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冒険者ギルドマスターのお仕事

あたしはステラ、イネルバ冒険者ギルドのマスター。そして黒ランク冒険者アキラさんの女。


胸にくすぐったさを覚えて目が覚めた。


視線を下に向けるとアキラさんが、あたしの胸に顔を埋めている。


あたしは、ぎゅっと一度その顔を抱きしめた後、ベッドを出る。


黒いスリップを脱いでYシャツを着てスカートをはく。


ダイニングに行くとシルフィがいて、お米をといでいた。


「おはようございます。ステラさん。」


「おはよう、シルフィ。早いわね。」


あたしはエプロンをつけると、お鍋に水を入れ。魔導コンロにかける。


コンブに切れ込みを入れ、お鍋にいれる。


ボウルに卵を割って入れてとく。


お鍋から出汁をとってとき卵に入れ、砂糖を少々加える。


卵焼き用フライパンに油をひき、卵を流し込み焼く。


今はけっこう人数がいるから大変だ。ゴールドちゃんやアリエスちゃんは良く食べるから、大きめにしてあげようかな。


お鍋から出汁用のコンブをとりだして、味噌を溶かして、豆腐を刻んで入れる。


「「おはようございます。お姉さま。」」


アイ王女とレイ王女が後ろから抱き着いてきた。


「おはよう、アイ、レイ。」


王族を呼び捨てにするなんて不敬罪に問われかねないが、本人たちの希望で公の場以外ではこう呼んでいる。


「もうすぐ朝ご飯ができるから、皆を起こしてきて、」


「「わかりました。」」





「それじゃあ、いってくるわね。」


「いってらっしゃい、ステラさん。」


アキラさんがあたしを抱きしめてキスをしてくれた。うん、これで頑張れる。


家の玄関を出て数十メートル進むともうあたしの職場である冒険者ギルドだ。


職員専用の通用口を通って中に入る。


「おはようございます、マスター。」


デイジーがあたしの胸に飛び込んできた。


「おはよう。デイジー。」


この子はことあるごとに、あたしの胸に飛び込んでくる。女の子なのにアキラさんと同じ雰囲気がするのは気のせいだろうか?


デイジーが顔をグリグリしてきた。


「ああん。くすぐったいわよ、デイジー。」


たまらずデイジーを引きはがす。


「ああ、もうちょっとぉ。」


名残惜しそうにあたしを見るデイジーをおいて、あたしは執務室に入った。


机に置かれた決済待ち書類に目を通し、承認印を押していく。


勿論、おかしなものはよけておく。


一通り処理した後、昨日、アキラさんが解放してくれるといったミノタウロスダンジョン関連の書類を作る。


丁度、書類ができたところで、扉にノックがあった。


「どうぞ、」


トビラを開け、アキラさんが入ってきた。


「おつかれさま。ステラさん。いま大丈夫?、」


「おつかれさま、アキラさん。ええ、ちょうどミノタウロスダンジョンの書類ができたところなの。入って。」


あたしは席を立ち、魔導ポットのお湯で紅茶を入れる。アキラさんが好きなダージリンだ。


「どうぞ、」


アキラさんの前に紅茶を置く。この時必要以上に前かがみになって胸元がアキラさんに見えるようにするとわかりやく鼻の下を伸ばして覗き込んでくる。ふふ、見てる見てる。


「ありがとう。」


あたしは机の上から書類をもってきてアキラさんに渡す。


「昨日打ち合わせた通り、ドラゴンダンジョンと同じ条件でつくったわ、一応確認して。」


あたしはそう言いながら、シャツの第一ボタンを外して胸元をチラチラ見せる。


アキラさんとなにか交渉をするときはこうするのがもう条件反射のようにあたしの行動にすりこまれてしまっていた。


そして、それにいちいち反応して鼻の下をのばして覗き込んでくれるアキラさんの反応を見るのが楽しくて仕方ない。


「はい、大丈夫みたいです。ここにサインすればいいんですね。」


「ありがとう。じゃあ、早速ギルドから調査隊を出して確認するわね。」


「ああ、じゃあ、今から解放しますね。」


アキラさんは指揮者のように空中に指を這わせる。


どうやらあの仕草で掌握したダンジョンの操作をしているらしい。


「通路はふつうのミノタウロスが出る設定のままでいいですね?、広間はウォーリアミノタウロスが出る設定になっています。ふつうのミノタウロスに置き換えることもできますが、ここもこのままでいいですか?」


「ええ、それでいいわ。」


「はい。・・・解放完了です。」


「ありがとう。」


あたしはアキラさんから書類を受け取り、机に移動しようとしたところでアキラさんに腕を掴まれた。


そしてあたしの胸に顔を埋め、グリグリしてくる。


「ああん」


思わず声が出てしまう。


「毎回毎回、胸元を見せつけてきて、ステラさん、誘ってるでしょ?」


「ふふ、どうかしらね?、」


あたしはアキラさんの顔を胸に押し付ける。


アキラさんはあたしを長椅子ソファーに押し倒した。





アキラさんが執務室からでていった後、服装を整え、散らばった書類をかき集めて整理し、机に置く。


机の右上にあるボタンを押す。


しばらくするとノックがあった。


「入って、」


「失礼します。」


茶髪を角刈りにした30くらいに見える男が入ってきた。調査担当職員のグラムだ。


「お呼びですかな?、マスター」


グラムが机の前まで来て問う。


「ええ、オークダンジョンのボス部屋にミノタウロスダンジョンの入口が発見されたわ。その調査をして頂戴。」


「なんですと?」


グラムは驚愕して目を見開いている。


ダンジョンなどというものはそうそう発見されるものではないのだから、この反応は正しい。


「もしかして、またアキラ殿が発見されたのですか?」


「ええ、そうよ。すごいでしょ?」


自分のことのように誇らしい。いや、自分の功績よりもアキラさんの功績のほうが嬉しい。


「いやはや、マスターはすごい男を捕まえられましたな。決して逃がさぬようにして欲しいものです。」


「いえ、どちらかと言うと、私の方がアキラさんの虜になっているわ。アキラさんがギルドを辞めろと言えば辞めるでしょうね。」


「ほう、まるで恋する乙女のような表情ですな。あの数多の冒険者たちを手玉にとっていたステラ嬢が変われば変わるものですな。」


「もう、グラム。あたしが恋する乙女じゃ可笑しいの?」


「これは失礼しました。」


そう言うとグラムは豪快に笑った。もう、失礼しちゃうわね。


「しかし、こちらにミノタウロスダンジョンが見つかったとなると、少々隣町ともめるかもしれませんな。」


グラムは真剣な表情になると声を落として言った。


「そうね。隣町、リタンブールの動向も気を付けて見ておいて、」


これまでは、イネルバには初級から中級者向けのダンジョン、リタンブールには上級者向けのダンジョンがあり、うまく住み分けができていた。


しかし、ドラゴンダンジョンに加え、ミノタウロスダンジョンが発見されたことで、イネルバは上級の冒険者も取り込むことになるだろう。


リタンブールでミノタウロス関連の利権を握る輩がだまっていないかもしれない。そのことを考えると頭がいたいわ。


ああ、早く帰って、アキラさんに甘えたい。

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