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カナデバグズ

理緒:

京都から関東へ帰ってきて、

就職もしただめ女。

元、だめ女と言い張りたい今日この頃。

仕事では女の子扱いはされない。


奏:

かなで。

残念なイケメン。

理緒の彼氏で1個下。

残念?な理由は2つほど見えてきた。

仕事で忙しく、

あまり会えない日が続くこともある。


今回は奏と理緒の他愛もない短編集。

カナデバグズ


セミバクダン

奏は虫が苦手です。

私は、虫はほとんど大丈夫。

「……」

奏が立ち止まったので、私は見上げた。

無表情。

何かを見ている。

視線をたどれば、セミが落ちていた。

…うん、落ちていたのである。

脚を広げ、裏返しで。

脚を閉じてないってことは生きているので、私は奏を引っ張った。

「だいじょーぶ!怖くないよ!ちなみに、脚が開いてるから生きてるよ!端っこ歩くのです」

「虫嫌い」

「知ってる!…大丈夫、そこは私が助けられるからね」

「……奴らは何故生きてるの」

「長年の進化の結果絶滅してないのです」

「……害でしかないよね」

「夏の風物詩的な!」

「……虫嫌い」

「知ってる!」

そうして帰り着いたマンション。

その時だった。

「ジジジッ!!」

「!!」

奏がびくっと飛び上がる。

足元の植込みで、さっきと同じようにひっくり返っていたセミが鳴いたのだ。

か、かなでかわいい…!

「よしよしかなでー、あははっ、だいじょーぶだよ!」

笑うと、奏はすんすんと鼻を鳴らす真似をした。

「セミなんて爆発すればいい」

「おお、知ってる?こうやっていきなりジジーッて鳴くの、セミバクダンっていうんだって!」

「……バクハツしないでいい」

奏はかわいい。

そんなセミバクダンの話。



イモムシマーチ

「……」

また奏が立ち止まったので、視線を落とした。

人差し指くらいのイモムシが、奏の前を横切っていた。

「いもむしー」

私が言うと、奏はぽつんと

「その先には何も無いのに何故行くの」

と言った。

確かに、その先は車道だし、車道の先もただの民家である。

「それは…きっとお母さんを探しに…」

「蜂嫌い」

「……みなしご…」

奏はイモムシをまたぐと、歩き出した。

私も歩き出す。

ちりんちりん…

前から自転車。

避けて通り過ぎるのを見送り、奏は言った。

「あの女子高生が……ぷちっと…」

「おおう…あり得るね…」

「……ここはイモムシの気持ちになってはどうだろう。女子高生に踏まれる…むしろそれはご褒美なのでは…?」

「ぶは、あははっ、無い無い!そもそも奏、踏まれて喜ぶタイプじゃないもんー!」

「まぁね、いじめる方が好きだよね」

「うぐっ……」

奏は私を見下ろすと、ふ、と笑った。

「お姫はいじめられるの好きだよね」

「…っ!……っっ!」

撃沈したのは言うまでもなかった。

恥ずかしいけど楽しくなれるイモムシマーチ。



スパイダートラップ

奏が泊りにきてくれた日。

私は引き戸を閉めて……

「っ、きゃ…っ!」

尻餅を着いた。

蜘蛛が、蜘蛛が引き戸に!!

私は虫はほとんど大丈夫。

けれど!

蜘蛛がダメだった。

「どうしたのお姫」

「うぅっ…か、かなでぇー」

ひっくり返った私を、奏が助け起こす。

指差すと、蜘蛛を見つけた奏の動きが止まった。

「くも…くもはねっ…やなの、だめなの…と、取ってぇ〜っ」

半泣きである。

「蜘蛛は益虫です」

「……ふ、ふぇ…」

「ほっとけば何処かいきます」

「………」

「……ふう」

奏はティッシュを取ると、おもむろに蜘蛛に攻撃を始めた。

「うぁあん、あぅう」

「外に出す?」

「…うんっ……うう、うひゃああっ!」

ティッシュの隙間から蜘蛛が飛び出す。

後ずさる私に、奏は困った顔をした。

「ごめんなさい、ていっ!」

ぷち。

綺麗にふきとり、ぽい。

…そこでやっと、私は我に返った。

あ、あれっ、奏、虫嫌いだよね!?

絶対に、普段あんなこと出来ないはずだ。

……私のためである。

「う、うわぁ…かなでーーありがとぉーーー!!」

「急にどうした!?」

「こわかったんだもん!」

「……ふ、よしよし。…あ、蜘蛛」

「ひゃああぁーーーっ!?」

「…は、いなかった」

「っっ!こ、こらあぁーー!!」

奏が満足そうに笑うから。

私も、笑顔になった。

そんなスパイダートラップ。



バタフライトラベラー

「わ、見て見てー!モンシロチョウ!春だね、都会にもいるんだねー」

「…興味の対象ではない」

「かわいいじゃないー羽根とか綺麗なのに。あ、でも私アゲハ蝶の方が好き」

「ひらりひらーりと…」

「それは某有名アーティストの曲ね」

「そもそも、あれらは何で飛ぶの」

「うーん?恋を求めて…?」

「俺は飛ばないよ」

「何で、恋求めてるの?」

「……揚げ足をとらない!」

「えぇー」

そこに黒くて大きな蝶。

「黒アゲハ!」

「うわぁ……」

「むむ、綺麗なんだよ?…あ〜ん、いっちゃうー」

「いっちゃう…?いっちゃうのか…」

「…かなでくん?」

「ふぁい」

「もおー。…でも蝶ってさ、基本オスの方が派手なんだよ。クジャクもそうだけど」

「ふぅーん…」

「そう思ったら、奏も容姿で…」

「いや、虫に例えられても…」

「揚げ足をとらないー!」

「えぇ…」

「あははっ、楽しい!でもさ、見て奏。あーやって飛んでてさ、ペアを探すのって、都会じゃ大変そうだけど…旅して出会えたらいいよね」

指差すと、奏はそっちを見ないで私を覗き込み、微笑んだ。

「…俺と理緒みたいに、ね」

「う、うんっ!…うう、照れる」

腕を絡めれば、奏は私の髪を撫でた。

……出会えるといいね。

素敵な相手に。

そう願うバタフライトラベラー。


短いお話で、

虫に関する詰め合わせ。


ブックマークや評価をしてくださった方々、ありがとうございます。


たくさんの方にご覧いただけて、とても嬉しいです。

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