あの、話についていけません
sideレイア
精神世界から帰ってきた俺は、ベッドに寝かされていた。突然気絶した事になってるんだろうし、当然か。
横を見ると同じく聖女フィアスが目を覚ましたところだった。反対を見ると俺たちの世話をするべく待機していたのだろう医師らしき人物が慌てて部屋を飛び出していった。
とりあえず起きよう。
「はぁ、何となく体が痛い気がするな・・・」
「私も、もう食べれません・・・」
隣の聖女フィアスはそれはそれは幸せそうな顔でお腹をさすってた。
何だ、この肉体への負荷の落差は。
俺が少し不満にしていると、慌てて出ていった医師らしき人物が戻ってきた。
「お目覚めですか聖女様とレイア様!今陛下やお仲間の方々が部屋に向かっておりますので少々お待ちください!」
「は、はぁ」
「わかりました」
そう言えば、聖女フィアスと目を合わせたらいきなり倒れたんだもんな。そりゃあ心配するわ。国の一大事・・・これは上手く説明しなければ、国家反逆罪に問われるのでは!?
俺が戦慄している間にオルレイン教皇と宰相、アリシア達が入って来た。
もう来たのか!
なんと説明するかと迷っているとアリシアとソフィが飛びついて来た。
ちょっと!?教皇の前だけど!?
教皇の方を見るとニコニコしながらこちらを見ている。馬鹿にしてるとか面白いと言うより、微笑ましいものを見るような顔だ。
一応教皇も許してくれてると判断し、2人の頭を撫でていると、アヴァールがこちらに歩いて来た。
「・・・・レイア、説明」
「ああ、わかった。アリシア、ソフィ、一回離れてくれ」
俺は2人を離して説明を始める。
「まずは教皇陛下と宰相様へ、神聖国の機密に触れる話かもしれませんがこれから話すことは事実であり、我が国の機密でもあります。その事をご理解ください」
俺の言葉に教皇と宰相は怪訝な顔をしながら小さく頷いた。
「まず、私の中にはもう1人、『ぼく』と名乗る銀髪に私とは対になる紅と蒼の目をした魔導士の人格が存在しています。彼は無傷で『雷魔』を退ける程の力を有する者です。
その『ぼく』が言いました。『強くなり、『雷魔』を倒したければ神聖国の聖女に会え』と」
一旦ここで切る。ここまでは俺たちにとって既知の事であり、これから話すことの基礎知識だ。
神聖国の面々は顔に困惑と警戒の色を滲ませている。
「その『ぼく』の言葉に従い我々はここまで来ました。そして聖女フィアスと目があった時に『ぼく』がいる精神世界へ引き込まれたのです。
『ぼく』曰く、聖女の持つ魔眼の効果を利用しているとのことです。なので、今日から邪神教団との戦いまでは1日1回、聖女との顔合わせをする必要があります」
「ふむ・・・・俄かには信じがたい話じゃが・・・・聖女フィアスよ、彼、使徒レイア殿の話の真偽は?」
教皇が声をかけると、未だにお菓子の余韻を感じていた聖女フィアスがハッとする。
「はい、彼の話は事実です。真っ白な世界にいきなり来たと思ったらいつの間にか現れれて、お菓子を振舞ってくれました。美味しかったです・・・・」
『・・・・・・』
ここで全員の顔が微妙な感じになる。どんだけお菓子好きなんだよ・・・
再びハッとした聖女フィアスは再び話を続け、俺の話を証明してくれた。
所々『ぼく』が可愛かったとか優しかったとか美味しかった等と言ってくるたび微妙な空気が流れたが・・・・
「そうか、聖女の魔眼を利用して・・・いややはり信じられん・・・だが、何事も真実だと仮定しなければ進まないか・・・・騎士レイア、聖女フィアスさえ良ければ貴方の為に聖女の時間を用意しましょう。
ただし聖女にも多少仕事がありますので時間は限られますが、よろしいですかなお2人とも?」
俺も聖女フィアスも教皇の提案を受け入れた。
表情は真逆だ。きっと言わずとも分かるだろう。明と暗だ。
だが教皇のこの提案は嬉しい。いくら精神世界で鍛えても肉体に馴染ませるのは無理だ。頭に染み込ませるのも重要だが体でもやらないと意味がない。
だから時間があるのは助かる。
俺たちは教皇の提案を受けた後、夕方になっていた為訓練を中止し、俺たちだけで情報をまとめる為に再び部屋に集まった。今度はアヴァールの部屋に。
「それで皆、そっちは何か連中について分かったか?」
「いいえレイア、まだ調査中よ。流石に半日ちょっとじゃ情報は出なかったわ」
「流石に無理か・・・・」
無理と分かっていても期待はしていたから、少しだけ残念だ。
さてどうしようか、と考えているとアヴァールがこちらをじーっと見ながら言った。
「なら、私、から、2つ、質問、が、ある。まず、『ぼく』に、つい、て」
「あぁ、そうだったな」
俺は今回『ぼく』がとった行動や言動を全て、余さず皆に話した。
アヴァールはいつもは大体中盤から真面目な表情(無表情)になるが、今回は序盤からそうだった。
そうだよなぁ、おかしいよなぁ。
いきなり現れ、お菓子や飲み物を出し、高度な結界を展開し、接近戦で俺を圧倒し、意味不明な理論で何か力説していた。そして聖女を溺愛していた。
俺が全て話し終えると、俺を含む全員が溜息をついた。
「・・・・理屈、は、わからない、でも、ない。けど、その、発想は、魔導士、と、して、すごい。そし、て、その、理論、は、証明、しがたい、思い、ついて、も、やらない、し、やれない・・・・普通、なら」
アヴァールが再度溜息をつき、今まで見た中でも特に顔を歪めて珍しい言葉を口にする。アヴァールが表情を歪めるのは、俺が見た中でこれが5回目だ。
「・・・・・魔導士、と、して・・・正直、妬ましい」
アヴァールの言葉に、この場にいるベルゼ以外の全員が同意したかのように再び溜息をつく。
ベルゼはあんまり『ぼく』に興味がないようなので反応は薄い。
それからやや気まずい沈黙が流れるが、アヴァールがもう1つの質問を始めた。
「・・・・2つ、め、アリシア、と、何か、あった?」
「うぅ!?」
へ、変な声でた。
チラリとアリシアを見ると頰が引きつっていた。
うん、大丈夫だよな?別に
「あぁ、アリシアと付き合うことになった。国に帰ったら正式に報告しないとな!」
「ちょっ、レイア!?」
「お兄様!?」
「へぇ〜」
「うむ、めでたいな」
「・・・・・」
各反応はこんな感じだ。
アリシアは赤面し、ソフィは青くなり、ベルゼとエンヴィは微妙に他人事、アヴァールは目が死んでいる。
とりあえず、アヴァールとソフィが心配だ。
「ソフィ、顔が真っ青だが、大丈夫か?気分でも悪いのか?」
俺の言葉にソフィはビクッとなるが、ゆっくりこちらを向くとゆっくりと口を開いた。
「だ、大丈夫・・・です、お兄様。い、いえ、アリシアをお姉様と、よ、呼ぶのは、抵抗ありますね。ふ、ふふ」
「・・・・そう、か」
無理に笑ってる感があるが、本人が大丈夫と言うなら大丈夫だろう。
次はアヴァールだが、目が怖い。
「ア、アヴァール?その・・・大丈夫、か?なんと言うか、目が、その・・・」
アヴァールの目が怖い。
その怖い目のままアヴァールが口を開く。頼むから、詠唱だけはしないでくれ
「・・・・レイア」
「は、はい・・・!」
「・・・・王は、多妻制、でしょ?」
「い、一応、そうなってるな」
それでもエンドルフ様はイリス様一筋だ。昔は他の女性に現を抜かすこともままあったらしいが、イリス様に粛清されて大人しくなった。
多妻制はその当時の名残だ。
「・・・・なら、私、は、2番目」
「・・・・はい?」
え、なんでこのタイミングで2番目宣言?と言うか、なんの2番目宣言?
「・・・・私、も、レイアが、好き。今まで、も、アピール、してた、のに・・・レイア、気づか、ない」
アヴァールが頰を膨らませてプイと顔を横に向ける。
な、なんてあざとい!あざといけどすっげぇ可愛い!絶対計算されたものなのに!
「い!いや・・・え、うん!?」
「・・・・レイア、私、も、お嫁さんに、して?」
アヴァールが俺に正面から抱き付き、胸の中で顔を埋めて言う。
あぁああぁっあああ!!もう!あざと可愛い!
「い、いや、俺に言われてもなぁ・・・」
アリシアの方を見ると、別になんとも?みたいな顔して首を傾げている。
いや、なんで!?
俺の言いたい事を察したらしいアリシアが説明を入れる。
「別に私もアヴァールのことは好きだし、レイアが良くて、アヴァールが2番でいいって言うなら私は構わないわよ。
それに、王女として言うなら優秀な血は継いで欲しいもの。歓迎するわよ」
「マ、マジでか・・・・!」
「ん、レイア・・・」
思いもよらなかったアリシアの言葉に加えてアヴァールの甘え攻撃、それに、元々アヴァールの事は嫌いじゃない。アリシアが居なかったら惚れてるって位には好きだ。
・・・・俺結構アヴァールの事好きだな
「あ、あぁ、うん・・・・俺もアヴァールの事好きだぞ。アリシアの次、結構ギリギリ辺り?で、まぁ、可愛いし」
「ん・・・・ふふっ」
・・・・・・お父さん、お母さん、お嫁さんが2人できました。
うん。またソフィが真っ青になったが、とりあえず場は治った。
いい加減どうにかして欲しいと言う感じのエンヴィが手を叩いて静かにさせる。
「それでは、明日からレイアは聖女と会って凡そ半日程修行、それから休憩を取って私と訓練をする。そして邪神教団の情報を掴み次第攻撃を仕掛けると言う事で良いな?」
「ああ、そう言う感じだ。ただ、修行相手をアヴァールに頼むこともあるかもしれない、その時はよろしくな、アヴァール」
「ん、もっと、頼って・・・?私、が、レイア以外、見え、ない、くらい」
アヴァールの笑みが怖い。なんと言うか、こう、支配欲を掻き立てられるような感じなのに、それが相手の思うツボと言う感じだ。
どうにも昨夜をアリシアと過ごしてからこの手の欲が上手く抑えられない。
その晩俺はアヴァールの部屋に泊まり、他のみんなも解散ということで部屋に帰った。
後々考えてみれば、恐らくここが1つのターニングポイントだったんだろう。
ここでの対応が、後に俺たちを苦しませることになると、俺たちはわかっていなかった・・・・・
翌日、朝の事後処理と鍛錬を済ませて部屋でアリシアとアヴァールの3人でゴロゴロしていると、神聖国側からの連絡が入った。聖女の方のだ。
「それでは時間になりましたらお迎えにあがります。起こせるかどうかは分かりませんので、そちらでも注意をお願い致します」
「分かりました」
医師の人に軽い説明を受けた後、聖女フィアスと目を合わせ、再び俺は精神世界へと吸い込まれた。
「いらっしゃい『俺』、聖女ちゃん、それじゃあ聖女ちゃんにお菓子とか出してから始めようか。
ね、ね、ね!聖女ちゃん聖女ちゃん!今日はなに食べる?なんでも言ってよ!こんな感じの味のものがいいとかでも良いから!」
「・・・・・まさかの、修行の優先度のが低いとか、なにそれ」
聖女フィアスと『ぼく』が楽しそうに過ごしてから、具体的には10分くらいで修行が始まった。
「『ぼく』、修行できる時間にも限りがある。できればその時間になったら帰してほしいんだ」
「うん、当然だね。聖女ちゃんの時間を君だけのために割けるわけないんだから。そんなの最初からわかってるよ。
時間になったら帰してあげる。
さあ、剣を構えろ。まずは昨日のおさらいからだ」
その日の成果は、なんとか通常以上の速度で動く、という感覚が掴めた位だ。
『ぼく』は少しだけ驚いていたけど、後は現実の体で慣らして、明日から対魔導士戦をすると言った。
・・・ようやく、本題に入れるわけだ。
ちなみにステータスを確認して少し驚いた。
名前:レイア・ドライア・ナイトヴァンス
種族:人間
年齢:16
性別:男
称号:封印の番人
レベル:45
HP:3622/3622
魔力:1189/1189
攻撃:1886
魔攻:513
防御:1107
魔防:408
俊敏:914
スキル:【両手剣LV7】【分析】【火魔法LV5】【光魔法LV7】【念話】【恐怖耐性LV4】【龍拳LV7】【闘術LV4】【刀術LV2】
固有スキル:【魔眼王】【救済者】【龍魔法】【加速】
カーススキル:【色欲】
加護:【剣神の加護】【聖神の加護】【戦女神の溺愛】【魔法神の呪縛】【古代龍との絆】
「え、あれスキルなのか!?しかも固有スキルだし!」
あ、【光魔法】LV7になった!魔力も1000超えた!
テンションが上がった俺がアヴァールとアリシアに自慢すると、それはそれは可哀想なものを見る目で見られた。
ちくしょう




