかったのは小規模なものです。市場の全ての需要を満たすものではありません。リタンブールとの住み分けはできます。・・・もっとも、この功績で次のグランドマスター選挙は私が勝たせていただくことになるかもしれませんけど・・・ふふ。」


あたしはわかりやすく挑発した。これでなにかシッポを出してくれればいいんだけど・・・


ギリ、


彼は奥歯をかみ締めた。


「・・・小娘、前マスターのようになりたいのか?、」


「あら、どういった意味かしら?、」


「どうもこうもない。黙ってオレの言いなりになれってことだ。さもないと前マスターのように殺す。ここのミノタウロスダンジョンは秘匿しろ。」


あたしは内心ニヤリとした。こうも簡単にシッポを出してくれるとは思わなかった。


「・・・どう思われます?、ジャスティス審議官。」


「いやはや、先ほどの言動で脅迫罪は確定ですな。そして会話の中に見逃せない内容がありましたな。」


カーテンの影からジャスティス審議官が出てきた。手には記録の水晶を持っている。


トムソンは驚愕し、目を見開いた。


「あ・・・あなたはジャスティス審議官?、王都にいるはずでは?」


「ええ、確かに私は王都にいたはずなのですが、何故かイネルバにいるのですよね。不思議です。まぁ、そのことは後でいいでしょう。トムソンさん、あなたはイネルバの前ギルドマスターを殺害したのですか?」


「あ・・・え・・・うぅ。」


ジャスティス審議官の金色の瞳がトムソンの濁った目を射抜いた。


「うあああああ!!」


トムソンは叫んで逃げ出した。


ドカ!、ベキ!!


「うぎゃああああ!」


扉の先でトムソンの悲鳴が聞こえた。


そして、気絶したトムソンを引きずって銀髪の大男が姿を現した。白金ランク冒険者のガンツさんだ。


「やっほー、ステラちゃん。悪党つかまえたぜ。」


「ありがとうガンツさん。でもあたし、今ここのギルドマスターなんだけど・・・ちゃんづけはないんじゃないかしら?」


「ステラちゃんは、オレらの永遠のアイドルだよ。どんだけえらくなっても・・・な?」


「ははははは、ステラちゃんは冒険者に慕われているようですな。」


「もう、審議官まで・・・。ガンツさん、その男を地下の留置場にお願いします。」


「はい、わかりました。ステラさん。」


ガンツさんはおどけた態度を一変させ、軽く敬礼したあと、トムソンを引きずっていった。





「それでは、これからいろいろ大変だとは思いますが、がんばってください。」


「はい。ジャスティスさんもこの後の処理、よろしくお願いします。」


あたしは迎賓館でジャスティスさんと握手をして分かれた。

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