ラストカウントダウン
sideレイア
打ち合わせを済ませた翌日、遂に明日は卒業式だ。今日は学院では最後の別れということで今日1日授業なし、ただし登校義務ありという状態だ。
当然、学院最後の別れの時だから在校生や同級生と思い出話やこれからの事を語り合うのが普通、の、筈なんだけど・・・・
「あ、あの・・・!」
「レイア先輩!」
「「わっ、私達と付き合って下さい!」」
「・・・・・え?」
なんだこの状況は・・・?
事の発端を思い出そう。
朝っぱらから俺とベルゼは教室で食堂で買った飲み物片手に虚空を見つめていた。
「さてさてレイアくん、今日は所謂『お別れの日』なわけだよ」
「知っているともベルゼくん、そして君が何を言いたいのかもわかっている」
「そうかね、では、答え合わせのために一緒に答えを言おうではないか。せーのっ」
「「何故俺達には誰1人挨拶に来ない!!」」
そう、教室で虚空を見つめている。つまり、周りには誰もいないわけだ。
文字通り、俺とベルゼ以外誰もいない。
言わないでいた言葉を口にした途端、俺の堪忍袋の尾が切れた。
「いやなんでだよ!もうちょっと何かあるだろう!?なんで俺らだけぼっちなんだよ!」
「いやいやいや!お前は下級生の知り合いなんてそんないねぇだろ!?俺なんて後輩育成みたいな感じで下級生に戦闘訓練してたんだぜ!?
それなのにこの状況!お前よりチャンスあって誰も来ないってなんだぁ!!」
「俺だって、直接の知り合いは居ないにせよそこそこ有名なつもりだ。それなのにこれだぞ」
「「・・・・やめようこの話は」」
お互いのHPが1桁に突入したようだ。
そしてそれから暫くの沈黙が続き、ベルゼが再び喋り始めた。
「なぁレイア、考えたんだけどよぉ。
ひょっとしたら俺らに挨拶に来たがってる生徒ってじつは多くて、そいつらが俺ら探して外を探してるんじゃないか?」
「俺らが外にいると思ってか?」
「そうだ」
「それはないだろう、じゃあなんでもう半日立ちそうなのに誰も教室に探しに来ないんだよ。もう10:30だぞ」
「あぁ、それもそうか・・・」
ちゅー
「・・・・」
ちゅー
「・・・・」
「「外に行くぞ!!」」
俺とベルゼは飲み干した飲み物のゴミを捨ててダッシュで教室を出た。
それから人が多い校庭に行き、取り敢えず知り合いを探してそれとなく存在感をアピールする事になった。
なった、筈なんだが・・・
「ベルゼ、俺明日死ぬんじゃね?」
「レイア、俺もかもしれん」
いま俺たちの周りには20以上の後輩達がいる。その誰もが俺達に挨拶したいという子達だ。
「「・・・・ありがとうみんな!!」」
こうして楽しい『お別れの日』が始まった。
それから30分くらい経って俺たちの周りから人が減り、昼飯時になった。
「ふぅ、楽しかったな我が友よ!」
「おうよ!これが本来あるべき姿だ!」
「じゃあ飯行くか!」
「おう!」
俺とベルゼはテンションMAXで食堂に向かっていたが、
「レイア先輩!」
「ちょ、ちょっとお時間いただけますか?」
俺とベルゼの前に2人の女子生徒が現れた。それから一瞬の静寂が訪れ、嵐がやってきた。
ベルゼが俺の胸ぐら掴んで叫びだしたのだ
「おいぃぃぃ!!!レイア貴様!裏切り者!!俺たちは同じ苦しみを味わった友ではないのか!?」
「お、落ち着けベルゼ!今のお前は正気じゃない!正気に戻るんだ!」
「正気じゃないだぁ!?当たり前だろうが!お前普段からアリシア王女を筆頭にソフィーナ公爵令嬢、アヴァール魔導士、エンヴィ剣士、エルス商会令嬢、アーケティア騎士団副団長を侍らせといて事もあろうか可愛い下級生に呼び出されるぅぅぅ!?
舐めてんのかてめぇ!いや、喧嘩売ってんのかゴラァ!!いいぜ買ってやるよその喧嘩!剣をかまえろ糞剣士!!」
女子生徒2人を見てみると2人とも明るい茶髪が特徴の可愛い子だった。
とてもそっくりな子達で、違いは少し吊り上がった目とショートヘアの子か、大きめの目をしたロングヘアの子かというくらいか。
「お、落ち着けアホが!確かに可愛いが、この子達は2人で来たんだぞ!?どうせあれだ!今日か明日、なんか友達とやるから連れが必要とかそんなオチだ!2人いるんだからきっとお前も誘うつもりだったんだって!」
「そうなのか!?」
ベルゼは俺を話して血走った目で女子生徒2人を見る。
「あの、いいえ、違います」
「わ、私たちは、レイア先輩に、その、恋愛的な意味で、お付き合いして欲しくて・・・」
お時間いただく前にロングヘアの方の子が本音を漏らした。
「・・・・・ベルゼ?」
「うわぁあああぁぁあ!!!レイアお前覚えてろよぉぉぉぉ!!!」
ベルゼは泣きながら何処かへ走り去っていった
「・・・・えっと、ベルゼが邪魔していごめんな。それで、俺に用ってなんだ?
聞き間違いじゃなければ、そっちの子に告白された気がしたんだけど」
俺はロングヘアの方の子を見て尋ねる。
「い、いえ、違います!」
だよな、聞き間違いだよな!
「あたし達とお付き合いして下さい!」
ショートヘアの子がそう言った。
「・・・・・はい?私、達?」
俺が混乱しているとショートヘアの子とロングヘアの子が顔を見合わせて再び言った。
「「わっ、私達と付き合ってください!」」
ここで冒頭に戻る。
「えっと、まず順番に行きたいんだけど、君たちは?」
「私、2年S組のメリル・フルールです」
「あたしは2年S組のメア・フルールです」
「あ、うん、よろしくねメリルさんにメアさん」
2年S組ってことはアリシアとソフィと同じクラスか
「呼び捨てで呼んでください先輩、それでさっきの続き、いいですか?」
「あ、ああ」
未だに動揺したままでまともに会話できない俺の言葉を聞き、メアとメリルが話を続ける。
「あたし達がレイア先輩を初めて見たのは、先輩がS組にソフィに用を言いにきた時だったんですが」
「そ、その時に先輩の仕草とか、喋り方とか見て、その、良いなって思ったんですけど」
「どうやらあたしもメリルもその時先輩に惚れちゃったみたいで、その後お互い判明したんですけど」
「それで、卒業式まで先輩が彼女いないなら、2人一緒に告白しようって!」
「なんでそうなった!?」
なんで2人同時!?
「だって、幸い先輩貴族ですし、貴族なら重婚できるので、喧嘩しなくて良いですから、同時にって」
「あぁ、そこに行き着いたのか」
確かに貴族は重婚可だ。だが通常、嫁には目に見えない序列がつく。
故に恋愛的な結婚は1位か2位になる。だから通常恋愛的な結婚は1人か2人まででそこにも順位がつくんだが。
「そうか、一般的に見ると同卒1位と言う意見もあるのか」
これが貴族と平民の思想的格差か
「それで先輩」
「お返事、いただけますか?」
「・・・・」
考えろ!考えろ俺!いいか、俺は公爵の地位を追われた身だ絶縁こそされていないが実質無職候補将来は冒険者父さんは予定通り俺に勉強させる気らしいから活動は来年までお預けそれはつまりこの2人の卒業と同時にってことだこの2人が戦力になるかは別として俺が雷魔を討伐してしまえば俺は戦女神様からの神託は完了だ後は何処か王都でもいいから拠点作って稼ぎながらこの可愛い双子相手に毎日幸せな日々を送ってしまえばそれだけで人生勝ち組みだぞおいしかもそうなれば俺は雷魔討伐者兼古代龍契約者兼公爵家長子兼冒険者、しかもアティさんの提案を飲めば騎士になれるから高給取りでエリートまっしぐらだ相当なことがない限り失業しないそして繰り返すが可愛い双子の嫁2人、しかもタイプの違う感じの子だ家庭的に支えてくれそうなメリルと買い物とか近所付き合い上手そうなメアの2人、これはまさしく幸せな人生なんじゃないか!?
俺は頭の中で様々な事を考え、答えを出しかけたその時!
嫉妬に塗れた悪魔が現れた
「レイアぁぁぁぁ!!!ザマァ!マジザマァ!!俺がアリシアとアヴァールとソフィーナとエルスに言いつけてやったぜ!!このまま死ねやゴラァ!!」
「は?」
ベルゼの後ろを見ると魔力を高めて殺気全開で珍しく表情が歪んだアヴァールと能面顔のソフィ、懐から魔導具を出して撃とうとするエルスが見える。
「・・・・・レイア、は、私の、もの。
・・・・【強欲】の、名にかけて、渡さない」
「お兄様、何時からそのようにふしだらな存在になってしまったのですか?
それにメアとメリル、私達の事をよく知っていながらお兄様に手を出そうとは、やってくれますね。死ぬ覚悟はおありで?」
「レイアくん、私、レイアくんがアリシアさん達の誰かと付き合うなら諦めついたけど、これは我慢ならないかなぁ」
みんな聞いてくれ。今俺の周りには30近い攻撃魔法の魔方陣が半球型を描いて囲っている。空いてるのは正面、つまりアリシア達の方だけだ。
つまり、リアルにヤバイ。
俺がどう言うか焦っていると、俺の方に相変わらず顔を俯かせたアリシアがフラフラとゴーストのような動きでやってきた。
メリルとメアは魔方陣に囲まれ真っ青になっている。
「えぇっと、アリシア?」
「・・・・・」
アリシアは俺の情けない呼びかけにも答えずフラフラと俺の方に来る。
そして俺の目の前まで来たその時
ーきゅっ
「・・・・」
「ちょっ、アリシア!?」
アリシアが正面から俺に抱きついてきた。
「・・・・アリシア?」
俺がなにもする気配のないアリシアの顔を覗き込もうとするとアリシアが突然顔を上げた
「ーっ!?」
アリシアはただ、静かに泣いていた。
涙を流し、目を真っ赤にしながらも、声を出さずただただ泣いていた。
「・・・・・・アリシア、ごめん、俺が悪かったから、泣き止んでくれ」
全くもって俺の何が悪いのかわからないが俺は謝った。
それから数十分、俺は謝り続け、アリシアは泣き続けた。




