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コトワリトトモニ

理緒:

京都から関東へ帰ってきて、

就職もしただめ女。

元、だめ女と言い張りたい今日この頃。

仕事では女の子扱いはされない。


奏:

かなで。

残念なイケメン。

理緒の彼氏で1個下。

残念?な理由は2つほど見えてきた。

仕事で忙しく、

あまり会えない日が続くこともある。


おきちゃん、沖:

理緒の姉の元彼、

中学時代の先輩、

奏の同期。

院卒のため理緒とは2つ、

奏とは3つ歳が離れている。

コトワリトトモニ


考えても

考えても

君が好きってこと以外

何にもわからない


「……りお」

「んん…」

ふわりと、優しくて温かい手が髪を撫でる。

奏の手だ……。

幸せな気持ちに微睡んで、その手つきに寄り添う。

「かなで〜…」

「ん」

抱き寄せられて、ベッドでくっついて眠る。

奏の温度と吐息をそばで感じていると、額にそっと唇が触れた。

「かわいい…」

「んむぅ…かなで、の、方が…」

ぼんやり眠い。

頭はまだ働いてない。

顔をあげれば、奏もまだ眠そうな顔で、とろける甘い声を出した。

「なんでそんなかわいいの。だめだよ他でそんなかわいくしたら」

「……かわいくない…」

「俺は?」

「かっこいー、かわいい」

「うむ。その俺が言うんだよ、理緒はかわいい」

「……」

ようやく。

私の意識は浮上して…。

「っ!…う、ううー」

うめく。

すると、奏はくっくっと喉を鳴らして笑う。

「な、何よぉ?」

「や、かわいくて」

「言い過ぎですー」

「かーわーいーいー」

「もう、ちょっと多すぎよっ、照れさせても何にもないんだから!」

「そういう時期なのでーす。楽しいのでーす」

「ぷっ、あはは、何それー!」

ぎゅーっとくっつくと、奏は私の頭を胸元に抱き寄せて、髪をすいた。

っ、うわわ。

指先が色っぽすぎます…!

何ですか!

なんなんですか!?

その無駄に溢れる色気と格好良さは!

奏の甘い香りに酔いしれて、私は幸せを実感する。

久々に泊まっていった奏は、私を溺愛し、べたべたに甘やかし、意識が飛びそうな程翻弄した。

…ねぇ奏。

貴方のそばで、私は素になれる。

これってすごいことなんだよ。

ちょっと距離を感じても、それでも、こうして何度でも貴方を好きだと思い出す。

これは私の特権で、私が私でいられる理由になるのだ。


…職場の私は、仕事女だ。

残業もがっつり、残した仕事があれば徹夜もする。

それは男所帯の職場において、他の人に負けないだけの仕事量のはずだ。

例えば結婚しても、子供が出来ても、働いていたいと思ってる。

ある意味これも私の素だけど、女の子としてそこにいる自分は、職場の仲間からすれば全く未知だったろう。


そんな時に、飲みに誘われた。


会社の皆で行くそうで、私も誘ってもらえるとは思ってなかったのが本音。

まだまだ、皆との距離を感じていたからだ。

男所帯の東京営業所だが、本社が九州にあって、そこには女性が多い。

そのため、女性に対する福利厚生は悪くない。

…とりあえず、私がのし上がることも可能だと、笑って言われたのは覚えている。


「かんぱーい」


居酒屋は雑多な場所にあり、さすがサラリーマンの街、と思った。

私はお酒に強い自覚がある。

日本酒や焼酎、ビールはあまり飲まないけど、梅酒や強めのカクテル、ワインは浴びるように飲めるというのが正確なところか。

眈々とグラスを開けながら、飲める上司達と同じスピードで注文を追加した。

「理緒さん飲めますねぇ」

上司が笑うので、私も笑う。

「お酒好きなんです」

「顔色全然変わんないっすね」

先輩も言うので、頷いた。

「お酒感はあるんですけどねー」

さらにはその向こうで、1杯でこくりこくりと船を漕いでいる上司。

ちらっと見やり、肩を竦める。

「あれくらいの方が、女子力あるんでしょうけど…」

「あはっは、理緒さんは女っぽくないからなあ!」

うぐ。

思わず苦笑い。

いや、確かにそうなんですけども。

だいたいさ、職場でまで女の子してたら、今の営業職じゃおいてかれちゃうよ…。

それに、そういう私の素は、奏が知っていればそれでいい。

おきちゃんもまぁ知ってるけど。

そういう、身内が知っててくれたらそれでいいんじゃないかな?

かと言って媚をうるでもなく、自分を偽るわけでもなく、私はありのままでいる。

決して作っているわけではなく、それは私のポリシーというか何というか、そういうものである。

「女子力足りてないですけどーいいんですー仕事しますー」

「そんなだと彼氏に逃げられますよ」

はははと笑いが起こる。

「…それは困っちゃいますね」

私も笑顔で応えて、お酒をあおった。

奏が私を嫌いになる…。

ちょっと考える。

少し前なら、肩を落としていただろうなぁ。

けど今は違った。

奏との距離が、なんて言うか近いのだ。

気持ちにもとても余裕があって、奏がいてくれる安心感に包まれている。

「結婚は?」

「まだ予定は無いですねぇ」

「あれ、理緒さんいくつでした?」

「29になりました」

「彼は?」

「一個下なので28です」

「下かぁ!…なら微妙すねぇ」

「すごい素敵な人ですよ、たぶん考えてはくれてるんじゃないかな」

好き勝手聞いてくる上司に、にこやかにのろける。

本当はもっともっとのろけてやりたいんだけど…ここで女の子モードになってはいけないと思った。

「いやあ、勘違いかもよお?」

先輩のにやにや笑いに、私もにやにや。

「勘違いになったらもう一生1人かもしれないですねぇ歳的に〜!」

「よぉーし!イケメンと美女がたくさんいるところ!行きましょうか!」

「あ、私、美女の方が興味ありますー!」

奏よりイケメンなんているもんかー!

にこやかに受け流しながら、心の中で付け足す。

私は、好きになった人が世界で1番かっこいいと思うタイプだ。

周りの人がどれだけイケメンでも、彼以外には「そうですねイケメンですね、だから何か?」という感じになってしまう。

しかしながら、こと奏に関しては違った。

本当にそれ以上はいないっていうイケメンだと思うんだよね…。

人間力、容姿、その仕草。

全てである。

ここまで全面的に堕ちてしまったのは、正直無いのだ。

…ほんと、何でこんな平々凡々な私を好きになってくれたのか…。

「じゃあセッティングしときましょうかね!」

はっと我に返る。

「美女でお願いします」

すかさず切り返した私に、上司が理緒さんは変態だと大笑いした。


帰ってきて、1人の部屋のベッドに身を投げ出した。

…日常の私と奏は、お互い仕事に忙しい。

おはようから始まって、お昼はお弁当だとかおしゃれランチだとか、そんな話をして、帰りに連絡。

時間が合えば一緒に帰り、合わなければ帰って各々すごし、おやすみの電話で締めくくる。

そんな毎日だった。

こういう日常は、今までに無くて…。

離れているからこその気楽さ、寂しさ、そういうのがない交ぜになっているのだろうと思う。

私と住むことになったら、奏はどうなるだろうか。

実家暮らしの奏は、私といることを不安に思わないだろうか?

そんな心配もあったりする。

…でもそればっかりは、やってみないとわからないなぁ…。

たぶん、私は奏と一緒になるんじゃないかなって思うんだ。

それは漠然とした認識。

曖昧なイメージ。

この人と結婚する!とびびーっとくるなんていうけど、そこまで確信めいたものではない。

でもたぶん。

そう、きっと。

そんな気持ちにさせられる。


だめ女な私に、立ち直り、自分らしく過ごす力をくれた奏。

そして奏の残念と言われる部分を、私が緩和出来るなら…。

やっぱり素敵なことだと思う。

一緒にいたい。


結婚かあ…。


否応無しに頭によぎる言葉に、ふうと息をつく。

奏のプライドを考えれば、私から切り出すなんてことは出来ない。

焦ってるわけでもない。

30過ぎても35過ぎてもタイミングってあると思うのだ。

けれど、8年付き合っていて結局別れた過去を持つ私にとって、タイミングはよくわからなかった。

奏のタイミングっていつなんだろう…。

…もうすぐやってくるのは1周年記念日。

私と奏が出会い、たったの数日で堕ちたあの日から1年。

もしかしたら、何か無いかな…?

なんて。

なんてさ?

思ってしまって、馬鹿みたい。

それじゃダメなのだ。

そんなプレッシャーばかりかけたくない…かけたくないの。

はあ…。

ごろごろとベッドの上で転がる。

奏といても余裕がある、セミダブル。

京都にいた時の床かと思うようなぺちゃんこ布団に比べたら、女の子らしくて素敵なものだった。

部屋を見渡せば、奏の痕跡をたくさん見つけることが出来る。

私…こんなに変わったんだなぁ…。

雑多な部屋も、今は片付けて綺麗だ。

テレビやパソコンは最低限の装備だから置くだけだったけど、今は机やテレビ台もきちんと準備した。

その台の上に奏の置いていったBlu-ray。

机やベッドのヘッドボードには、奏がすぐ使いやすいように、ティッシュを置いている。

壁には奏のシャツを掛けて、クローゼットには下着…も、含めた着替え一式。

お風呂場には奏専用シャンプーやボディソープ。

こんなに近いのに。

いたたまれない気持ちなった。

私、奏が好きすぎて、こんなにそわそわしちゃってる。

仕事で忙しい奏に、何かふっかけるのも嫌だし…今の気持ちはたぶん、ドツボにはまる気がする。

すー…はぁ。

深呼吸。

「よし」

気合を入れ直して、私は起き上がった。

少しお酒の感覚を覚えて、瞬き。

…大丈夫、私はまだやれる。


その後、私は奏とこんなLINEをした。

<ねぇ奏!1周年なんだけど…お休みとろうと思うの〜。連休にする!良かったら、ご飯でもしよ?>

<そうなんだよねー、忙しいけど俺も休みとろうかな。何処か行こう>

<ほんと?わぁ、嬉しー!無理しない程度でね!>

<うんー>


考えても

考えても

君が好きってこと以外

何にもわからない

だから私は今日もその理由を胸に

前を向いて歩くのだ。


恋に悩む女の子…

女の…子?

いくつまでとかよくわからない。

とりあえず仕事女な理緒。


もうすぐ1周年。


もうすぐ、このお話も終わりを迎えます。


お読みくださってる皆様、ありがとうございます。

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