トロールダンジョン
「トロールダンジョンの攻略マップ?」
「はい、冒険者ギルドに売ってますよね?」
オレたちはダイニングで朝食をとりながら、ステラさんにトロールダンジョンの話を聞いている。メニューはご飯に味噌汁に納豆に焼き魚だ。
「あるにはあるけど、買ってもあまり意味はないわよ。」
「どういうことですか?」
「だって、トロールダンジョンって、入口があって、奥のボス部屋のある岩山まで広大な森があるだけだもの。」
「とりあえず。この後、行ってみます。」
「あ、普通に歩いてボス部屋まで行くのは、数日かかるから、そのつもりがあるなら野営の準備も必要よ?」
「・・・今日のところは様子見ってことで、帰ってきますよ。」
街の北門を出ると草原があり、その真ん中を土の道が先に見える森まで続いていた。
森の直前までくると、木でできたゲートがあり、その横に冒険者ギルドの職員がいた。
「おはようございます。」
「おはよう。お?、期待のルーキーか、ようこそトロールダンジョンへ。」
「あの、ここって、ゲートがありますけど、他の部分、普通に通れそうですよね?、意味あるんですか?」
「ところが、どっこい。ここ以外は通れないんだな。試してごらん。」
「え?、はぁ」
オレはゲートの横を通り抜けようとした。
ガン!
「いってぇ」
オレは見えないなにかにおでこをぶつけて尻餅をついた。
なんだ?、見えない壁がある?
「な?、このゲート以外のところには見えない壁があって、通れないんだよ。」
「なるほど、」
「ご主人様、大丈夫?、」
アリエスが心配して、おれのぶつけたおでこをペロペロ舐めてくれた。あ、気持ちいい。
「ありがと、アリエス。」
「ん。」
オレは感謝のハグをアリエスにして立ち上がった。
気をとりなおして、カードを出してチェックを受けて、ゲートを潜って森の中に入った。
中は普通の森にしか見えない。しかし、ゲートを潜った途端に視界の右上にミニマップが開いたのでやはりダンジョンであることがわかった。
ここでは、延焼が怖くて、ファイヤーボールなんかの炎系の魔法は使えないな。それに袋小路をつかった領域確保も難しそうだ。やっかいだな。
太陽の光を右に感じて北を目指してしばらく歩くと、ミニマップに赤い点の群れが写った。20くらいいる?
「前方に敵だ。とりあえず、様子がわかるまでは、固まっていよう。シルフィ、ウィンドバリアだ。」
「はい、ウィンドバリア!」
風の障壁がオレたちを囲んだ。アリエスやシルフィの髪が風にたなびく。
やがて、敵が視認できた。
「「ワン、ワン!」」
犬?、いや、狼の群れか?
「フォレストウルフですね。やつらも一応モンスターです。」
森の民であるエルフのシルフィが教えてくれた。・・・巨乳だけど。
「よし、じゃあ、アリエスは遊撃。オレとトレイシーはこのままバリアを利用して迎え撃つ。」
「いきます!」
アリエスが飛び出していった。
おぉ?、なんだあの早さ。隼リングをつけて、一段と早くはなっていたがミノタウロスを倒したことでレベルが上がったせいもあるな。なんか、まともに本体が視認できない。残像を残して移動しているぞ。
あっというまに狼の群れに到達したアリエスはその中を縦横無尽にとびまわった。
「ギャン!、」「キャウン、キャウン、」
みるみるうちに狼たちが光の粒子となって消えていく。
狼たちがオレの前まできたときは、その数は半分程度になっていた。
ガン!
狼たちがシルフィのバリアに当たって止まる。
「はぁ!」
ドシュ、
そこにオレは傘の突きをくりだす。
「キャイン!」
それだけで、狼は光の粒子となって消えていった。
オレもレベルアップによって、身体能力が実感できるほどに上昇している。体が妙に軽い。
「はあああ!」
ドシュウ!
トレイシーも簡単に狼を一刀両断している。狼は悲鳴を上げる間もない。
「ウィンドカッター」
ドシュウ!
シルフィのウィンドカッターも簡単に狼を真っ二つにした。
ものの数分で合計で23匹いた狼の群れは壊滅した。後には薄緑色の魔石と毛皮がのこされていた。
アイテムウィンドウに収納すると。フォレストウルフの魔石とウルフの毛皮とでた。
たぶん、こいつらもこの数の群れになったら、そこそこ強いんだろうけど、今のオレたちの敵じゃないな。先に進もう。
大きな木に洞があるのを見つけた。
・・・これ、入れそう。
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トロールダンジョン(1)を掌握しました。
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洞に入ると掌握ウィンドウが出た。
おぉ、これで、領域確保しながら、着実に進んでいけそうだ。
よし、今回はこれで引き返して、普通にゲートから出て帰ろう。




