雷魔と言う悪魔
sideレイア
「・・・・くだらん。実にくだらない。
人間同士の傷の舐め合いほど吐き気を催す事は無いな」
「ーっ!ら、雷魔様、申し訳ありませんが、契約の方は破棄させて頂きたいのですが・・・・」
契約?クローク伯爵は雷魔と何か契約していたのか?
今までの話の内容から察するに、奥さんの治療・・・もしくは治療方法の提示か?
「ふんっ、人間とは、勝手な生き物だな。
だが困ったな・・・」
雷魔はその霧状の体を凝縮させると、人型を形成し始めた。
数秒後、そこに立っていたのは黒いマントを纏った黒い肌に紅い目をした男だった。
外見年齢は30代って所か?そのせいもあるのか、威圧感が増している。
雷魔は困った困ったとニヤケ顔で言いつつ、マントの内側から紙を取り出す。
「ーっ!そ、それは・・・」
「困った、実に困ったなぁ、ククク。
俺たちが結んだ契約にはこう書いてあるのだぞ?」
雷魔の取り出した契約書には、こう書かれていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
契約書
上級悪魔『雷魔』は、イーストラル王国伯爵『バルク・キーラ・クローク』と以下の契約を結ぶ。
一つ、バルク・キーラ・クロークは雷魔に対し神を崇めし女を一人、又はそれに相当する魂を払う事。
一つ、雷魔は上記の契約が守られた際、カティーナ・キーラ・クロークの病を治療する事。
一つ、以上の契約が破られ、それが発覚した際、その場で相手は契約を破った者の命をどう扱っても良い。
以上を本契約の内容とし、双方同意の元契約は結ばれる。
署名.雷魔
バルク・キーラ・クローク
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「ーっ!クローク伯爵、貴方、そんな契約を、よりにも寄って雷魔と結んだのですか⁉︎
そんな事、確かに法には反していませんが、正気ですか⁉︎こんな内容で・・・‼︎」
アリシアの言う通り、正気の沙汰とは思えない。
いや、事実さっきまで正気じゃなかったんだろう。
今までは奥さんに対する愛と、自分の情熱に任せて動いてたんだろうな。
「・・・・雷魔、契約には期限は設けられていない。
なら、まだ待ってくれても良いはずだ。私はまだ、契約違反などしていない‼︎」
ーっ!確かにさっき契約を破棄したいとは言ったが、一方的に破棄しなかった事からこれはまだ『相談』の範囲に留められる。
これならまだ雷魔を止める事が出来るだろう。
「クックック、確かに貴様は契約違反はしていない。まだ・・・な」
「「「「「???」」」」」
どういう事だ?
「だがな伯爵、契約によれば魂を貰った際、貴様の妻を治さねばならんのだよ」
「だから、その支払いはまだ先だと・・・」
「まあ待て、話の途中だ。
貴様はこう言ったな。今晩魂を払うと。
つまり貴様は対価を払うとは言ったが、具体的時間と場所を指定していないのだよ」
「まさか・・・⁉︎」
「そのまさかだ。貴様が今晩魂を払うといったから貴様の屋敷に行き、魂を頂いた」
ーっ‼︎そういう事か、この悪魔は、本当に、本当の意味で悪魔だな・・・・‼︎
「貴様の妻、カティーナ・キーラ・クロークの魂を頂いた。
対価として、カティーナの病はちゃんと治したぞ。正確にはカティーナの体を、だがなぁ。
はっはははははは‼︎‼︎」
「そんな、なん、なんて事を・・・・‼︎」
こいつは、許しておけない。
戦女神様の指示抜きでも、こいつをこのままには出来ない‼︎
俺は剣を持ち、雷魔に斬りかかろうとするが・・・
「このっ「まあ待てレイア・ドライア・ナイトヴァンス」ーっ⁉︎なんで俺の名前を⁉︎」
「当たり前だろう?貴様は去年、私のペットを殺したのだからな」
ペット、ゴブリンロードの事か‼︎
「貴様の相手はもう少し後だ。
さて伯爵、契約は遵守されたのだが、今になって感じたのだよ。
貴様の妻の魂では釣り合わなかったと」
「ふんっ、私の魂をも取るつもりか悪魔が・・・‼︎」
「そう卑屈になるな。そんな事は言っていない。
ただ、請求にきたら外に生きの良い魂が三十程居たのでな、貰ってやったぞ」
三十程・・・‼︎まさか、外にいた騎士と護衛か⁉︎
「お前、騎士達の魂さえ奪ったのか⁉︎」
「そうだ。よって契約は遵守された。伯爵、これにて契約は終了だ。
俺にとって中々良い取引だったよ。
はっはははははは‼︎」
こいつだけは、許してはいけない・・・‼︎
「うあああああ‼︎【ドラゴンブレイズ】‼︎」
【ドラゴンブレイズ】は【龍魔法】の中級スキル。
【ドラゴンブレス】よりも威力が上がっている。
「ほぅ、【龍魔法】か、古代龍と契約でもしたようだな。
だが、」
【ドラゴンブレイズ】が雷魔に当たる瞬間、【ドラゴンブレイズ】が弾け、消えた。
「俺には敵わんな。所詮は借り物と言う訳だ」
「なら、【プロミネンスディザスター】ぁぁぁぁ‼︎」
【プロミネンスディザスター】、【両手剣】の上級スキル。
連続技のスキルで攻撃回数11回。エンヴィに使った【スターダストブラスター】のワンランク上の剣技だ。
違いといえばその手数と威力、そして扱い方だ。
遠心力を利用する所もある為、片手で扱ったり、手の中で柄を転がして刃を操作する。
その為扱いが難しいが、スピードも威力も十分高い。
ゴブリンロードなんて一撃と言わんばかりの威力だ。
それなのに・・・・
「俺には敵わん、そう言ったのだ。貴様では所詮その程度だという事だ」
「ーっ⁉︎キャンセルされた、だと⁉︎」
スキルのキャンセルは使用者がするか、それ用のスキルを使うしかない。
何も唱えずに、手をかざす事さえせずにするのは不可能だ。
「なんで・・・そんな、どうして・・・⁉︎」
「この程度でパニックになるのか、情けない。
まあ良い、この一撃で、終わらせてやる。安心しろ、命までは取らん」
雷魔は手を俺には向けた。
そして唱えられた。
「【プライドレイカー】」
直後、脳で処理しきれない程の衝撃が、頭を走った。
そして俺は、気を失った。




