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カナデルタメノコトワリヲ

時系列はあったり無かったりなので、

順番にお読みすることをお勧めしますが、

基本的に1話読切の恋愛譚です。

そして今回が最終会です。



理緒:

奏と出会い、奏を好きになり、

1年を迎えた主人公。


奏:

かなで。

理緒の彼。

1年を迎えたこの日、

奏なりの想いを口にする。

カナデルタメノコトワリヲ


貴方がいるから、

私はきっと強くある。

どんな時でもきっと

笑って貴方を迎えるのよ。


それが、私の理。



「……ふああ」

見上げて、感嘆の声がこぼれる。

着いたのは、箱根の高級旅館だった。

「中々に良い宿でしょ」

「中々どころか!すごい、素敵よ奏!」

「でしょでしょー」

駐車場にビートルちゃんを停めると、奏と私はカウンターへ移動した。

外観は純和風。

5階建ての旅館で、部屋には内風呂、大浴場も別途ある、ホントに、なんというか高級な感じの旅館だった。

奏とチェックインを済ませて、館内用の浴衣を借りる。

奏に水色の浴衣を選び、合わせて、私も水色の生地の大和撫子柄を選んだ。

夕飯は遅めの20時。

今は15時なので、部屋でゆっくりすることを選んだ。

部屋に着くと、奏がおいでおいでと手招きする。

行ってみると…

「う、うわーあ!何これ素敵!」

ヒノキのお風呂は、なんとバルコニーの一角にあって。

半露天風呂だったのである!

「まぁただのお風呂なんだけど」

「ううんっ…そんなことない、これ…わぁー、すごいすごい、露天風呂だよ!?」

飛び跳ねんばかりに喜ぶ私に、奏は満足そうに頷くと言った。

「後で入ろうね」

「!…あ、う、うん…」

「一緒入ろうね?」

「……う、あ、うん…」

「理緒かわいいなあ」

「な、何でそうなるかなっ」

奏は優しく微笑んで、そっと私を引き寄せた。

「理緒はかわいいよ」

あったかい腕の中、幸せに溺れそうで。

私はきゅーっとなる胸に頬を緩めた。

奏の言葉はまるで魔法みたい。

「…さて」

しばしの後、私を解放した奏は、おもむろにシャツに手をかけた。

「?」

見守っていると、いきなり。

がばーっ

「きゃあ!!ちょ、ちょっ…な、なんで脱ぐの!」

「何でって、浴衣着る」

「あ、そうか…じゃなくて!…な、なにもそんな目の前でっ」

「大丈夫、ちゃんと理緒も着せてあげるからね」

「ええっ、着れるよっ…」

「つまりは脱がせるとこからだけどね!」

「うわあ!違うっ違うからー!」

てんやわんやしながら、ばたばたと逃げる私を、奏が上半身裸で追いかけ回す。

やがて私を壁際に追い詰めると、奏は満足そうな顔で、さらに距離を詰めて、私を壁に押し付けた。

「流行りの壁ドン」

ち、近い!

近いから!

どきどきしていると、お約束。

奏はキスをひとつ落としてくれた。

「とっ…隣の部屋からうるさいって言われるわけですねわかります」

それがホントの壁ドンである。

思わず口走ると、奏はふふっと笑う。

「隣もきっとリア充だから大丈夫」

…そういう問題ではないのです!

むしろ恥ずかしくてきゅんきゅんで爆発しそうなのは私なわけで。

そんで至近距離には上半身裸のイケメンがキラキラしてるわけで!

「む、むぅぅ」

視線を逸らすと、奏はますます嬉しそうに笑った。

「うむ。満足である!」

そしてあっという間に浴衣を羽織ると、ベルトも外してさっさと着替えてしまう。

もー、最初からそうしてよー!

……けど。

や、やっぱり似合う…。

ハイスペックすぎる。

見惚れていると、急に呼ばれた。

「理緒ー」

「は、はいっ」

「…襟、どっち上?」

「ほあっ!?…も、もー!こう、こうで…はい、帯かしてっ」

さすがシティボーイ。都会っ子。せれぶりてぃ。

私は奏の腰に帯を巻きつけて、考えた挙句リボンにしてやった。

…むむー、予想以上にかわいいぞー。

奏は鏡を見て納得し、そのままベッドに倒れこんだ。

「疲れたー」

お決まりのセリフに、思わず笑う。

「マッサージしてあげるね!…でもその前に私も浴衣着たいー」

「……どうぞ?」

「へ?」

「見ててあげる」

「っ!」

「脱いでごらん?かわいい理緒?」

「で、できるわけないでしょー!」

「いいじゃん、減らないよ」

「減りますー、私がどこで脱いでもいいって言うのー!?」

「俺しか見ないし、他でしたら怒るし」

「それはそれこれはこれー!!」

「理緒?」

「……っ、…む、むうぅ」

結論から言えば勝てないわけで。

奏に色々されて…私達はつかの間、お昼寝をしたのだった。


……

お湯を張り、置いてあったレモンを浮かべた。

まるでオレンジのような香りのレモンは、素敵なアクセント。

奏が先に入り、後から私もお湯につかった。

…後ろから引き寄せられて、お湯の中でくっついている。

それだけで恥ずかしくて幸せでたまらない。

露天風呂は2人で浸かるとそれなりにいっぱいで、でも狭いわけではなかった。

「あのねー」

奏は後ろにいるので、あまり恥ずかしくはないと自分に言い聞かせることにする。

「んー?」

「こんなにねー、素敵な記念日、初めてだよー」

「ん」

こういう時、奏は必要以上に言葉を発しない。

私は構わずに続けた。

「一緒にね、いられてよかったのー」

「んー」

「これからもね、一緒にいたいなって思うよー」

「……」

言葉が無い代わりに、よしよしと撫でられる。

それが奏の同意だと、私は幸せに思った。

「…ごめんね、ホントはね、何か用意してたかったんだけど…時間無かった」

「いいのよー」

「仕事で構えなくてごめんね」

「いいのよ〜、私、もう大丈夫なのー」

こんな素敵な準備をしてくれたんだから。

気にする必要は無いのである。

私は背中を向けたまま、奏の肩口にすり寄った。

ちゃぷ、とお湯が跳ねる。

「幸せだよ」

「…うむ」

そうして、夕飯の時間がやってきた。


おめでとうとグラスを傾けて、ご飯を食べる。

どれもこれも美味しくて、頬は緩みっぱなしだ。

ここで太る分には無礼講。

食べ尽くさねばなるまい!

私は全ての料理を綺麗に食べた。

美味しい…けど、お腹はいっぱいだった。

途中、何故かツーショットの撮影があって、奏が笑う。

記念撮影もやってくれるなんて、珍しい旅館なんだなぁ。

従業員さんは、チェックアウトの時に渡しますねと微笑んだ。

楽しくてほっこり。

夕飯を終える寸前、奏が言った。

「トイレ行きたいから鍵かして…売店見たいしそこで待っててくれる?」

「?…トイレならすぐそこにも無かった?」

「…あれ?そう?…気付かなかった」

「まぁお部屋のほうがゆっくりできるかな。売店いとくね?」

「ん、じゃあお願い」

夕飯を終え、鍵を渡し、売店に寄る。

たくさんのお土産を見ながら、奏にはどれがいいかな?なんて思う。

少しすると、奏が帰ってきた。

「あれ?早かったね」

「?、そう?」

「うんー」

「いいのあった?」

「ん?…あっ、あのねー、これとかどうかなっ」

「おー、美味しそーだね」

「えへー」

そんなことを言いながら、結局買うのは後にして部屋に戻る。

奏は案の定、またトイレ行きたいと言った。

…今のうちにカフスを用意しよう。

私はいそいそとプレゼントの準備を始めた。

…が!

ばちん!!

「ひゃっ!?な、何!?か、奏…」

変な音がして、急に部屋が真っ暗になる。

カーテンも引いてあったせいか、何も見えない。

ブレーカー落ちた…!?

旅館で?停電??

一瞬で思考が目まぐるしく動く。

しかし。

「ふはははー!本当のサプライズを教えてやろうー!!」

「ええっ!?」

がらー!!

ドアが空く。

私はきっと、目を見開いた。

真っ暗な中、揺れるロウソクの灯。

奏が持ってきたのは、ケーキだった。

「う、うそ…何それ…わぁ!綺麗…!」

「ふふふー。これがサプライズって言うんだよ理緒?」

「あ、あぅぅ…やだ、どーしよう…嬉しい…奏、私…あのねっ…すごく嬉しいの…!」

自分の語彙力の無さが残念でならない。

きらきらする優しい灯が部屋を暖かく彩る。

ホワイトチョコのプレートには、ピンクのチョコでファーストアニバーサリーと記されていた。

「写真とるっ…」

「どーぞ?」

ぱしゃぱしゃと撮っていると、奏は笑った。

「玄関側から部屋の電気消せるのもチェック済みなんだよ」

「わ。さすがです!…これどうしたの?どこにいたのー?」

「夕食の間に部屋に置いてもらえるプランなんだ。だから…」

「ああ!トイレ行ったのか!」

「そ。戻ったらテーブルに置いてあったから、隠したりしてねー」

「……奏すごい!!」

「ふふ。旅館の人にサプライズって先に伝えておくんだけど、ほら、記念撮影あったでしょ?ばればれじゃん!と思ったんだけど」

「あー!だからかぁー。珍しいなって思ってたんだー!」

「理緒は素直で良かった」

奏はロウソクを吹き消すよう言った。

言われるがままに消して、電気が着けられる。

すぐにナイフやフォークを持ってきた奏は、グラスにお酒を注ぐ。

私はケーキを切り分けて、お皿に取り分けた。

「嬉しいな…こんなのしてくれるなんて、奏はやっぱりジェントルさんだね」

「俺のお姫様だからね」

「ひ、ひめ違いますー」

「それではー」

グラスを持って、奏が優雅に笑みをこぼす。

「おめでとう」

「おめでとう…奏」

「…ちゅーして理緒」

私は迷わず奏に寄り添い、キスをした。

至近距離で見た奏の長い睫毛と、澄んだ瞳が愛おしい。

「…あのね、理緒」

「うん…?」

「誤解しないでほしいんだけど」

「…うん?」

「……一緒にいたいとは思ってるよ」

「うん、私もだよー」

「や、ええと…」

「?」

「…仕事とかね、忙しすぎて、今は考える時間が無いのね。でも一緒にいたいとは思ってる、だから…もうちょっと待ってて」

「………」

待ってて。

……あぁ、それって…。

「それは…あの…」

「…本当は言えたらいいけど…ごめん。まだダメなんだ」

「………」

「ダメなんだ、ちゃんとしたいから、考えたいから…今の忙しいままは無理」

「……」

プロポーズが欲しい。

今、欲しい。

そんなこと思うなんて贅沢である。

私は奏を見つめて、言葉を紡げなかった。

忙しい中、そんな風に考えてくれてたことが、素直に嬉しい。

期待もあったけど、それすらどうでもよくなった。

「待っててね」

「………出来ない」

「えぇ…」

「私は奏といたい。どんな形でもそばにいて幸せよ、今も」

「……」

「だから、待つとか待たないとか関係ないの。…奏が私を好きでいてくれるなら、変わらずここにいるよ」

私はもう1度、奏にキスをした。

「ありがと…たくさん考えてくれて」

「……理緒、なんていいこなの」

「えー?」

奏は私を抱き締めて、ごめんねと呟いた。

…いいんだよ、私は幸せよ。

ささやくと、奏は黙ったまま頷いた。

いつか、奏が思う言葉を聞かせてほしい。

愛されているのはもうわかってる。

だから…。

「かわいい俺の理緒…どこにも行っちゃだめだよ」

「行かないよ〜。奏が私を好きでいてくれるならずっと」

そこで、私はカフスを思い出した。

「あ…奏っ、私もね、ちゃんとねっ…サプライズ用意してたんだよ?」

「ほえ?」

「ええと…はい!」

出してきて渡すと、奏は目をぱちぱちさせて、開けていい?と聞いてきた。

うんうんと頷くと、奏が包みをほどく。

「…カフスさん?」

「そうっあのね!そのブランドの服持ってるでしょう?何かの時にね、合わせられたらいいなって…それで、クールビズだから、タイピンはまた別の時にね?お金もねっ…まだそこまでは無理だったから…」

まくし立てると、奏は笑った。

「カフスはねー今3つ持ってるー。日替りで付けてるよ」

「うんっ…あのね、いつもの音符の模様のカフスも可愛くて好きだけど、こういうシンプルなのもいいかなって思って…それで」

「うんうん、ありがとう、理緒」

「えへへ…」

撫でられてにやけていると、奏は綺麗に包みを戻して、キスをくれた。

「……ありがとう」

とても幸せな1年だった。

そして、この先もきっと幸せだ。

喧嘩もするだろう、またもやもやするだろう。

でも、私は大丈夫。


ねぇいつか、結ばれる時に。

私は貴方に返そう。

ありがとう、私といてくれて。

私を好きでいてくれて。

貴方がいるから、

私はきっと強くある。

どんな時でもきっと

笑って貴方を迎えるのよ。


それが、私の理。


中途半端でしたが、

2人は共にあることを幸せに感じてます。


いつか奏が踏み切った時に、

ご希望があれば、

ひとつのお話に出来たらいいなと。


ここまでお付き合い下さった皆様、

ホントにありがとうございました。


ひとまず、2人のお話はここまでです。

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